2002年5月
5月 1日(水)
みんな好きなのかな。母と社長のMはそれぞれ病院へ。ワタシなんか病院と聞いただけで震えるし、カンヅメを前にしたら固まるよ。昼に戻ってきた母は、夢庵から天どんを買ってきたよ。ワタシはチャッカリ、Yの椅子の上で欲しそうに首をのばしたら、エビの天ぷらをほんの少しわけてくれた。やはり、母は母だな。

2日(木)
シャッターを開けてきたのはYだった。いいぞ、ぞんぶんに撫でてくれた。社長のMの姿は見えなかったな。母曰く、「トラも無口になったわね」。ワタシはオシャベリだったのか?難しい。わからない。グー、グー、グー。

3日(金)
あれ、休みだな。やはり、ゴールデンウィークに入っているんだな。ワタシの仕事はカンヅメを食べることだな。だから休みはないんだ。あの二人も飽きもせずよく来るな。休んでもいいんだよ。母も昼ごろチョット来たよ。休みなのになー。

4日(土)
もう玄関には陽が入ってこなくなったな。ヒナタボッコはできないが玄関先での毛づくろいがいいんだな。いろいろやっているうち耳のうえ少しを傷つけてしまった。血がでてきた。Yがヨードチンキを塗ってくれた。臭いなぁー。ワタシは匂いに敏感なんだから。まあ、年をとると、イボとかできものなどいろいろでてくるワナァー。

5日(日)
静かだ。少し寂しい気もするが、いいもんだ。シャッターを開けてくるのはYとK代。日に3回カンヅメをワタシの口に入れていくのみ。それにしても、今日は暑い。静かだ。本当に暑い。本当に静かだ。スー、スー、スー。

6日(月)
昨日は暑かったな。夏が来たのかとおもったよ。いろいろ心の準備があるから勝手に来てもらっても困るんだよ。と、怒ったら今日は普通の気温になったよ。それにしてもあの二人は規則正しく来るなぁー。休みなんだからワタシのカンヅメも休みにしていいんだよ。ワタシにはこのヒラメがあるんだから。ムシャ、ムシャ。

7日(火)
おっ、みんな来たな。休みだと寂しい気がするが、こうしてくるとうるさいな。しかし、寒いな。今度は冬になったのかよ。いまどきホカロンを入れるなんて、変な気候だな。体調を崩さないようにしないとな。おや、Yがクシャミをしてるよ。

8日(水)
昼はラッキーだったな。香ばしい匂いがワタシに起きろ、といったよ。ヨロヨロとネグラからでたら、母とK代が食事をしていたよ。Yがいなかったので、母からはサワラの焼き物、K代からは小エビをもらったんだ。こんなことは珍しいんだ。暖かかったし、いい日だったな。でも、カンヅメはしっかり食べさせられたよ。

9日(木)
口を開けてカンヅメを入れられながら、ワタシは考えた。今まで何回口を開けてきたかを。いま一日約18回ほどだな。もう一年たつから18×365日=6570回か。そんなことどうでもいいか。母は昼に町会の集まりでお寿司やさんにいった。ワタシは当然オミヤゲを期待したが、なぁーんにもなかった。アァーア、寝るか。

10日(金)
この店はまったく油断ができないな。ワタシが愛用していたダンボール箱が突然消えたんだ。といってもY2の手品で消えたわけではない。高さといい、固さといい、上に乗ってくつろぐのに最高のダンボール箱だったのにな。そのせいか、ゲロをしてしまった。吐いたのは何カ月振りだろうか。久し振りだな。感心している場合ではないか。

11日(土)
Y代が代わりのダンボールを置いてくれた。ちょっと狭いんだが、Y代の前では喜んで上に乗ったよ。ワタシも気を遣っているんだよ。休みといえばヒラメ、じゃあないな。マグロか。まあ贅沢は言えないな。本当はカンヅメ以外の物を食べてはいけないのだから。院長先生に知れたら怒られるよ。ワタシの病気は・に食事療法、・・に食事療法、・・・がなくて、・・・・に人工透析なんだから。それでは生きる望みがなくなるだろう、とYが色々なものを少しずつくれているのさ。Yも気を遣っているのさ。

12日(日)
昼は不覚だったな。シャッターが上がる音に気づかず寝ていたよ。慌てて玄関までいったよ。休みの日はカンヅメの前に、朝、昼、夕方と、Yにナデナデしてもらうんんだ。気持ちよくて思わず咽をゴロゴロさせてしまうよ。それと、ふだんは小さな器で水を飲んでいるが、休みの日は人がいないから洗面台の大きな洗面器で存分に水が飲めるんだ。以前は洗面台まで軽く跳べたんだけどな。今はYに抱えてあげてもらっているんだよ。ワタシの病気には水が不可欠なんだ。たくさん水を飲んで、たくさんオシッコをする。あれ、たくさんオシッコするからたくさん水を飲むのかな? うーん?

13日(月)
朝のカンヅメの時、K代が昨日の夜みた夢のことを話していたな。なんでもワタシが足を引きずりながらヨロヨロ倒れそうに歩いていたそうだ。ヤダヨ。冗談じゃないよ。まだまだワタシは元気でいるんだから。もっと希望に満ちた夢をみてほしいな。昼には母が「Yには内緒だよ」と、親子丼をくれた。有り難くトリ肉だけ少し食べたよ。タマゴのかかったゴハンはカンベンしてよ。

14日(火)
五月晴れ。あーあ、よく寝たなぁー。気持ちよかったよ。あれ、これはなんだ。モグモグ。ウマイ。なんだろう? ヒラメでもない、タイでもないな。もっと簡単な名前だな。サトウ、イトウ、そうだスズキくんだ。モグモグ・・・・・。

15日(水)
昼間、ワタシが寝ている時に、Y2の娘さんのAK子さんが来たらしいな。ワタシの寝姿をみてから母とマリオットホテルのバイキングにいったそうだ。みんなが来ている日の昼間は、カンヅメの時以外はほとんど寝ているからな。ワタシの起きてる姿がみたいなら予約してきてほしいな。それにしても、バイキングならエビとかイカとかあったろうに、何も持ってきてくれなかったな。まあいいか、今夜もスズキくんだ。

16日(木)
空が泣いている。ワタシも泣いている。小雨。Yに連れられて動物病院へ。静かな待ち合い室には子犬が一匹いただけだった。二人に押さえ付けられて、咽から採血された。検査結果は、数値が高かったし、体重は3,65kg。つまり前回より100g痩せたよ。これからもどんどん痩せていくのかな? 盗み食いとか、何も悪いことしてないのにな。Yと一匹、ガックリして店に戻ったよ。あーあ、がんばるしかないのかなー。

17日(金)
雨。ワタシの涙か。朝、Yにナデナデされながら、お互いに励ましあったよ。ヨシ、と誰もいないのを見計らって、洗面台までのジャンプに挑戦した。5〜6回逡巡したあと、エイッとみごと跳べたよ。なんだ、ワタシもやればできるんだな。アーア、疲れた。ヨシ、ヨシ。気分よく、母が持ち帰った五目ソバの残りのホタテを食べたよ。

18日(土)
冴えない天気が続くな。ヒナタボッコはできないけど、やはり陽射しがあるのとないのとでは気分が違うな。YとK代は相変わらずワタシの口を開けてカンヅメを入れてくれるよ。だけどワタシの筋肉の周りにはもう肉はつかないな。悲しい現実だよ。嬉しい現実は丸井で買ったマグロだよ。魚寅のマグロは脂が多すぎるからな。ムシャッ。

19日(日)
おっ、数日ぶりの五月晴れだ。陽は射しているが、玄関までは入ってこないな。残念ながら、陽が射しているのはワタシの額ぐらいさ。隣のシャッターも開けてくれればいいんだけどな。まあ休みだからしかたないか。それに紫外線はお肌によくないからな。シミ、ソバカスなどな。でもワタシはトラ柄だからな。関係ないか。

20日(月)
昼過ぎに、KY君が来たよ。母親のT子さんはどこかに出かけていって、母とA子さんがあやしながらミルクをあげているよ。その傍らでは、YとK代がワタシにカンヅメを食べさせている。なんだこの光景は? お客さんが来たら驚くだろうな。幸いお客さんは店に入って来なかったけど。まあ、こんなお店なんだよ、ここは。

21日(火)
母がワタシを抱きかかえて、鼻先に柔らかいものを押しつけたよ。ワタシは思わずペロリ、ペロリとなめてそのまま食べてしまった。なんかミルクに似た味がしたな。おお、そうだ!! チーズだ。たまには魚以外もいいだろう。夕方、お客さんが「あら、ネコちゃんは?」だって。ウフフッ、ワタシは寝るのに忙しかったのです。

22日(水)
お店に転居のハガキを頼みに来た、K代の知り合いの女性が子ネコのことで悩んでいたな。なんでも最近引っ越しした新しいマンションになかなか子ネコがなつかないらしい。拾ってから一年半、白毛だからユキというそうだ。毎朝四時になると玄関の所で、元の家に帰りたいとニャア、ニャア、泣くそうだ。まだ、まだ、だな。ワタシも二年半ほど前にこの店に引っ越してきたが、そんなヤワではなかったよ。一日目にオリに入れられた。翌朝みんなが来て驚いた。なんとワタシはオリから脱け出して、堂々と眠っていたのだから。もう二日目からは自由に店内を歩けるようになったよ。どうやって脱出したかって? 今度Y2にオリ脱けの方法を伝授しようかな。ニャンてな。アッハッハ。

23日(木)
なんだか甘エビにも飽きてきたな。だいだいワタシはけっこう飽きっぽいんだ。アッ、ゴメン。こんなことを言える立場ではなかったな。これからムシムシ、ジトジトのイヤな日が続きそうだな。去年の夏も腐りやすいということでナマモノはくれなかったしな。カンヅメだけの暑い季節。考えただけでも、辛いなあー。

24日(金)
朝しばらくYしかいなかったので休みかと思ったよ。その後それなりに、それなりの人たちが来たよ。Yに見つかってしまったな。昨日の夜、ワタシが母の椅子の下をゴソゴソ探して、ビニール袋に入った“緑のたぬき”の乾燥麺を取り出したことを。それを聞いたM代が失礼なことを言ったな。「トラはお湯をかけて食べたんだろう」。だって。そんなものワタシが食べるもんか!!

25日(土)
朝のカンヅメの時は調子が悪かったな。5回くらいでニャンと鳴いて、もう止めてくれと頼んだよ。ワタシとのカンヅメ生活が長いYとK代は、すぐ察して止めてくれた。原因はワタシの便秘だよ。YとK代が帰ったあと、ワタシはゆっくりとウンチをして、すごくスッキリしたのさ。もちろん昼と夕方のカンヅメは頑張ったさ。

26日(日)
やはり休みの日は落ち着くな。玄関のマットの上でボンヤリと外の様子をみながら毛づくろいをしてると、イヤなことも忘れ、心が安らかになるよ。しかし、現実は現実だ。3回のカンヅメは休むことなくワタシの心を揺さぶるよ。あれっ、なんか大きな音がしたな。カミナリだ。ヤダヨ。ワタシは嫌いなのだよ、カのつくモノは。カンヅメ、カミナリ、ぶんぶんカ。あっ、いけない、カツオブシは大好きだ。どうしよう。

27日(月)
まったく昨日のカミナリは恐かったな。おかげで午前中は調子がでなかったよ。でも、お昼に母からタイの味噌焼き、K代からアジフライをもらって、やっと元気になったよ。夕方のカンヅメの直前に、カタログの間に隠れていたんだけど、すぐ見つかってしまったな。なぜだろうな? うまく隠れたんだけどな。

28日(火)
カラリとしたいい天気だな。暑くもなく、こんな気候がずっと続けば嬉しいんだけどな。そうはいかないだろうな。午後、赤ん坊のKY君が来て、みんなであやしていたよ。おかげでワタシはノンビリとグーグー寝ていられた。本当にいい一日だったな。

29日(水)
社長のMは自分の薬をもらいに病院へ。Yはワタシのカンヅメを買いに動物病院へ。それにしても、もう少しおいしいカンヅメができないのかな。強制的に口に入れてもらっているが、自分からは絶対に食べないよ。低タンパクだから腎臓にいいそうだがな・・・それに比べれば、昼に母がくれた五目ソバのエビは跳び上がるほどおいしかったよ。まあ、どっちが身体に良いかわかってますけど、スイマセン。

30日(木)
午前中、母とYが“Z務署”という所に行ったな。二人そろって出かけるのは珍らしいよ。なにかおいしいものでもあるのかな? 二人が帰ってきた時、急いでネグラから出て、ニャアとおねだりしたが何もくれなかったな。夕方、K代がワタシを抱いて「プヨプヨの身体になったけど、良く頑張ったね」。あれっ、ちょっと待ってよ。過去形でいわないでほしいな、まったく。ワタシはいまも頑張ってるんだから。プリ、プリ。

31日(金)
なにっ、ワールドカップが開幕したって! そうか、とうとう始まったか。でも、待てよ。ワールドカップってなんなんだろうな。世界中からカップメンが集まってくるのかな。ワタシはカップメンもカップソバも食べないから、やはり関係ないか。それでは、Yからもらった小指の先ほどのヤキトリを有り難くよ。