※当サイト公開前からあったページです。いや、カウンターすら置く前だった。

フォトCDの特徴と活用


汎用性、保存性、多目的利用を考慮したデジタル画像

 フォトCDは、高解像度でニュートラルな画質のデジタル画像を、基本的には最大100コマ、CD−Rに収録する規格です[注1]。コストは1コマあたり140〜170円程度です[注2]。ただしこれは通常のアマチュア用フォトCDの場合で、ブローニー判や4×5にも対応したプロフォトCDでは、はるかに高額なものになります[注3]。基本的には、ディスクがいっぱいになるまで何回でも追加収録することが可能です(最大収録数は若干減るかもしれない)。

 テレビ、コンピュータ、印刷等に広く対応するため、いずれかに特化するのでなく、ニュートラルな画質を目指しています。テレビ表示用を基本サイズとし、これをBASE画像と称します(512×768ピクセル)。画像情報をそのまま持つのでなく、デジタルビデオ用の圧縮手法をアレンジした手法で、ある程度圧縮しています。BASEの4倍、16倍の解像度の画像は、BASEの単純拡大との差分を記録することで、BASEから逐一生成する方法をとります。その差分情報も圧縮されています。BASEの4倍が4BASE(1024×1536ピクセル)、そのまた4倍(=16倍)が16BASE(2048×3072ピクセル)という具合に定められています。BASEの1/4、1/16の画像も用意されています。こうして、基本的には5種類の解像度の画像を、1コマに対して同時に収録してあります。使用目的に応じて、最適な解像度の画像を選べば便利であろうということです。

原版となるフィルムのこと

 原版は(通常のフォトCDでは)35mmフィルムであれば、ネガ、ポジ(リバーサル)、カラー、モノクロを問いません。無論、記録画像はカラーのポジ画像に統一されます(見かけ上モノクロはモノクロですが)。なお経験上、ポジフィルムより、ネガカラーの方がフォトCDの原版としては良好なようです。元々ネガカラーフィルムはポジフィルムより微粒子で、ラチチュードが広い(露出に対する寛容性が高い)傾向があります。アナログの印刷原稿としてはポジフィルムに限りますが、デジタルでは立場が逆転したようです。

 通常のフォトCDでは、スキャンする時に縦21.8mm×横33.5mmのフレームを使っています。35mmフィルムの規格は24×36mmですから、若干狭いことに注意する必要があります。中心からわずか0.6mmずれただけで1.7mmはケラれてしまうので、フレーミングの余裕は2mmは必要でしょう。またマウントされたスライドは元々周辺がマウントに少し隠されているので、その分が余黒になり、16BASEであっても実質的には2900×2000ピクセル程になってしまいます。

コンピュータでの活用

 大事なことは、通常のフォトCD再生は簡易再生だということで、MacintoshでいうとPICT画像に見えてしまいがちですが、これはQuickTimeの機能による簡易再生です[注4]。印刷目的など高画質が要求される時は、コダック提供のAdobe Photoshop用プラグインを用いる必要があります(Photoshopには標準添付されています)。

 フォトCDのディスクには、固有の4桁の番号がつきます。よく見ると計12桁の番号がついているのですが、下4桁がディスク名に採用されています。もっとも4桁では、注文している内に同じ番号になってしまうかもしれません。またディスクコピー(ディスク丸ごとの複製を注文)した場合には、異なるディスク番号になってしまいます。ファイル名に至っては、常に001〜100のような番号が基本なので、異なるディスクからファイルを集めてくると、たちまちファイル名が重複してしまいます。つまり画像を集成する時は、ファイル名を固有のものに直す必要があります(元のディスクのまま運用するのであれば別ですが)。

 16BASEは長辺が3072ピクセルありますから、350dpi[注5]ならば、8.78インチ=22.3cmになります。ざっとA4判1頁大の印刷が可能なように思えます。しかしISO100の35mmフィルムにそこまでの実力は、普通は期待しません(1頁大なら、普通は、6×7か4×5を利用します)。実際には葉書大程度が限界でしょう。実務的には、フォトCDは4BASE画像で済む範囲で利用すべきでしょう。あくまでフォトCDはフィルムのデジタル化であって、元の画像以上の画像は得られません。16BASE画像も規格上の余裕として用意されているようなところがあります[注6]

 実際にフォトCDを版下作成に利用するには、色々と画像処理を施す必要があります。その点は暗室作業と本質的に変わりありません。コントラストや濃度だけでなく、覆い焼きや焼き込みに相当する作業が、必ず必要になってきます。ネガは素材であって、そのまま機械的に利用するのは、よほど撮影段階で上手に撮られた場合だけでしょう(被写体自体が濃度的に揃っているかどうかも問題です)。

 またフォトCDを利用するなら、できればカラーフィルムを原版にした方がいいでしょうから[注7]、カラー画像をどこかで白黒化する必要があります。でもカラー写真と白黒写真ではコントラストの持ち方が異なるので、厳密にはなかなか同じ結果を得ることはできません。また予定する印刷方式も考慮する必要があるかもしれません。一般にはディスプレイの調整をきちんと行い[注8]、校正プリントと適正画像の対応関係を把握しておけば、概ね期待通りの結果を得ることができるでしょう。


注:

[注1]CD−Rは追記型のCDで、耐久性は100年といわれています(03.7.9追記…KODAKは2000年4月から予測寿命217年のCD-Rを使っているはず)。通常のコンピュータ用CDドライブであれば100%再生可能です。CD−Rはいったん記録した部分については書換できないので、コンピュータデータの長期保存に適しています。ちなみに当初のCD−Rは紫外線に弱かったのですが、最近の製品ではその心配はないようです(特にフタロシアニン系色素)。ただし、特にレーベル面を物理的に傷つけないよう注意する必要があります。注記のための筆記具は慎重に選んだ方がいいでしょう。
[注2]1回の注文につき基本料金500円、生ディスク代1000円、スライドの場合の1コマ単価は120円です。注文コマ数により平均単価は変わってきます。36コマを新規に注文すれば、500+1000+(120×36)=5820円ですから、平均単価は162円になります(税別)。
[注3]プロフォトCDの単価は、通常のフォトCDの数倍になります。また後述する16BASEばかりでなく、64BASE(6144×4096)画像にも対応します(64BASEは対応プラグインが別途必要になるなど、あまり一般的ではありませんが)。
[注4]簡易再生用の画像(解像度別になっています)と、正式な画像ファイルは、別のフォルダに置かれています。前者では、特にハイライト部の階調再現に難があります。低解像度での簡易な使用以外では、前者を用いてはいけません。
[注5]オフセット印刷の写真は一般に175lpi(線数=網点の密度)で、そのために必要な解像度は通常350ppi(線数の倍)とされています。余談ですが、dpiはdot per inchですから(ドット=点)、厳密には主にプリンタの性能に関わる表現で、画像の解像度としては正しくはppi(pixel per inch)です(が、現実にdpiは広く通用しているので、あえて使い分ける必要はないでしょう)。
[注6]ISO25以下の超高解像度フィルムを用いる場合は、この限りではありません。
[注7]画像データベースに再利用できます。そもそもカラー画像の方が、考古学的にも情報量が豊かなのは、言うまでもないでしょう。
[注8]CMS(カラーマネジメント)の問題ですが、詳しくはAdobe Photoshopのマニュアルを参照して下さい。Macintoshなら、とりあえずColorSync2.0を有効にし、システム特性を「Appleマルチスキャン17-D65」にしておきましょう(無論、暫定的な措置です−研究して下さい)。


WebsiteTop技術情報>フォトCD解説