デジタルビデオな話

2003年5月5日

デジタル録画の時代が来た。
鉄腕アトムが新座市民になろうが、スカラー波が飛び回ろうが、そんなことはどうでもよくって、私の興味はとにかくデジタルビデオなのだ。各社つぎつぎとデジタルビデオレコーダーを発売し、カタログを見ているだけでも昇天しそう。
知人から「デジタルビデオレコーダーを買いたいんだけど、何がいいかな」なんて聞かれることも多くなった。良い傾向だ。各メーカーも利益のでないVHSではなく、デジタルレコーダーに力を入れている。このままどんどんデジタルビデオレコーダーが普及し、画質に対する要求が高まれば、また一歩野望に近づく。

各社のデジタルレコーダー戦略の違い

今のデジタルレコーダーは、メーカーごとにまったく毛色の違うものを販売しており、とても面白い。しかしその分、まだこの分野が未成熟であることがわかる。つまり、当たりと外れがあるのだ。どれが当たりか外れかは好みの問題もあるので明記しないが、主立った特徴をつかんでおけば、自分にあったものを選ぶ助けになる。

SONY

HDDレコーダーの草分け。SONYの特徴は、最新技術を使って真っ先に製品化し、利益が薄いと判断したら、波が引くように撤退するいさぎよさだろう。その分各社が煙たがっていることも事実であるが。HDDレコーダーを牽引したCrip-onシリーズを早々に終結させ、現在はネットワークを強化したCoCoonシリーズを生産する。SONYの戦略ではユビキタスを強烈に実践し、家中どこにビデオがあって、どこにテレビを置くかなんて悩まなくて良いようになってきている。日本では主にHDD,DVD-R/-RW対応機を生産しているが、ヨーロッパではDVD-R/-RWはマイナー規格なので、DVD±RWレコーダーを販売して、ワールドワイドでその力を見せつける。最近ではBlueRay製品も投入し、早期のハイビジョン市場への参入意欲を覗かせる。

東芝

ここも古くからHDDレコーダに参入。初期型は起動時間に20秒以上かかるうえ、数々の致命的不具合が見つかり大騒ぎになってものだが、現在ではだいぶ安定している。ユーザーが欲しいと思う機能を全部詰め込む戦略で、現在最もビデオマニア向けの製品を出す。メディアはPanasonicと同じくDVD-RAM/-Rに対応。ちなみにドライブはPanasonicのOEMのようだ(あれは軽くて小さくて良いドライブだ)。

Panasonic

現在最もデジタルレコーダーに力を入れているメーカー。社運をこれに賭けているのもわかる。製品の特徴としては、一般の人が使いやすく、家族で使えるような工夫がされており、東芝とは正反対の性格付けをしている。また、製品単体で動作が完了するようになっており、このへんはSONYのネットワーク化とも正反対だ。メディアはDVD-RAM/-Rに固執しており、DVD-RAMの規格元としての意地が見える。自社製MPEG2エンコーダーは、昨年段階では業界ナンバーワンの画質だといわれており、画質マニアにとってもポテンシャルは高い。また、MPEG2エンコーダ前段のビデオデコーダもジッター吸収能力に優れ、古いビデオテープをDVDにダビングするために最適である。

Pioneer

DVD-RWレコーダーの先駆者。レーザーディスクの客層を逃すまいと、DVD-RW対応機を真っ先に発売。しかし、その初期型製品の画質はおもわず目を覆うほど悪く、製品イメージが悪化。このへんに画質へのこだわりが見えず、評判の悪いままずるずると今に至る。新製品の特徴もありきたりで、目を引くものがない。

Victor

VHSの規格元だけに、HDDとVHSのハイブリッドがある。HDDビデオ市場へは早くから完成度の高い製品を投入しているなど、センスの良さを見せるが、Pioneer以上に噂に上らない。宣伝もせず、2年前の製品がいまだにカタログに載っているなど、売る気が無いのか、会社が危ないのか、心配するところだ。新製品の数が少なく、DVDレコーダー市場へは未だ参入していないなど、テープ市場に執着しすぎている事は否めない。デジタルディスクレコーダー事業では完全に取り残されている。

今買うならどの方式?

いや、別に、好きな方式のを買えばいいんですけどね。参考程度に。
ほとんどのユーザーには、HDDだけ搭載したものがお薦めです。お金をかけられる人は、HDDとDVD-RAMのハイブリッドが良いですね。DVD-RAM対応機はDVD-Rにも対応しているので、互換性も問題ありません。

HDD

HDDの大容量&高速アクセスは、使い始めたら止められません。デジタルレコーダーにHDDは必須です。パソコン向けの大容量HDDを使うと音、熱(=信頼性)の問題があるので、今ならAV用80GB搭載モデルのものが最適です。80GB越えの大容量タイプを選ぶ場合は、店頭で騒音の度合いと、製品の大きさ(大容量タイプは放熱のため、製品自体も大きいものが多い)を確認すると良い。

DVD-R

日本で最も互換性の高いメディア。DVDプレイヤーやプレステ2(初期モデルを除く)でも再生できます。
メディアの価格も300円程度と安価です。

DVD-RAM

長所は、なんといってもカートリッジに入っていること。カートリッジ無しタイプもありますが、DVDは手で触って指紋が付いたり、落として傷が付くと読めなくなります。子供がいるご家庭には、落としても平気なカートリッジタイプがお薦めです。
データの信頼性は、DVD-R,DVD-RWに比べると、比較にならないほど高いので、大切なものを録画する人はRAMが最適です。ただし、パソコン向けDVD-RAMのようなライト&ベリファイは現在非対応なので、場合によってはRやRWと同様に「書いたけど読めない」こともあり得ます。
もう一つ、DVD-RAMをお薦めする理由は、互換性の高さです。現在DVD-RAMドライブを作っているのは松下と日立で、AV向けは松下だけです。メディアの材料も松下が各社に供給しているため、実質松下が全部管理していることになり、非情に互換性が高くなっています。そのため競争も無くなり、メディアの値段が下がらないことが困りものですが、AV用途ではメディアの使用枚数が少ないので、本体価格を考えると影響は少ないでしょう。

DVD-RW

DVD-RWはパソコン用途ならまだしも、AV用途では中途半端です。わざわざ選択する理由も無いでしょう。DVD-RWに対応したパソコンを持っているならこれも良し。

DVD+R

簡単に言うと、DVD-Rの改良品です。AV用途では特にメリットありません。ヨーロッパ向けの規格として考えた方がよい。

DVD+RW

簡単に言うと、DVD-RWの改良品です。パソコン向けのメディアとして生き残るだけで、AV用途には(日本では)使われないと考えていいでしょう。ヨーロッパ向けの規格として考えた方がよい。

メディアを選ぶ

DVD-RW/-RならTDKの超硬シリーズがお薦めです。ちょっと値段は張りますが、キズの付きにくさは特筆ものです。DVD-RAMはカートリッジタイプにすると、録画した作品のタイトルを鉛筆で書いたり消したりするのに便利です。キズが付きにくいのも当然メリットです。事実上、子供のいる家庭では超硬シリーズとカートリッジ付きDVD-RAM以外は使い物にならないと断言しましょう。
また、大量に記録したい人で、メディアも大切に扱うよという人には、台湾製DVD-RAMメディア(カートリッジ無し)がお薦めです。信頼性は国産のものに比べれば落ちますが、ドライブを作っているメーカーが限られているため、台湾メーカーも松下か日立に性能を合わせ込んでくるので、RWやRよりずっと書き損じは少なくなります。メディアの値段は国産DVD-R並の300円で買えますから、自己録再メインの場合はお薦めです。たまに人にあげる場合は、いったんHDDにコピーして、DVD-Rに焼き直すことになります。

今後の展開

HDDは、今後のハイビジョン対応を考えると、100GB以上は必須です。大容量タイプでの動作音と消費電流の低減が課題です。パソコン向けのHDDも同じ傾向がありますが、パソコン向けで開発されるのを待っていられないので、AV向けの独自・先行開発が必要でしょう。
DVD-RAMは倍速を上げることが命題です。4倍速以上になれば、パソコンと同じくライト&ベリファイが可能になり、信頼性が飛躍的にアップします(というか、どのメディアもRAMにかないません)。信頼性が上がると業務用途でも使用できるので、業界の標準化や高品質対応と、新しい展開が期待できます。
DVD-Rは、一番使われるDVDメディアでしょう。CD-Rの時と同じで、今後のさらなる信頼性向上が無いと、一般ユーザーからクレームが来ることになります。
DVD-RWは、今後世の中全ての機種で再生対応すれば良いのですが、いまだに新製品カタログを見ると、DVD-RWのVRモードは非対応だったりしますね。RWに対するアドバンテージは微々たるものでしょう。