2005年12月10日
12 月1日から7日の深夜まで臘八接心がありました。昨日、朝食の後、後片付けをしたり、
参加した人たちと話をしたりした後、接心中に来た電子メールの中で急 いで返事を書かな
ければならないものに返事を書いているとすでに夕方になっておりました。夕刻から雪が降り始め、20センチほど積もりました。ミネソタと 違って、根雪になって冬の間ずっとこの雪が残っ
ているということはありません。しばらくすると解けてなくなります。静かな冬らしい景色になりま
した。毎 年、臘八接心が終わるともう一年が終わってしまったような気がします。今年も忙
しく、多事多難な年でした。来年は、落ち着いた静かな年になるようにと願っ ています。
 私は 1970年の12月8日、接心の最後の日に安泰寺で内山老師から 得度を受けましたので、
昨日で満35年になります。大学生だったのが、すでに老年に手が届くようになってしまいました。
この35年の間に日本でもアメリカ でも、様々な人々のお世話になって、坐禅修行を中心とした
生活を曲がりなりにも何とか続けてこられたことに感謝をせずには居られません。
 
35年前 の京都はよく晴れていて、8日の朝6時に坐禅が終わって外に出ると、東山の稜線の
すぐ上に明けの明星がきれいに輝いていました。そのときに内山老師が、「悟りを開かないで
も明星は輝いているということを悟った。」といわれた言葉が今でも鮮明に残っています。
 
今日、 12月9日は娘の葉子の18回目の誕生日です。18年前の臘八 接心のことは今でもよく
覚えています。接心中に生まれたらどうしようかと家内とさんざんに議論しました。接心が終わ
るまで待ってくれるようにと祈っていた のですが、その通りに待ってくれて、9日の午前1時半頃
に生まれました。今はハイスクールの3年生で、来年6月には卒業します。我々がブルーミング
トンに 移転してからも、ミネアポリスの学校を続けたいと、友人の家に下宿して親元からはなれ
て生活しておりました。
 
今朝は4 時に起きて、接心の参加者で南アメリカのコロンビアに帰る人を空港行きのバスの
発着所まで送っていきました。除雪はしてありましたが、道路が凍っていて、タイヤが殆ど磨り
減っている自動車を運転するのはこわごわ出した。
 
 どうぞよ いお年をお迎えください。
 
               奥村 正博 九拝




  2005年11月23日 日本から28日に帰ってきて、30日の日曜日に日曜坐禅会の法話を し、11月2日
                               から眼蔵会が始まりました。まだ時差ボケから回復しない状態で、「正法眼蔵諸悪莫
                               作」の講義を日に2回するのは本当に大変でした。「七佛通 戒偈」のダンマパダの中で
                            の意味と、大乗仏教での相依相即の縁起や「諸法実相」を通過した道元禅師の解釈
                              はとても表現としては「正法眼蔵」の中でも難解な ものの一つとされていますが、仏教
                              の歴史の中で、「修善止悪」の教えと、「善悪超越」の教え、その裏側としての、「道徳
                              主義」と「道徳否定主義」との中道あるいは融合を目指すものとして、重要なだけでなく、
                              大変興味あるものだと思います。
 
                               眼蔵会が終わってまもなく、9日にはインデアナポリスのインデアナ大 学で行われた異宗
                              教間の対話の集会に参加しました。インデアナ大学の哲学科の二人の教授、一人は
                               カソリック、一人は仏教徒と、プロテスタントのルーテルの 牧師さん、それに私の4人がそ
                              れぞれ短時間自分の異宗教との対話の経験や考え方を話し、会場の参加者の質問
                            や発言も交えながら、おおよそ2時間話し合いま した。インデアナ州は西海岸のカリフォル
                             ニアや東海岸のニューヨークやニューイングランド地方に比較すると、仏教はまだそれほど
                              浸透しているとは言えませ ん。州都のインデアナポリスに韓国系の禅センター、ベトナ
                              ム系のベトナム人のための仏教寺院、などほんとに小さなグループがあるだけです。イン
                              デアナポリ スから自動車で一時間ほど離れたブルーミングトンには、インデアナ大学で教
                             えておられたダライラマのお兄さんが創立されたチベット文化センターとその中に 最近建立
                             された寺院、それとは独立したもう一つのチベット仏教寺院があります。それと三心寺、
                              及び小さな禅のグループがあります。どれもそれほど目立った 活動をしているわけでは
                               ありません。
                              インデアナ州はどちらかというと保守的な土地柄で、共和党の地盤で す。所謂バイ
                               ブルベルトの中に含まれます。三心寺を創立する土地を探していた時も、ブルーミング
                             トンの町の外には造らない方がいいと忠告されました。ブ ルーミングトンは大学の町で
                            、アメリカ国内の各地や海外から多くの人が来るので、インデアナ州内では特別に自                               な気風がある町です。州全体ではほぼ8割が 共和党支持なのに、ブルーミングトンがあ                                モンロー・カウンティだけは民主党支持が8割がたなのだそうです。
                     こういう土地でも、キリスト教以外の宗教との対話が小規模ながら行われるようになりました。
 
                        17日にピッツバーグに行き、18,19,20日まで週末の接心の指 導をしました。スティルポイント
                       という、在家の人たちだけのグループですが、ミネアポリスにいた頃から10年近く毎年一回か
                       2回行っています。アメリカの 禅センターは多く、先ずその町の在家の人たちが何人か集まっ
                        て定期的に一緒に座りだすところから始まっています。ある程度基盤が出来てくると、どこか
                       の禅 センターの指導者を招いて年に何回かの接心をしたり、在家得度式をしたりして、だ                    だんと関係を深めていき、その禅センターの系列に入っていくというケー スが多数です。中には、
                       グループのメンバーの人たちが別々の禅センターや指導者と関係を持ち始め、複数の指                        者と関係が出来てしまうグループもあります。 このスティルポイントがその例で、私以外にも何
                      人もの指導者を招いて、接心やリトリートをしています。グループ内の人間関係がうまくいっ
                        ているうちはいい のですが、問題が出てくると分裂して新しいグループを作り出す人たちが出
                       てきます。このグループも今年そういう経験をしました。サンガをゼロから築いて行 くのは中々
                         大変なことです。
 
                    ピッツバーグから帰ってから、来年の1月28日から2月3日までサン フランシスコで眼蔵会があり               [正法眼蔵袈裟功徳」の巻きを講本にしますので、その翻訳を始めています。「仏性」や「有時」、
                         「諸悪莫作」などにくらべる と、文章自体は難解ではないのですが、何しろ長い巻きなの
                       で苦戦しています。一月までに完成することが出来るかどうかという状態です。私はこれまで
                         お袈裟 の勉強はあまりしてこなかったので、これを機会に参究をさせていただきます。
 
                     ブルーミングトンではすでに木々の葉は落ちてしまい、初冬のたたずま いとなりました。後一
                     週間で臘八接心が始まります。臘八が終わるとすでに一年が終わったようなものです。つい
                     この間正月が来たばかりだと思っていたのに、 すでに年末、毎年時間の経つのが早く感じら
                     れるようになりました。
 
                                                    11月23日 奥村正博 九拝
                          

  2005年10月12日   この度、三心禅コミュニティ・三心寺の日本語ホームページを立ち上げていた
                 だきました。駒澤大学時代からの友人で、三心ZCの日本事務局のお世話を
                 していただいている、鈴木龍太郎氏のご好意とご努力に感謝いたします。

                 昨日、10月の5日間接心が終わりました。私が最初に安泰寺で5日間の坐禅
                 だけの接心をさせていただいたのは、駒澤大学1年に在学中の1969年 正月
                 のことでした。もう36年前のことになります。20歳の学生が57歳の老人初心者
                 になってしまいました。その間、づっと坐禅に見守られ、坐禅にしから れ、坐
                 禅から自分の人生や世界の変化を見続けてこられましたことを大変ありがた
                 いことだと存じます。師匠の内山老師や無数の人々のご指導やお助けによっ
                 て、とぼとぼとした頼りない歩みではありますが、ここまで歩き続けることが出来
                 ました。私が安泰寺に居らせていただいた頃の内山老師と大体同じ年配になっ
                  て、老師のあのお身体で、よく毎月の接心をなさっていたものだと驚嘆いたし
                 ます。老師は63歳で安泰寺から引退されるまでこの接心を坐り続けられたので
                 す が、自分は後何年続けられるだろうかと思うようになりました。勿論先のこ
                 とは分かりませんが、アメリカでこの5日間の接心を受け継いでくれる人が一人
                 でも いいから出てきてくれるまで続けられるようにと願っております。三心寺は
                 店開きしてからまだ2年しか経っておりませんので、何もかもこれからです。自分
                 の店じまいのことなど考えるには早すぎますが、身体の衰えも勘定に入れなけ
                 ればならな い年配に達しました。ともあれ、今後とも坐禅と道元禅師、内山老師
                 のお教えの参究にささやかに生命の火を燃やしてゆきたいと願っております。

                 今月は、多忙な月で、明後日からノースカロライナ州で、アパラチアン・トレイル
                 を歩くウォーキング・リトリートがあります。アパラチアン・トレイ ルというのは、南部
                 のジョージア州からカナダに接するメイン州まで、アパラチアン山脈に沿って約
                 2000マイル続く自然歩道です。日本の東海自然歩道など のモデルになったもの
                 です。6ヶ月ほどをかけて全行程踏破する人が何百人もあるとのことです。この
                 リトリートでは、サニー・バンク・インというノースカロ ナイナ州ホット・スプリングと
                 いうごく小さな町にあるハイカーのための宿泊施設に宿泊して、この宿の持ち主
                 であるエルマー・ホール氏が所有する農場にある キャビンで坐禅をし、半日ア
                 パラチアン・トレイルを歩くというものです。私は「山水経・リトリート」と名づけてお
                 ります。紅葉した山々の中、渓川の水の音 にあわせて、ただ歩くというのがこの
                 リトリートの趣旨です。

                 ホット・スプリングという名前の通りにこの町には温泉があります。日本の温泉宿
                 とは比較にならないほど質素なもので、野外にプラスチックの、4 −5人は入れる
                 浴槽がいくつかポツンポツンと造られていて、予約をして1時間単位で借りるという
                 だけのものです。一回ごとにお湯は新しくされています。た だ山の中を流れるか
                 なり大きな川にそって浴槽が設置されているので、大自然の中の野天風呂の風情
                 が味わえます。

                 ノースカロライナからブルーミングトンに16日に帰り、18日には日本に出発いたし
                 ます。愛媛県にある瑞応寺にて行われる、曹洞宗宗務庁主催の 「伝道教師研
                 修所」の1ヶ月の研修に、講師として参加するためです。20日から25日まで、ヨー
                 ロッパ、アメリカの禅センターの指導者の人々と坐禅をとも にし、「正法眼蔵」のお
                 話をします。今回は「諸悪莫作」を講本にする予定です。

                 28日にはアメリカに帰ってこなければなりません。11月2日から三心寺で5日間の
                 眼蔵会があるからです。日本でと、両方とも、時差ボケに苦しみながら一日に2回
                 英語で「正法眼蔵」の講義をするという殆ど苦行に近い日程です。

                 これから出来るだけ毎月この通信を書かせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
  2005年8月18日   眼 蔵会、今年はブルーミングトンで2回、サンフランシスコ、オースティン、
                 ミネアポリスでそれぞれ一回、合計5回行いますが、年に五回というのは、
                 負担 が大きすぎますので、回数を減らしてその分充実したものにしたいと
                 願っています。
                                     「正法眼蔵」を現代語訳で読むことを批判する人が特に専門家の中にた
                                     くさ ん、ありますが、まして英語訳を読んだだけで正しく、 深く理解でき
                 ることなどは不可能なことです。私の参究も不十分ですし、英語力もたい
                 したものではあり ませんので、どの程度アメリカの人たちに道元禅師が
                 書かれた「正法眼蔵」そのものを理解してもらう助けになれるか甚だ自信
                 はありませんが、私が自分の坐禅 修行の中で参究してきた分だけでも、
                 人々と理解を分かち合えればと願って、不十分な努力ですが、一生懸命
                 にやっております。
                 私が少しでもやっておけば、こ れからの世代の日本人、アメリカ人で、
                 ”ただ坐る”だけの坐禅修行の深い意味を「正法眼蔵」を通じて参究した
                 いという人に、ささやかですが一つの道がつけ られるのではと願っております。



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