2002年9月

9月 1日(日)
なんだこの残暑は。まったく不機嫌になってしまうな。そのせいか朝のカンヅメの時、おもわずK代にうなってしまったよ。K代はワタシのために休日返上で店に出ているのに申し訳ないことをした。すいません。早くこの残暑がどこかへ飛んでいかないかな。そうすれば夜食にナマものが食べられるのにな。マグロ、ヒラメ、ホタテ・・。想像すればするほどヨダレがこぼれてしまうよ。

2日(月)
お昼にYから焼きサバとご飯をもらったよ。お弁当用のサバは少し塩が効き過ぎてるからご飯とまぜてくれたんだ。その後、K代がお弁当を開けたから、しめしめとおねだりしたら、なんだこれは。
シューマイなんて食べるもんか。諦めてネグラに戻ったよ。そうだ、九月に入った昨日から心機一転、母の机の下で寝ているんだよ。ここは静かでいいんだな。母の足が少し邪魔だけど。

3日(火)
朝、社長のMが来た後にN君が来た。少し遅れてYが来た。ワタシをほんの少しだけナデナデして二人は出掛けて行ったな。ということは、やはり母と綾子さんがカンヅメの時、ワタシを後ろから押さえていたな。そんなに強く押さえなくてもいいのにな。どこにも逃げないよ。夕方帰って来たYとN君はネコの話をしていたな。N君の家には家ネコと外ネコがいるのか。同じネコなのに、おかしいな。われらネコ族は皆な平等のはずだけどな。

4日(水)
母が机の下のネグラにタオルを敷いてくれたよ。これで居心地がグーンと良くなったな。後は秋の来るのを待つだけと言いたいところだが、なんだ、まだ残暑クンがいるのか。もうキミの役割は終わったんだよ。ゆっくり休んで、早く食欲の秋クンに交代して欲しいな。お願いしますよ。あーあ、お昼にワタシの好物は何もなかったな。

5日(木)
お昼近くYがつぶやいた。「腹が減ったな。トラが起きてくる前に弁当を食べるか」。机の下で寝ていたワタシは、そうはさせじとガバッと起きだし、母の細い二本の足を巧みにかいくぐり、Yのイスの横で行儀よく座って待っていたのさ。お弁当を持ったYは呆れたように苦笑いをし、ワタシはめでたくタラのフライを頂戴したんだな。それを見ていたK代は「別に食べ物の匂いがしたわけでもないのにね」。母曰く「心が素直だからカンも鋭くなるのよ」。こと食べ物に関して、なぜかワタシのパワーは数段アップするんだよ。

6日(金)
ワタシの願いが通じたのかな。残暑クンがどっかにすっ飛んでいって、強い雨の降る涼しい日になったよ。これで食欲の秋への準備はそろったが、まだ皆なワタシの好みをシッカリ理解していないようだな。母とA子さんがアナゴをくれたが、ワタシはヌルヌルしたものは食べないんだよ。アナゴ、ウナギ、ドジョウ、コンニャク。あれっ、コンニャクとは前の家の時遊んだことがあるな。そうだ、コンニャクで妹のマリーとネズミを捕る練習をしていたんだ。母に見つかって、マリーと怒られたな。すごく懐かしいな。

7日(土)
涼しいのはいいんだけど、曇天だな。これではヒナタボッコは無理だな。そうだ、母に怒られた思い出はまだあるな。マリーとキャットフードの入ったカンを倒し苦労してフタを開けて、二匹でたらふく食べたんだ。母が散らばったキャットフードとカンを見つけて、二匹正座をさせられたよ。あの時、食べ終わってからカンのフタをきちんと閉めてさえおけばな。それと、マリーがノロマでなかったらな・・。あれっ、すごい雨が降ってきたな。マリーが怒っているのかな。

8日(日)
辛い話を聞いたよ。三日ほど行方不明だったN君の外ネコのチビが、足を引きずりながら帰ってきたんだ。車にはねられたらしい。可哀想に足が痛くて帰れなかったのだろうな。左後ろ脚を複雑骨折しているらしい。ネコ族と車との間には宿命的なものがあるんだよ。暑い時には陽射しを避けて車の下に入り込んでしまうし、寒い時には暖を取るために車の上に乗ってしまうからな。明日の夜の手術か。きっとうまくいくよ。そうだよ。ワタシも応援するから、大丈夫だよ。それにしても、辛いなぁー。

9日(月)
朝のカンヅメの時、鼻水がズルズル出てきたので参ったよ。カンヅメを食べては鼻水をすする、鼻水をすすってはカンヅメを食べる。いつもの二倍の労力を費やしてしまったな。風邪かなと思ったけど、昼に母からマグロをもらったら、なぜか直ってしまったんだ。身体が弱った時にはやはり食事だな。そうか、この涼しさが続けば、夜食にマグロが復活してくる日も近いな。そう願いたいよ。

10日(火)
ちょっと太ったかな。お昼にはシャケご飯を少しもらったし、カンヅメは規則正しく食べているし、睡眠はタップリ取っているし、仕事もきちんと真面目にやっているからな。気のせいか、毛もフサフサしてきたようだ。まさに健康的な生活をおくっているな。あれっ、ワタシは病気なんだけどな。でも、身体は健康でも、病的な生活をしているネコもいるしな。正念場だと思っていた、この夏をうまく乗り切れた自信は大きいよ。しかし、過信は禁物だよ。これまで何度も痛い目にあっているからな。そうだな。

11日(水)
朝の陽射しは良かったな。Yにナデナデされながらのヒナタボッコは久し振りに満足したよ。お昼には母からエビの天ぷらをもらったし、まさに平穏な一日だったな。それはそうと、N君の外ネコのチビの手術が無事に終わったらしい。針金で固定した骨がくっつくのを待つのだそうだ。全治一カ月ほどかかるらしいが、まだ若いから回復も早いだろう。手術をして完治するならいいよな。ほんとに。ワタシの病気は手術などお呼びでないし、完治しないのだからな。それを思うと・・・。

12日(木)
ピーシャラ、ピーシャラ、ステテンテン。ピーシャラ、グースカ、ステテンテン。グースカ、グースカ、ステテンテン。あれっ、祭りのお囃子とワタシのイビキが共鳴してしまったな。午後のひととき、お店の皆なはお囃子を聴きながら気持ちよく寝ていたよ。リズムがまたいいんだな。いよいよ秋祭りか。そうか。今年の祭りも迎えられたんだな。

13日(金)
玄関に提灯が飾られて、いよいよお祭り気分だな。そのせいか、お昼には天ぷらのイカを、いつもよりほんのちょっと多くもらったよ。ほんのちょっとだよ。でも、カンヅメ以外の食べ物をこれだけもらえれば大満足だよ。あとは、お囃子のリズムにのって爆睡するだけだ。午後に、赤ちゃんのKY君が来ていたみたいだがワタシは夢の中。ピーシャラ、グースカ、ステテンテン。やはり、祭りはいいな。そうだな。

14日(土)
曇り、ときどき雨、か。なんだ、なんだ、なんだこの子供達の行列は。ワイワイ、ガヤガヤ、騒がしいな。皆な隣りの稲荷神社に入っていくよ。何かおいしいものでもくれるのかな。夕方のカンヅメが少し早かったのでワタシも小腹がすいてきたな。夜食は? やっぱりカツオブシか。祭りの特別料理はないのかな。ムシャ、ムシャ。

15日(日)
涼しいと言うより肌寒い日になったな。Yがホカロンを用意したが、いくらなんでもまだ早いよ。それにしても、あのクソ暑い夏が懐かしいな。夏君、どこかへ飛んで行けとか、いろいろ悪口を言ったがゴメンネ。考えてみれば、来年は君と会えないかもしれないんだよな。もっと、もっと君を大切にしなければいけなかったな。きっと。

16日(月)
祭りが終わった。大雨になったな。でもワタシの身体の調子はすこぶるいいんだな。朝、Yがシャッターを開けた瞬間、走って出迎えたよ。その後しばらく店の中を走っていたよ。我ながら珍しいことだな。お昼にYからエビの天ぷらをもらったよ。そうか、一日遅れの敬老の日だな。ワタシも歳をとったもんだな。

17日(火)
なんだ、連休は終わりか。朝シャッターが開いた時、急いだ玄関に行ったら、入ってきたのは社長のMだったんだ。ワタシのお腹も活発に活動したな。りんごやチョコレートを食べてる音でも、急いでネグラから出ていったよ。お昼にイカ焼きをしっかりもらったんだけどな。イビキもグースカ、お腹もグースカ。グースカの季節の到来だな。

18日(水)
あーあ、母には参ったよ。お昼にYがカツオブシご飯を用意してくれていたんだが、母のか細き足でペチャンコに踏み潰されてしまったんだ。哀れ、カツオブシ入りの薄焼きせんべいが出来上がってしまったよ。それを見ていたK代が、可哀想に思ったのか、ほんの少しシシャモを分けてくれたよ。うれしかったな。

19日(木)
朝のカンヅメが終わると、何やら怪し気な雰囲気が漂いはじめたな。ワタシは急いで机の下のネグラの奧深くに隠れたが・・。やはり、Yに連れられて動物病院へ。ワンワン、うるさく吠えてる小さな犬がいたな。あれだけ吠えれば疲れるだろうにな。なんでも、左前脚のじん帯を切って、直ったばかりなのに今度は右前脚のじん帯を切ったらしい。大変だな。ワタシはといえば、体重は3,95kg。なんか太ったよ。真面目にカンヅメを食べていたからな。腎臓の数値もまあまあだったけど、またも少し貧血気味だな。腎臓をやられる前から、ワタシにとって貧血は大敵だったけどな。まあ、仕方ないか。病院に行った日はやっぱり疲れるよ。ゆっくり寝かせていただきますニャー。

20日(金)
爽やかな秋晴れだな。わずかな時間だったけど、朝のヒナタボッコは本当に気持ちよかったな。お昼に母からエビの天ぷらをもらい、お湯に浸したタオルで顔を隅々まで拭いてもらったよ。おかげで気分よく昼寝ができたな。貧血のことなどすっかり忘れてしまったよ。こんな日がずっと続けばいいな。

21日(土)
休みなのに朝早くYが来たよ。昨日Yが帰る時「なんだもう帰るの」とワタシが寂しそうな表情をしたからかな? よし、よし。そして、昼にとうとう出たよ。出た、出たといっても、オバケやお月様ではないよ。ほんのちょっとだけど、マグロの刺し身だよ。ついにシーズン到来かな。これで夜食に出れば完璧なんだけどな。

22日(日)
甘かったな。やはり二日続けてのマグロはなかったよ。でも、夕方のカンヅメの時、グッドニュースを聞いたよ。なんでも明日の昼はK代が出掛けるので、昼のカンヅメは中止らしい。しめ、しめ。ワタシは聞こえない振りをして、辛そうにカンヅメを食べ続けたんだな。あとはお昼にYが何を持ってきてくれるかだな。期待に胸がふくらんで、なかなか寝つけないよ。まあ昼間あれだけ寝たからな。そうだな。

23日(月)
わあーい。ヒラメ、ヒラメ君だよ。フム、フム。ムシャ、ムシャ。甘味が口一杯に広がって、なんともいえない歯ごたえだな。やはりヒラメは魚の王様だな。お日さまも顔を出して、ヒナタボッコも満喫したよ。でも、夕方にはしっかりKが帰ってきたな。まあ、カンヅメも食べないとな。それにしても素晴らしい休日だったな。

24日(火)
お昼に食事に出掛けた母が、おみやげにマグロの赤身を持って帰ってきてくれたよ。マグロは飽きないし、味に深みがあるな。やはり魚の王様だな。あれっ、昨日はヒラメが王様だったな。でも、考えてみると、ワタシの好きなアジもイカもタコもみんな王様だよ。ホタテは貝の王様だしな。そうか、王様達はみんな海に生きているんだ。それで海はあんなに大きいし、豊かなんだな。そうだな。きっと。

25日(水)
だいぶ日が短くなったな。秋の日は釣瓶落とし、というからな。秋の夜長ではワタシの警備の仕事が長くなっちゃうよ。でも、夜食に待望のマグロがほんの少し出たから、まあがんばるか。そういえば、N君のチビが退院したらしい。2〜3週間ほど自宅療養するらしいが・・。えっ、チビは外ネコだよな。そうすると、自宅といっても外になるよな。外が自宅か。なんかおかしいな。

26日(木)
なんだ、なんだ、これは。お昼に、母からエビの天ぷらをもらい、それに続いて何かをくれたので、思わず食べてしまったんだ。魚ではない、肉でもないな。ムシャ、ムシャ。甘く、こくがあっておいしいな。そうか。まさか。もしかして、サツマイモの天ぷらか。驚きだな。ワタシの食の範囲も広くなったものだな。

27日(金)
それにしてもな。昨日サツマイモの天ぷらを食べたからといって、オデンのシラタキやガンモドキを出されても困ってしまうよ。いくらなんでも食べないよ。そうか、オデンの季節になったんだ。そういえば、朝晩は少し冷え込むようになったしな。また寒い月日がやって来るのか。ワタシもそろそろ寒さ対策の準備をしなくてはな。ノンビリ寝ている場合ではないよ。忙しくなるな。グースカ、グースカ。

28日(土)
ついにYが冬用のネグラを用意してくれたよ。ペットショップで売っていいる普通のハウスに布を敷いてくれたんだ。これで夏用のダンボールハウスともしばらくお別れだな。冬用のネグラに入るには、やはりまだ違和感があったな。だって、まだ九月だよ。おそるおそる入ってみると、懐かしい家庭の匂いがしたな。そうか、母の匂いだ。母の古着を切って敷いてくれたんだな。うれしいな。心身共に温かくなったよ。

29日(日)
残念でした。せっかく冬用のネグラを用意してくれたのに、今日は気温がグングン上がって、少し蒸し暑かったな。Yはぶつぶついいながら、冬用のネグラを片付けて、また夏用のダンボールハウスを取り出してきたよ。ワタシもまだ早いと思ったんだけど、せっかくの好意だから黙っていたんだよ。アッハッハ、ニャー。

30日(月)
雨だよ。昨日の暖かさはどこかに飛んでいってしまったな。クシャミはするわ、鼻水はでるわ、まったくイヤになってしまうよ。昼にエビとシャケをもらってさっさと昼寝だ。母曰く「すごいイビキだったよ」。そのせいか、夕方起きたらスッキリしていたな。でも天気がスッキリしないな。秋晴れはどこに行ったのかな?