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ビデオの記録画素数考

 日本の通常解像度TV放送はNTSC規格だ。解像度や走査線・画素をめぐる話は分かりにくく、記述の正確性も難しいのだが、ここでは理解した範囲でまとめてみたい。

448×336画素

 周知のように、NTSCの走査線数は525本だが、実質有効な線数は485本ないし494本程度であるという(SONYやビクターは494本、松下は485本とみなしているらしい…これは業務用ビデオカメラで採用しているCCDの有効画素数による)。インターレースでは、プログレッシブより実質解像度が低下するから(Kell factor)、NTSC放送の実質垂直解像度はおよそ330本〜336本らしい(ケルファクタについては諸説あるようだ)。

 NTSC方式のデジタル規格は720×486ピクセルと定義されている。実際の編集上の取り扱いでは、720×480ピクセルとなるようだ。これはDVDの規格でもある。

#デジタルビデオは見かけ上、縦長の長方形画素になるが、これは走査線方式の名残だ。走査線で作られる画像は水平に隙間がある。正方形画素を横方向に密接して並べ、縦方向は若干の隙間を持たせて並べると、理解できる。

 インターレースとプログレッシブの解像度は、1080iと720pというHDTVの2つの規格にも表れている。両者はほぼ同等の解像度とみなされている。NTSC規格と実質解像度の関係と、ほぼ同じだ。となれば、480iに対しては320p〜336pが相当することになろう。仮に336pだとすると、横方向は(正方形画素で)448ということになる。正方形画素のデジタルビデオは640×480(VGA)が多いのだが、放送を記録するプログレッシブデータは448×336程度でよいことになる。またシネガンマのビデオカメラが24pを採用しているように、24fpsは意外と臨場感が損なわれないようだ。フレームレートの削減は、それなりに容量節約になるから、448×336で24fpsは、ぎりぎりの基準と考えられる。

#今検索してみたら、448×336画素を意識した製品や認識は存在するようだ。

 画素数を減らす場合はQVGA(320×240)が多いのだが、448×336の方が映像として満足感がある。容量と情報量のバランスとしては、もっと注目されてよい解像度じゃないかと思う。

608×456画素

 さて、PCのTV機能でキャプチャーされる解像度は普通720×480だ。これはNTSC方式のデジタル規格にも準拠しているが、DVD互換という事もあるだろう(DVD書き出しの都合上)。しかし、実際の映像は上下左右に黒味が少し見えている。これを正確にトリミングすると、ちょっと中途半端な画素数になる。またMPEGは元々JPEGだから、画像の左上を基準に8ピクセルを意識してトリミングした方が、画質劣化を防ぐ上で無難だろう。しかもトリミング前の720×480の縦横比1.5を崩してはいけないから、上下左右16・8・16・20ピクセルをトリミングして、684×456とした。これを正方形画素608×456に変換する。多少多めのトリミングだが、TV映像は元々オーバースキャン対応で大きめに作られているから、これくらいのトリミングは大した問題ではない。こうして出来た608×456画素は、キャプチャー映像の記録画素数としては結構合理的なはずだ。

#640×480でキャプチャしたとしても、周囲の黒味が出るだろうから、最終的なトリミングは608×456に落ち着くだろうと思われ。

 本稿以上の検証はしていないが、448×336画素と608×456画素の両案は、ちょっと矛盾している。問題は、PCのTVキャプチャーチップの性能かもしれないが(チューナーが実質解像度を上げている可能性がある)、よく分からない。実際にキャプチャー映像を元に、448×336画素と608×456画素の動画を作って視聴してみると、画素数は150,528対277,248だから、1.84倍もの面積比だが、画質差は意外に僅差だ。もっとも、情報量があまり変わらないので、圧縮率は448×336画素の方で緩くした方が(情報量に)マッチングしているかもしれない。

#一例だが、448×336画素は448Kbps(2PASS、VBR、24fps)、608×456画素は813Kbps(1PASS、CBR、24fps)でエンコードしてみた(音声分はそれぞれ、48Kbpsと63Kbps)。これで最適かどうかは分からないし、そもそも動きの激しい絵と、動きの少ない絵では、事情がまるで違う(スポーツ番組の地上デジタル放送のビットレートは悩みの種だろう…激しい動きの周りにはノイズが出やすい)。

853×480画素

 しばらく前から、DVカメラはワイド時の高解像度を意識している例が多い。記録画素数は720×480だけど。これはDV規格だから動かせない。ワイドの正方形画素に直すと(ハイビジョン互換の)16:9だから、撮影時のオリジナル画像は853×480という事になる。これを、横方向を圧縮して720にしているわけだ。

#実際、ローエンドのプラズマディスプレイやワイド液晶の解像度は853×480(ないし854×480)だ。これは、規格から考えても、DVDの視聴に最適化されているはずだ。ただしこれはDVDがスクイーズ収録の場合の話で、市販DVDの多くはLB(レターボックス)収録なのが残念だ。

#ワイドビジョンというか、ワイド映像はハイビジョン(HDTV)の普及に引きずられたものだ。SD(標準解像度)はコストや手軽さから残るはずだが、それでもワイドが基本になるはずだ(それがDVカメラのワイド対応に表れている)。

960×540画素

 ところで、ハイビジョン(HDTV)のフル規格は1920×1080(正方形画素)だ。このクォーターは960×540になる。これは、高解像度と標準解像度の関係としては、きりがいい。つまりSDTVの新たなスタンダードとして、960×540画素の可能性もありうるということだ。と思ったら、PAL/SECAM方式対応の大型薄型ディスプレイの一つの規格として採用されていた(CeBIT 2005でのシャープの出展)。PAL/SECAMの走査線は625本、有効走査線は576本で,受像機ではこのうち一般に90%前後を表示するという。そこで約94%に当たる540が選択された(NTSCの480と同じ理屈だ)。

#HDTVは世界統一規格だから、SDTVワイド版も統一規格になる可能性があるかもとは思うが、分からない。


WebsiteTop技術情報>ビデオの記録画素数考   …2005.5.2