写真をデジタル化し、データベース化するために

本稿は当サイト公開当時からあったものです。デジカメが本格化し、フォトCDの設備も古びつつあるようですが、基本的には有効な論旨と思います。一部最新情報に書換えておきます(03.2.11)。古い文章はコメントで隠してあります。

フォーマットについて

 アーカイブとしての写真デジタル化は、高画質を指向する。ではPhotoCDがベストな解決策かというと(色々利点はあるのだが)、必ずしもそうはいえないだろう。1/4程度に圧縮しているため、拡大して厳密に見ると、圧縮の弊害が存在している。ある種の規則的なノイズが発生しているのだ。

 JPEGで圧縮率を最も控えめにした状態ならば(Adobe Photoshopで11〜12のレベル)およそ1/3〜1/4になるから、圧縮率はPhotoCDとほぼ同様であり、かつ規則的なノイズはまだ目立たない(圧縮率を高めていくと、8ピクセル単位のブロックノイズが発生するが)。

 つまり、PhotoCDと、圧縮率を最も控えめにしたJPEGでは、後者の方がいいかもしれないのだ。汎用性でも、JPEGが有利である。

 無論、PhotoCDは、フィルムのスキャン手段としては、十分に高画質ながら安価であり、極めて有効な手段である。ただ、多くの写真は、暗室作業に相当する、画像の調整作業を行わないと、良質な画像にはならないのである。そうした作業を行った結果を、保存する時に、PhotoCDに戻すことは(一般には)できない。汎用的なフォーマットで保存するしかないのである。

 なお、ここでいうアーカイバルなデジタル写真はあくまで保存用であり、通常の閲覧用画像は別途用意すべきである(→後述)。高画素画像を扱う場合に、元画像を細かく分割しておき、表示に必要な部分のみ集めて表示するという手法が、色々な形で採用されている(マシンの能力が上がるにつれ、あまり話題とならなくなっているが、画像データベースとしては今でも有効)。

カラーの再現性

 アーカイブとしての写真デジタル化では、カラーマネジメントも重要な要素のはずである。環境を越えてカラー情報を伝えるのは、実はかなり困難な問題である。同じRGB値でも、再生するディスプレイによって発色は一定しない。無論、できるだけ標準発色に近づくように、ディスプレイを調整しておく必要はある。

 カラー再現性にこだわった、再生環境を問わないフォーマットとしては、CIE-Lab形式もある。でもLab形式では圧縮がきかないし、一般性も低い。将来的には、こうした問題を含めて解決できるような汎用フォーマットが作られるかもしれない。8ビット階調という通常のデジタル画像の限界も、いずれ撤廃されるべきだろう。16ビット階調やガンマ情報を可能にしたPNG形式もあるが、自然画像では圧縮性がない。

 現状では、作成時の環境に注意して、RGBでJPEG形式にするしかないだろう。カラープロファイルの埋込みは、画像の提供側と受信側が相互にマッチングしないと意味がないので、汎用的には埋込まない方がよいだろう。

画像データベース

 いずれにせよ、何らかの画像データベースアプリケーションが必要になる。具体的には、Cumulus、BILLETE、i-SERVE(全て、Macintosh版/Windows版あり)といったことになるのだろうが、試してみても、どうもピンとこない。

 汎用のデータベースアプリケーションを用いるのは、小規模な場合はともかく、大規模化は無理があるようだ。少なくとも画像を内部にかかえるのは荷が重すぎる。サムネール画像ならいいのかもしれないが、結局、生まれついての画像データベースにはかなわないらしい(大規模なソリューションなら話は別)。

 データ交換など様々な運用を考えた場合、まだ理想的なアプリケーションは存在していないようだ。(一般に)最適なアプリケーションは、常に、クローズドな(自己完結的で閉鎖的)ソリューションである(それでは困るのだが)。実際問題、HTML形式を活用するのが、最も有効なようである。

解像度と出力サイズ

 デジタル画像をスライドに出力する場合、2K画像ないし4K画像が規格となっている。前者は2048×1366ピクセルである。これなら、最も安い出力サービスで1コマ500円である(普通は2000〜3000円くらい)。

 そもそもデジタル画像には、どの程度の画素数(ピクセル数)が求められるのだろうか。実際のところ、35mmフィルムの解像度は、印刷適性から考えてA6程度が限界であろう(ISO100程度の場合)。350dpiとすれば、2K画像はほぼ正解なのである。

  横2048ピクセル→350dpi→5.85インチ→14.86cm

 PhotoCDの(通常の)最大解像度は3072×2048であるが、これは規格上の余裕であって、35mmフィルムにそこまでの実力はない。  つまり2K画像は、デジタル画像として一つのスタンダードになりうるのである。

一つの選択

 デジタル化のコストも大きな問題である。フォトCDは1コマ150円前後になるから、仮に1000コマなら15万円、10000コマなら150万円になる。スライドのオートフィーダ付のスキャナを使うならば自前スキャン も可能だが、(高価な業務用スキャナを用意しない限り)数多くこなす場合には、人件費を考えてもフォトCD外注が賢明である。

 おそらくスキャンの手段自体はあまり問題ではなく、むしろ画像の調整や、データベースの情報入力こそ問題であろう。これは避けようがないし、最も手間がかかるところだろう。

 一つの選択として、具体的な提案は以下のようなものになる。基本画素数は1920×1280(2K画像から、スライド枠でケラれる部分を考慮し、かつ64の倍数)、フォーマットはJPEG(Photoshopで画質11〜12)とする。これで2.2〜2.0MBになるから、CD-R1枚で約300コマ収録できる。閲覧用には960×640の画像を用意する。画像には1コマ毎にユニークなファイル名をつける(ちなみにPhotoCDのファイル名は常に3桁の番号なので、ディスクを越えてユニークなものではない…実はディスクに4桁3連の番号がついており、その下4桁をディスク番号として用いることは可能である…例えば、1234_001.jpgといった具合…この場合は1234がディスク番号)。ファイル名はシリアルなものが扱いやすい。

 但し、フォトCDの場合、16BASEの3072×2048画像が基になるが(スライドの枠でケラれるので、実際にはやや少なくなる)、色調整等はこの最大画像に対して行なうことになる。となれば、その調整結果(いわばワークファイル)も保存対象ということになる。1920×1280画像は35mm判の画質を考えれば、アーカイブ(オンラインデータベース)には妥当な解像度だと思うが、オフラインが基本のデータベースであるならば、960×640画像を公開用とし、3Kクラスの画像を元データとしてディスクに収めておくことになろう。

メタデータ

 写真台帳−メタデータを何らかの形で付け加える必要がある。元データはExcel等で管理されているはずである。メタデータと画像の関連付けは、HTMLで組むのが一番現実的で、根本的に汎用性がある(ExcelやFileMakerProから画像にリンクを張ることは可能だが)。コンテンツとしての完成品を、CD-RないしDVD-Rに収めればよい。筆者はExcelのセルにタグを記入して、HTML作成を半自動化している。

 実は画像自体にメタデータを埋込む方法もある。JPEG(JFIF)では、任意の形でも可能であるし、EXIFというデジカメ用に規格化されたものもある(EXIFを活用するには、Able CVが便利)。アドビにはXMP(XML)もあるし、Photoshopには以前からメタデータが書き込めるようになっている。しかし一括処理は出来ないと思われる。

 なおPDFという可能性もある(PDFといっても中味はJPEG)。これならメタデータは確かに埋め込めるし、パスワードもかけられる。メタデータの一括処理については未検証である。


WebsiteTop技術情報>画像データベース