往年の秋葉原の面影を残す
ガード下のジャンク店

年配の人にとって秋葉原は、ラジオ少年を温かく迎える街として記憶に残っていることだろう。現在も、なぜかガード下の一画にだけはどこもジャンク店が健在で、あたかも時間が止まったかのように昔ながらの商売をしている。

JR総武線の御茶ノ水方面のガード下は、現在の電気街の発祥の地。人がどうにか擦れ違える細い通路が1階に3本、2階に1本あり、その両側に間口1間くらいの部品屋が並んでいる。通路で区切られた4つの店舗群は、それぞれ、野村電気ホール、ラジオストア、秋葉原ラジオセンター、電波会館というのが正しいそうだが、俗にまとめて「ハーモニカ横丁」と呼ばれる。背の高い人なら頭をぶつけそうな天井、むき出しの配管、裸電球の照明などがなかなかの風情だ。
かつてはここでタダ同然の掘り出し物が見つかったが、現在はきちんと仕入れたまじめな部品しかない。そうはいっても、自分でラジオやオーディオやマイコンを組み立てようという人にとって、なくてはならない場所となっている。


JR山手線の神田方面のガード下には、ニュー秋葉原センターがある。入口付近のジャンク店がほこりっぽいラジオや電線を並べているにもかかわらず、いまも堂々と「ニュー」を名乗 っているところにこの店舗街の心意気を感じる。
奥のほうに、よく大手パソコンショップの支店が開店するが、すぐ閉店してしまう。「入り口があれですから」とはそんなショップのある店長の嘆き。


万世橋の神田寄り、JR中央線のガード下にはラジオガァデンがある。現在の電気街が形成される以前、戦後の闇市はこのあたりにあったから、元祖ジャンク店ともいえる。旧国鉄万世橋駅跡地にあたり、煉瓦の残骸に駅舎の面影がある。
ラジオガァデンの交通博物館を向いた側のお店は、電流計や電線といっしょにレンズ付きフィルムや電車のおもちゃを売っている。一方、万世橋のほうを向いたお店は気合いの入ったジャンク店。ダイヤル式電話器とか旧式大型ファクシミリとか仕様不明のカード類などで舗道を占拠 し、伝統の商法を継承している。