電子機器の作り方(4月)

4月1日(月)

私の旧パソコンをCAD用サーバーにすることになった。インストールをしていると、購入時に送られるライセンスファイルを読み込ませるような指示が出た。ソフトウエアのライセンス管理部門にライセンスファイルが送られている? 急いでライセンス管理部門に電話をする。担当者からは「今忙しいから」との返事。この担当者には、1年前にも問い合わせをして、いままでに2回の回答要求をしているのだが、いまだに返事が来ない。今回もCADのライセンス上、1ヶ月以内にインストールを済ませなければいけないのだが、期限内のファイル転送は無理だろう。仕方なしにメーカーへ連絡。異例のライセンスファイル再送信を依頼する。メーカーはすぐさまアメリカ本社へ問い合わせ、ファイルを送ってくれた。迅速かつ丁寧な対応に感激。このOrCADの5年前のサポート代理店は最低の対応しかできなかったが、今のサポート体勢は好感が持てた。
CADサーバも立てたので、今日から回路図の作成を始めることにする。
pepaビデオの目標原価について話し合う。私が使って良い金額は、5万2千円。DVD-RAMのOEM価格を引くと、残り約1万円が追加機能分の部品として使える。パソコン用部品と比べてビデオ系部品は、価格が10倍だと考えると、あまり余裕があるとは言えない金額だった。

4月2日(火)

本社は、巨大な空調設備のおかげで空気の流れは良いが、エアコンは動かさないため、非常に暑い。なにせ設計部門は測定器だらけなのだ。気温も4月初旬とは思えぬ29度を示している。暑いのは好きなので、私だけは喜んでいた。
回路図、1.全体の構成と2.マイコン周りがとりあえず完成。まあ、叩き台であるため、これを元にどんどんカスタマイズしていくことになる。
CADに配置するLSIデータファイル(ライブラリ)を作る。この作業がめんどくさい。お絵かきソフトのようなもので、四角い形に端子を配置し、信号名を書き入れていくのだが、LSI1個で300ピンもあったりすると、気が遠くなる。こういうのは新入社員とかアルバイトがいたら、真っ先に任せたい仕事である。

4月3日(水)

回路図、3.MPEGエンコーダー、4.バッファメモリーのページが完成。単純にCADを書くだけじゃなく、接続しながら信号の特性を考え、頭にたたき込んでいく。

4月4日(木)

有給休暇

4月5日(金)

pepaビデオでのデータ記録方法についてチームリーダーと相談する。パソコン用DVD-RAMを使ってみるとわかるが、DVD-RAMを標準的なファイルシステム上で扱うと、とんでもなく遅くなる。今パソコン用に存在するデバイスの中では、フロッピーに継いで遅い。それを高速に扱うためのテクニックとして、いくつかアイデアを教えてもらう。
pepaビデオのデザイン打ち合わせの下準備として、部内で相談をする。ポイントは
これらの条件を元に、デザイン部門へ依頼する。

4月8日(月)

回路図、5.ビデオデコーダ周りを配線。
メカ担当とpepaビデオ内部空間について打ち合わせ。基板上の部品高さ制限、上側20mm,下側15mmの予定(ただしデザイン上さらに小さくなる可能性はある)。

4月9日(火)

イーサネットの信号入力にはトランスを挿入する必要があることを知る。同じシリアルインターフェースでも、USBやIEEE1394はグランドが存在するのに対し、イーサネットの信号は完全な差動信号で、グランドは無い。グランドのない差動信号の場合、信号出力側から見れば、差動出力の1本は1V、もう1本は4Vかもしれないが、その信号を受けるpepaビデオにとっては11Vと14Vになるかもしれないし、101Vと104Vに相当するかも知れない。そのためパルストランスを挿入し、交流分のみを取り出す必要がある。
生産技術部門への質問をする。
Q.基板の最大サイズはどれくらいまで可能か。
A.実装機の制限から、シートの外形は幅で100mm〜250mmまで。長さは、常識的な寸法であれば問題ない。
Q.抵抗アレイは使って良いのか。チップ部品の最小サイズは?
A.制限はない。ただし小さすぎる部品は基板のリワークなどで2次災害を起こす可能性があり、気をつけてほしい。
デザイン部門との打ち合わせ。5日のデザインポイントと製品のコンセプト等を説明し、デザインを依頼。
製品のコントロールについて。イーサネットを標準搭載するため、製品のコントロールもイーサネットで行うのが希望だが、OEMを予定しているお客さんがシリアルにこだわっているので、pepaビデオもシリアルでコントロールすることにする。
リモコンについて。暗い部屋で扱うこともあるので、液晶をバックライト品にし、ボタンも光るタイプにしようとの意見があった。しかし、ボタンが光るのは、1個ずつ光らせないと意味が無く、ボタン30個としてLED30円だとこれだけで900円のコストアップになる。ばかばかしいので止め。液晶だけはバックライトで確認できるようにする。
リモコンのメンブレン対応について。リモコンの前面を1枚のシートで覆い、水が入らないような対策が必要との意見に対し、ボタン面内部が1枚のゴムシートで覆われていることから、液体がスイッチ内部に入り込む可能性が低いと判断。メンブレン対応させないことにする。
LANのコネクタについて。
埃が接点に付着するのを防ぐため、接点が上側のものを採用する。また、シャッター付きコネクタを探す。→シャッター付きのLANコネクタは存在しないようです。

4月10日(水)

mpeg2LSIの仕様書を読む。

4月12日(金)

有給休暇

4月15日(月)

MPEGの特許問題勃発。「MPEG特許は最終製品にかかる」ため、過去の自社製品では「最終製品の十数%」を支払っていた。100万円の製品なら十数万円ということになる。製品の利益が吹っ飛んでしまう。ただしこれは解釈次第で、数百円で済みそうなので、法務課に調査依頼。
電源ONしてから、pepaビデオが動作を始めるまでの時間について。従来機種では2秒のハード的なウエイトが入っていた。pepaビデオはこれを無しにして、高速に起動させたい。今のHDDビデオは、電源ONから起動し終えるまでの時間がいらつくからだ。従来機で2秒のウエイトが入っている理由については、「電源がプア場合に、電源の安定を待つため」とのこと。OEM先での事例として、インドネシアなどで1次側すらプアな電源の場合、1次側の電圧がじわじわ上がる可能性があり、それでも問題がないことを確認すれば、起動時のウエイトをなくせる事になった。
同期生が肺炎で倒れ入院。土曜日、風邪気味というのを無理に連れ出してドライブしたのがたたったのか。お詫びとお見舞いをかねて、お見舞いに行く。同期4人でお金を出し合い、じゃんけんをして、私が負けたら3500円のメロンを買うことにしたら、お約束通りに私が負けた。

4月16日(火)

寝坊した。今日は10時15分に出社。フレックス制度のおかげで遅刻にはならないが、反省、反省。
CADのインストールを他部門にも指導開始。今月中に旧CADシステムを停止し、完全に移行する予定。

4月17日(水)

グループミーティング。相変わらず朝方まで、自宅の引っ越し荷物の片づけをしていたため、眠かった。
液晶ディスプレイ(リモコンの液晶)のメーカをwebで探す。後日打ち合わせを行うことになった。

4月19日(金)

有給休暇

4月22日(月)

RGB信号に2種類あることを知る。
pepaビデオのデザインラフを見せてもらう。
パターン1.
電源スイッチ左、LANコネクタ右下
デザイン課は嫌がっていた。
LANコネクタの基板がMAIN基板と兼用できるので、設計としてはこっちの方が良い。ラフ画ではLANコネクタが右すぎたので、MAIN基板あたりに移動してもらうようお願いした。
パターン2.
電源スイッチ左、LANコネクタ左下
MAIN基板から完全にはずれるので、別基板を起こすか、MAIN基板を大きくしなくてはならなくなる。
LAN接続時に電源スイッチが押しづらいこと、LANの抜き差しで電源スイッチを押してしまうことが心配。スイッチとLANコネクタは離した方が良いのではないかと提案したところ、LANケーブル抜き差しの時には必ず電源スイッチをOFFにしなくてはならないことを考えると、電源スイッチはLANコネクタの近くにあった方が、ユーザーインターフェースとして逆に良いのではないかとの回答。確かにそれも一理ある。
モニタ画面に現在時刻などの文字を入れる、通称OSDを、回路のどこに入れるかを打ち合わせる。ビデオ出力ではなく、MPEGデコーダの出力に直接入れることになった。ビデオ出力に入れると、RGB出力とコンポジット出力、それにS-VIDEO出力の全てにOSDを入れなくてはいけないが、MPEGデコーダ出力に入れれば1個で済むため。

4月24日(水)

MPEGエンコーダ評価装置で、サンプルMPEGを100個ほど作った。部内に公開する。

4月25日(木)

展示会で話をした電源メーカが、サンプルを作るので評価して欲しいと交渉してきた。不況の時はどこのメーカもフレンドリーで嬉しい。
MPEGサンプル100個で2GBあった。社内の共有サーバにこんなたくさん置くのはまずいと言われたので、CADサーバーに移動した。
部長から、MPEGサンプルが開けないと言われる。物がMPEG2なので、DVDの再生ソフトなどをインストールしないと見れないことを説明。WinDVDをインストールしたら開けるようになったが、色が画面半分近くずれている。試しに色数を16bitから32bitに変更したら正常に再生できた。とりあえず一安心。

5月版に続く