Acrobat 4には、あまり語られることのない、いくつかのデメリットと、メリットがある。気が付いた点を列挙する。●PDF一般の解説


Acrobat 4の特徴

●デフォールトでは、PDF文書の制作時に用いたフォントが、閲覧中のコンピュータに存在している場合、まさにそのフォントで表示しようとする(これをローカルフォントと呼んでいる)。そのため、それがアウトラインフォントでない場合、表示がややきたないものとなる(表示倍率が低いうちは目立たないが)。例えば、DTPで用いられるポストスクリプトフォントを、ATMフォントをインストールせずに、利用しているマシン上では、この現象が起ることになる。

 DTPで、通常のユーザが持っていないポストスクリプトフォントを使用していれば、一般には、この問題は表面化しない。

●実は、製品版のAcrobat 4では、メニューから「ローカルフォントを使用」のチェックをオフにすることで、Acrobat 3の頃と同様に、最適なアウトラインフォント(通常は一般的なTrueTypeフォント)で表示できる。

●無料版のAcrobat Reader 4では、こうした選択はできない。この点からは、Acrobat Reader 3の方が良かったといえる。Acrobat Reader 3(および製品版のAcrobat 3)では、常に最適なアウトラインフォントが使用される設定になっている。

アプリケーション表示フォント
無料版のAcrobat Reader 3常にアウトラインフォントを使用
無料版のAcrobat Reader 4常にローカルフォントを優先使用し、無い場合はアウトラインフォントに
製品版のAcrobat 4ローカルフォント使用がデフォールトだが、変更可能

 なお、以下で述べる白黒画像のスムージング機能により、ビットマップのローカルフォントを使用する時でも、スムージングがかかっており、疑似的に(あまりきれいとは言えないが)アンチエイリアシングされたフォントのようになる。


●Acrobat 4およびAcrobat Reader 4では、白黒画像(ラスター系)のスムージングも行われるようになった(デフォールトだが、オフにもできる)。これで、細い2値画像の線でも見やすくなり、線がかすれて見えなくなることが、なくなった。これは、version 3まではなかったメリットである(そのかわり、表示時間はさらにかかってしまうようになった)。

 余談だが、ベクター画像のスムージング(=アンチエイリアシング)は、今回も見送られた(フォントのスムージングは以前からあるけれど)。


●製品版のAcrobat 4では、Adobe Illustrator 8.0との組み合わせで、PDF文書中の任意のベクター画像(任意のオブジェクト、あるいは複数のオブジェクト)を自由に編集したり、データの抜き出しが可能になった。Illustrator 8.0との組み合わせでは、文字組みや日本語も完璧に扱うことができる。これで、データの再利用の、プラットフォームとして、PDFが使えることになった。これは、すごいことではないだろうか。

 PDF文書を直接扱えるのは、元々Illustrator 8.0側の機能なのだが、Illustrator 8.0で直接PDFを開く時は、ダイアログボックスで、頁のサムネイルを見ながら、編集したい頁を開くことになる。Acrobat 4との組み合わせでは、通常の閲覧状態から、頁の中の任意のグラフィックを選択できる。使い勝手は、明らかに後者の方がいいだろう。

●なおラスター系の画像は、Photoshopとの組み合わせで、同様に処理できる。従来は、頁単位でラスター化することしかできなかったのだから、かなりの進歩である。もっとも、抜き出せる画像は、PDFの中の画像だから、ほとんどの場合はJPEGで圧縮されているのだが...

 ポストスクリプトは、ベクター画像として、非常に精度が高いことで知られている。それが、このように完璧なデータとして、PDFから再利用できることで、様々なメリットが生れてくることは、想像に難くない。なお、これはPDF側の機能ではないので、PDF作成アプリケーションはAcrobat 3でも問題ない。


●日本語フォント(2バイトフォント)の埋め込み機能を使わない限り、PDFのバージョンを上げる意味はない(つまり製品版Acrobat 4の新機能を利用しない限り、アップグレードの意味はない)。Acrobat Distiller 4.0でPDFを作成する際、ScreenOptimizedを選択することで、Acrobat 3.0と互換になる(他の場合でも、フォントの埋込みをせず、画像にプロファイルの埋込みをしなければ、Acrobat 3.0と互換になるようだ)。通常は、できる限り、このAcrobat 3.0互換フォーマットにしておくべきである。

●余談だが、写真などのラスター画像の解像度は、ローカルプリンタをターゲットにすべきである。従って、最大でも150dpiあれば十分である(厳密には、解像度を増やす程、画質は改善されるが、よほど高品位なプリントを目指さない限り、150dpi程で飽和点に達すると言ってよい)。それ以上の解像度は、容量を増やしすぎるので、通常は使うべきではない。ScreenOptimizedの72dpiは、オンラインには向いているが、さすがに画像の精細度は大したことはない。ディスクメディアでの配付であれば、100〜150dpiの間に最適解があるはずである。


●日・中(繁体字・簡体字)・韓の東アジア多国語環境を実現しようとすれば、Acrobat 4は極めて有効である。

●これらの2バイトフォントが埋め込れていなくても、Asian Font Packをインストールすれば、これらのフォントを表示できるようになる。

●つまり(フォント埋め込みの有無に関わらず)、英語を含む全世界のシステム上で、Linuxを含む各種UNIX上でも、OS/2 Warpでも、Acrobat Reader 4によって、多国語PDF文書環境が実現したという意味である。クロスプラットフォームの極致に達したといえる。

●余談であるが、Acrobat Viewer(Java)もベータ版が公開されている。


●カラー管理が可能になったが、これは理解や享受が難しい問題なので、省略。


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