カラーマネージメントの話は、なぜか分かりにくい。[初稿99.4.26]

●色の再現性は、レガシーなフィルム撮影でも重要であった。光源ないし色温度が最大の要素だが、フィルムの製品差、乳剤番号差、露出差も関わり、なかなか難しい問題であった。現像済フィルムの、保存環境、経年変化も問題であり、管理の対象である。だが、究極の保存性は、デジタル化によってのみ達成されるはずだ。やはり、カラーマネージメントの理解は、避けて通れない。

●これまで、モニタ設定「Appleマルチスキャン17-D65」を、暫定的な標準としてきた。しかし、Photoshop 5.0の登場によって、事態は抜き差しならないものとなった。なお本稿は、暫定的なものである。

●モニタ調整用の 階調画像を用意した。グレー階調部分が全部見えるようでないと、明るすぎるか、暗すぎるかである。[03.7.13]


色管理(カラーマネージメント)、あるいはCMS

 デジタルデータの色管理(カラーマネージメント)には、事実上、以下の3つのカテゴリが存在する。

 色再現域(gamut:発音はガマットのはず...)は、階調再現の限界で画された範囲であり、カラースペース上に位置付けられる。もっとも、RGBやCMYKカラースペースはある意味で、同時にgamutでもある。もっとも広いカラースペースこそCIEであり、現実には、CIEが究極的な色の座標軸を提供している。カラースペースは、色の座標空間である。CIEは、元来、アプリケーション内部のデータ処理に使われるものである(ユニコードみたいなものか...)。現実世界には、CIEデータを直接再生できる装置(デバイス)は存在しない(モニタはRGBだし、印刷はCMYKだし...)。

 色再現特性は、各色毎のトーンカーブ(階調曲線)の集合と考えればよいだろう。トーンカーブがリニアな状態が、標準特性と理解される(厳密にいうと、現実には存在しえないが、これまでは特定のモニタ設定を採用することで代用してきた)。ハードウェア・デバイス固有の色再現特性と、標準特性の間を換算補正するのが、プロファイルの役割である。プロファイルは関数である。カラースペースやgamutの変換を伴うものについては(RGB→CMYK等)、色の再現範囲が異なるので、妥協的ながら、いくつかの選択肢がある。

 この辺から、一般になされるカラーマネージメントの説明は不十分になりやすい。特に問題なのは、保存されているデータが、補正前なのか、補正済みなのか、ということである。そのデータを再生(出力)した時、出力デバイスのプロファイルに基づいてデータを変換するのか、どうかということである。しかも、一時的に変換するのか(一般には、カラープリンタドライバがこれを行っている)、データそのものを書き換えてしまうのか、あるいは書き換えられたデータは、ターゲットをどのデバイスにおいているのか、といったことである。この辺が、明らかでないと、混乱してしまう。

 一般になされる説明では、ソース・プロファイル(入力した装置のプロファイル)と、ターゲット・プロファイル(出力する装置のプロファイル)の両方を用意すること、また画像を調整するモニタ自体の設定を理想的な状態にしておくこと(モニタ・プロファイルの問題含め)、などで、正確な色再現が行われる、とされる。問題の保存データであるが...

 Photoshop 4.0までは、保存データは、モニタ設定に忠実なRGBデータが基準であった。Photoshop 5.0(必ずPhotoshop 5.0.2にしておくこと)では、モニタは画像データから抽象化可能になった。保存データは理念的なカラースペースに準拠した、ということのようである(推奨カラースペースは、Adobe RGB (1998))。モニタ表示とのずれは、モニタ・プロファイルで吸収するようになった。その代わり、必要なプロファイルを、画像データファイルに埋込むことが必要になった(可能になったともいえる)。ただし、この新しいやり方では、後で再生する、別のモニタ/マシン側の設定がちゃんとしていないと、何にもならない。

 いずれにせよ、モニタの設定や調整が、最大のポイントであることに、変わりはない。

カラースペースの選択

 Windows98環境、及びInternet環境では、sRGBが標準である。だが、sRGBは若干色帯域が狭い(CMYKの再現域にも及ばない領域が結構ある)。Macintosh環境では、AppleRGB(=「Apple13型RGB」と同じ)が標準である。これも、sRGBとあまり変わらない。ガンマ値の設定は異なるが(Macintoshは1.8、Windowsは2.2)、ガンマの問題だけなら、Mac側でわずかに明るめに調整しておけば、大丈夫である。実際には、Mac上で暗めの画像は、Windows上では結構暗くなるかもしれないが、Mac上で適正ならば、Windows上では容認範囲だと思われる。

 アーカイバルなデジタルカラーフォトのカラースペースとしては、sRGBもAppleRGBも役不足かもしれない。推奨されるカラースペースは、やはり、Adobe RGB (1998)ということになるのだろうか。


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