01.7.13掲載

「発掘された日本列島2001―新発見考古速報展」江戸博会場にて

※2001年(平成13年)6月12日から7月15日まで、標記の巡回展が江戸東京博物館で開かれていました。この会場の最後に、無署名で以下の文面のボードが掲げてありました。内容からみて、捏造問題に関する、文化庁の唯一の(ささやかな)見解表明のように思えます。無署名であることから、内部的な葛藤もうかがえますが、いずれにせよ貴重な文章ですので、筆写し、ここに公開します。


前期旧石器ねつ造事件について

 平成12年11月5日、民間研究団体である東北旧石器文化研究所の副理事長(当時)が宮城県上高森遺跡、北海道総進不動坂遺跡において、自ら持ちこんだ石器を埋めて、前期旧石器時代の遺構をねつ造するという不正行為を行ったことが報道されました。これにより、前副理事長が関った発掘とその成果の信頼性に疑念がもたれています。
 この「発掘された日本列島(新発見考古速報展)」は平成7年から開始しておりますが、これまで前副理事長が発掘に関った次の遺跡の資料を展示してきました。

平成7年度:宮城県築館町上高森遺跡
平成9年度:岩手県岩泉町ひょうたん穴遺跡
平成11年度:北海道新十津川町総進不動坂遺跡・宮城県色麻町中島山遺跡・山形県尾花沢市袖原3遺跡
平成12年度:埼玉県秩父市長尾根遺跡・小鹿坂遺跡

 上記の資料については、前副理事長のねつ造行為が明らかになる以前に発掘された資料ですが、これらについても、現在、関係地方公共団体や学会で再検証が進められております。
 本展覧会は、全国で毎年数千件から1万件実施されている発掘調査の成果について、一般の人々が実際にふれる機会が極めて限られている現状をあらため、少しでも多くの人々に発掘調査の成果に親しんでいただき、埋蔵文化財の保護について国民の皆様の理解と協力を得ることを目的に行っています。このため、近年特に注目された出土品を中心とした展示を構成し、全国を巡回して公開しています。展示資料は、この趣旨に沿って、おおむね開催前年度に出土し、話題を呼んだ出土品から、その考古学的な重要性、展示物としての見ごたえなどを考慮して選択しております。上記の資料もこの観点から展示をしたものですが、今後は、上記の再検証や学界等での議論の動向を踏まえ、資料の選択を含め、展示の在り方についても一層慎重を期していく所存です。

 これまで6年間実施してきた本展覧会により、多くの素晴らしい出土品を全国各地の方々にご覧いただき、我が国の歴史・文化の素晴らしさにふれていただきました。今後も、都道府県教育委員会や関係諸機関の協力のもと、本展覧会の充実に努める所存ですので、皆様の一層のご支援、ご協力をお願いいたします。

※無署名ですが、実質的に文化庁の文章と見なしていいでしょう。批判は別の機会に...

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