Intel 8085

 

古いCPUを使って何かひとつコンピュータを組み立ててみようという話になったら最初はインテルの8080だろうけど、入手困難だし、何とか入手しても電源が3種類必要になり、コンピュータでなく電源を作るみたいになってしまって面白くない。8080の次の8085は、8080のソフトウェアや周辺チップが使え、細かいことをいわなきゃ8080みたいなもの。たのむ、8085で勘弁してくれ。


8085は、専用の周辺チップ8755と8155でファミリーを構成している。8755はEP-R0Mとパラレル入出力、8155はRAMとパラレル入出力とタイマをもつ。 どっちもめちゃくちゃなコンビネーションだが、何はともあれこの3つでコンピュータのすべての要素をカバーできるというわけ。 8085のファミリーは全部が時分割バスを採用しており、この3つを組み合わせると配線がすっきりする。 しかも、マニュアルにプリント配線パターンが掲載されているから話が早い。 これをコピーし、プリントゴッコで基板に印刷し、エッチングし、チップをハンダ付けすればいい。 ちっとも話が早くないと感じるかもしれないが、部品配置を考え電線で配線するのに比べると、ずっとラクなのだ。 ところが、ぼくが入手したマニュアルには8755にプログラムを書き込む方法が書いてなくて、コンピュータができあがっても動かせそうにない。 しかたがないから、汎用の周辺チップと組み合わせることにした。

8085と組み合わせたのは、ファミリーのシリアルインタフェース8251、32KバイトのEP-R0MとRAM、周辺回路の7個のTTLだけ。これで、ターミナルを接続して操作するタイプの、最低の機能をもったコンピュータができあがる。チップは全部あわせても11個しかなく、基板は とてもスッキリしている。 8085は最高3.125MHzのクロックで動 かせるが、2.4576MHzにとどめている。この中途半端なクロックは 分周して8251の通信クロックに流用するためで、繰り返し2で割っているとやがてボーレート9600bpsになる。8251は割り込み処理できるよう接続し、シリアルインタフェースに接続したターミナル の操作を確実に拾うようにした。


部品のレイアウトや配線の美しさは、機能にほとんど影響しない。ケースに入れてフタをかぶせてしまえばわからない。そのレイアウトや配線に凝るのがプロというものだ、ってプロじゃないけど。下の制作例は、 自慢できるほどうまくはないが、まあ70点のでき。ヘタやると配線がモリソバのようになってしまい、うまく動かなかったとき確認や修正が大変なことになる。 きれいに配線するコツは精密機器用のハンダと18Wあたりのハンダ鏝と耐熱電線を使うこと。技術的なアドバイスはできない。以前、NASA認定ハンダ付け士(正式名称は違うかも)の仕事を見て、おのれの無力を知った。


回路や基板を作るのことには熱中できても、ケースを作るのはうっとうしい。しかし、往々にしてコンピュータの評価は外観に左右される。 すばらしいコンピュータを作ったら、というか、ろくでもないコンピュータを作ったらなおさらのこと、それなりのケースにおさめる必要がある。要点は電源スイッチやシリアル端子のための四角い穴を綺麗にあけること。鉛筆で印を付け、ドリルで小さな穴を たくさんあけ、丸ヤスリでつなぎ、平ヤスリで仕上げる。仕上げに転写式のレタリングシートで気の利いた文言でも入れておけば完璧。


ケースに電源とスイッチとシリアル端子をつなぎ、基板をおさめる。 電源コードはケースのふちに沿ってスイッチまで引き回し、しっかりハンダ付けする。電源コードがたわまないよう、電源の位置をケースのふちに近付け、押し付けている。さらに、接着剤で貼り付けてやろうかと考えたが、ヘタな接着剤は電源コードの被服を溶かし、ショートさせるおそれがあり、かえって危険らしい。電源はジャンク店で見つけたもの。外装のところどころにサビがあり、ものすごく心配だったが何とか使えている。コネクタは、サンハヤトのMCC-167というDsub用ピッチ変換基板に取り付け、その基板をスペーサでケースに取り付けた。
 


EP-ROMにパロアルト版タイニーBASICをもとにした東大版BASICを書いて取り付けた。これで、シリアル端子にテレタイプかコンソールという端末装置を接続すると1970年代のコンピュータの動作を確認できる。とはいえ、いまどきそんな端末装置は手に入らないから、パソコンを接続し、通信ソフトを動かして代用する。準備ができたら身を伏せ、電源スイッチをオンにする。何しろ、ひとつの思い違い、1本の配線ミスが大爆発を引き起こす可能性をもつ。しばらく待って、どこからも煙がでていないことを確認し、 ふとディスプレイを見ると、タイニーBASICが起動メッセージを表示しているではないか。ちゃんと動いて思い切りびっくりしたりするのはなんでだろう。


ソフトウェアは8080アセンブラモニタおよびTiny BASICで説明する。

【関連資料】
配線図
-8085sch.pdf
実体配線図-8085sbc.pdf
部品表-parts.html