99.5.30…99.11.27…00.1.18…00.3.18…00.4.30…00.7.6…00.8.3…00.9.4…00.9.9…00.10.15…00.11.5…00.12.25…01.1.5…01.2.2…01.2.23…01.4.6…01.4.17…01.6.9…01.10.5…01.10.31…01.12.10…02.10.11…03.4.17…03.4.24…03.6.29…03.12.24

報告書電子化の現状

●Digital Archaeology Resourcesは、本来遺跡報告書/考古学文献及び埋蔵文化財情報の、デジタル化・ネットワーク化(一言で括ればサイバー化)された情報源を指すはずです。内部的・個人的にデータベースを作成しているかどうかではなく(そうした例は古くからあります)、公開されているかどうか、アクセス可能かどうかが問題なのです。特に文書の電子化に正面から取り組むスタンスが大事だと考えます。
●現実はどうでしょうか。報告書電子化の例を集めてみました(事情が事情だけに情報をお寄せ頂けると幸いです)。

▼報告書本編が電子化されたCD-ROMの集成(更新03.6.29)
報告書名所在地組織発行日PDFHTML写真
データ
図版
データ

データ
備考
岡本前耕地遺跡東京都世田谷区都立学校遺跡調査会98.3.30-シリーズ既刊も収録
日影山遺跡・東山道武蔵路東京都国分寺市西国分寺地区遺跡調査会99.3.25-シリーズ既刊も収録
西台後藤田遺跡東京都板橋区都内遺跡調査会99.3.30---DXF
埋蔵文化財調査年報
1998年度
兵庫県加東郡兵庫県加東郡教委99.3.30--DXF-印刷版廃止
本編の後に元データ頁
瓦谷戸窯跡群東京都稲城市都内遺跡調査会99.9.30---(PDF)約20分の動画も収録
志村坂上遺跡H地点東京都板橋区志村坂上(H地点)調査会99.11.1---PDF増頁分は写真頁
東古瀬・坊ノ下遺跡
東古瀬・坊ノ上遺跡
兵庫県加東郡兵庫県加東郡教委00.2.29-DWG-印刷版廃止
本編の後に元データ頁
松月院境内遺跡東京都板橋区板橋区教育委員会00.3.15----写真中心の概報体裁
PDFは多少増訂
鳥原平遺跡群1山梨県白州町白州町教育委員会00.3.25--DXF-教来石民部館跡1989
1990もPDFにて収録
神居古潭15遺跡北海道旭川市旭川市教育委員会00.3.25--HTMLも完全版
菅谷遺跡東京都荒川区都立学校遺跡調査会00.3.30-シリーズ既刊収録、mov
本郷元町IV東京都文京区都立学校遺跡調査会00.3.31--シリーズ既刊収録
小石川 駕篭町 III東京都文京区都立学校遺跡調査会00.3.31-シリーズ既刊収録
成増天神脇遺跡東京都板橋区成増天神脇遺跡調査会00.3.31---写真頁のみPDF化
中台畠中遺跡東京都板橋区中台畠中遺跡調査会00.3.31----写真頁のみPDF化
府内城・城下町遺跡大分県大分市大分市教育委員会00.3.31--PDFはスキャン版
HTMLはJavaScript多用
小石川牛天神下東京都文京区都内遺跡調査会00.3.31----PDFは階調ラスター版
丸山B遺跡 (CD-R)東京都三鷹市三鷹市遺跡調査会00.3.31--DXF(分析)CD-R制作は2000.12
松ノ木遺跡V高知県本山町本山町教育委員会00.3.31--※HTMLはindexと写真
(PDFは完全版)
茂漁6遺跡 (CD-R)北海道恵庭市恵庭市教育委員会00.3.31---(CSV)74頁+図版102頁
神並遺跡大阪府東大阪市東大阪市文化財協会00.6.30---※写真頁のみCD化
馬場川遺跡大阪府東大阪市東大阪市文化財協会00.9.30-A4判4頁版に添付
志村坂上遺跡L地点東京都板橋区アルケーリサーチ00.9.30--DXF印刷版廃止
埋蔵文化財調査年報
1999年度
兵庫県加東郡兵庫県加東郡教委00.12.28---印刷版廃止
スライドショー等あり
新町野・野木遺跡 II (CD-R)青森県青森市青森市教委01.3.21----約2390頁! 6分冊
井の頭池遺跡群A II東京都三鷹市三鷹市遺跡調査会01.3.30----2.5MB/頁
桜岡5遺跡北海道旭川市旭川市教育委員会01.3.30SVG-HTMLも完全版
正面ヶ原D新潟県津南町津南町教育委員会01.3.31---図版編オリジナルPDF
城山南遺跡・白子宿上遺跡埼玉県和光市和光市教委01.6.30----ファイル名がWin版
成増とのやま遺跡第3地点東京都板橋区アルケーリサーチ01.9.30---XLS印刷版無し…カラフル!
志賀公園遺跡愛知県名古屋市愛知県埋文01.8.31---FM 
川原遺跡愛知県豊田市愛知県埋文01.8.31---FM環境復元CG画
八王子遺跡愛知県一宮市愛知県埋文02.3.31---FM他XLS、3D、FlashPix
苅安賀遺跡愛知県一宮市愛知県埋文01.8.31---FM 
岡島遺跡III・大毛池田遺跡II愛知県西尾市他愛知県埋文01.8.31---FM 
牛牧遺跡愛知県名古屋市愛知県埋文01.8.31--FM※剥離観察
天神前遺跡愛知県豊田市愛知県埋文01.8.31---FM 
大脇城遺跡II愛知県豊明市愛知県埋文01.8.31---XLS 
西川原古墳愛知県幡豆町愛知県埋文02.3.31---FM 
八王子城跡御主殿東京都八王子市八王子市教委02.3.15-PDFPDFXLSmov
藤田・一ノ谷口兵庫県加東郡兵庫県加東郡教委02.3.29--DXF-印刷版なし
前田耕地遺跡東京都あきる野市東京都教委02.3.31-XLS※indexと2735点石器写真
西大竹尾尻遺跡群神奈川県秦野市同調査団03.1.16---XLS計1631頁、平均378KB/頁
雲谷山吹4〜7遺跡 (CD-R)青森県青森市青森市教委03.3.20---- 
深沢3遺跡 (CD-R)青森県青森市青森市教委03.3.31----容量別に3種あり
市内遺跡 [集成] (CD-R)青森県青森市青森市教委03.3.31----容量別に3種あり
島屋敷遺跡 II東京都三鷹市三鷹市教委03.3.31----遺構遺物DBのPDF付

はテキスト主体のHTMLの場合。は図版画像を含めた完全版HTML版の場合。FMはFileMakerProのランタイム版。XLSはExcel。movは遺物回転QuickTimeVR。
は印刷版が廃止された場合。いずれもブックレットが付属。
なお本来のPDFや完全版HTMLは、図版を統合したものなので(明示的でなくても)画像データ等は抽出可能な場合があります(ある程度は表データも同様)。ただし頁まるごとラスター画像になっているPDF(◆)はこの限りではありません(後述)。

●ほとんどのPDFが平均数百KB/頁になっていますが(都立学校例や松ノ木等は除く/瓦谷戸は後述)、画像品位はともかく、配付版としては重すぎる気がします。200%表示で、一応破綻がなければ、基本的な閲覧版としては充分ではないでしょうか。画像品位と容量の相関関係を考えると、オフセット印刷レベル(H)、ローカルプリンタレベル(M)、オンライン版(L)など、複数の版を用意したらいかがでしょうか。
●なお印刷会社に任せてしまうと、頁まるごとラスター化ないし(印刷版からの)スキャンというPDFを作ってしまう場合があるようです(新しく印刷してますので、DTPデータが存在していてよさそうなものですが、あるいは在来型の版下入稿が多かったので、作業効率を考えてそういう結果になってしまったのかもしれません…何も本文頁までラスター化しなくても、いいのではないでしょうか)。しかも高解像度の階調画像になっており(写真図版だけ72dpiの傾向もある)、アンチエイリアシングも全くききません。仕様書の記載には注意した方がいいようです。
●また、Windows環境のみをターゲットにする傾向もあるのですが、いかがなものでしょうか。少なくとも、ファイル名のレベルではクロスプラットフォームを念頭におくべきでしょう。できれば、ISO9660のApple拡張フォーマットをお薦めします(Apple拡張ならリソースがつくので、Macのアプリケーションも作動しますし、ファイルとアプリケーションの関連も有効になります)。Windows用のAutorunも、果して必要なのでしょうか。色々トラブルを招くので、避けるべきだと考えます。

▲加東郡教委例はCD-ROMオンリー(印刷版無し)なのですが、プラケースに8頁のブックレットが付いており、報告書抄録もあります。図版のDWGはAutoCAD LT利用です。オンライン連絡先も記されています。
『瓦谷戸窯跡群』には、20分10秒、QVGA(320×240ピクセル)、BGM付で、約360KB/秒の動画(AVI形式)も収録されています(一般のVideoCDでも144KB/秒なので、汎用性を考えた形式上の制約だったのでしょうか)。トランジションやテロップも効果的に用いられています。ちなみに12分以降は遺物の紹介(モンタージュが効果的)になっており、いい感じです。報告書PDFは、巻頭カラーは高品位なのですが、本編の写真頁は72dpiだったようで、瓦の質感再現には物足りない感もありました(平均158KB/頁ですが、これは写真頁数が多かった故でしょう)。付編の再録文献は、縮小頁を階調画像のまま同様に処理したようで、PDFでは読めませんでした。表はPDF形式のみで供給されています。なおCDドライブ名は日本語で、しかも少々長過ぎたようです。
▲『神居古潭15遺跡』(テスト的な制作ということですが、プレスによる正式CD-ROMです)は、PDFもHTMLも(図版・写真を含めた)完全収録版となっています。テキスト等は、校了後のデータを元に忠実に作成してあり、PDF+HTMLという構成もいい感じです。CD-ROMはISO9660レベル1に準拠し、CSSも上手く使っています。写真も、複数解像度が用意されています。印刷会社がPDFWriterを使用したのは、ちょっとまずかったですが(プリンタドライバをPSにし、Distillerを使わないと、図版データがうまくないです)。
『府内城・城下町遺跡−第13次発掘調査概報』 (印刷版は表紙込みで総36頁、PDF35頁)は、HTMLで報告書作りを模索されたようで、複雑なフレームの入れ子やJavaScriptが多用されています。図版のカラー表現(遺構・遺物共)や、遺構写真は角度を変えて複数用意したり、工夫がこらされています。パノラマを見せるためにムービー等が採用されていますが、やはり動画は何となくうれしいものです。PDFは印刷版からのスキャン版でした(高解像度の階調画像で、1.36MB/頁あります)。ちなみにPDFは深い階層にあります(HTMLからリンクされていますが)。添付版CD-ROMですが、背表紙付のプラケース入りでした。
▲『志村坂上遺跡L地点』はA4横位置相当で作成されたPDFで、フルカラー化と共に、アクア風デザインで統一されています。プラケースにブックレットが同梱されています(報告書抄録もあります)。
▲『丸山B遺跡』(印刷版は既刊)では、PDFを収録したCD-Rが制作・配付されました。手作りですが、これも一つの制作・出版形態として有効といえます。PDF(74頁)は印刷版のPDF版なのですが、カラー化等で完成度が上がっています。ただ、5.1MB/頁というすさまじいファイル容量です(最適化しても4.6MB)。他に分析報告の納入ファイル、測量関係のDXFファイルが収録されています。
▲『埋蔵文化財調査年報−1999年度』(加東郡)は、印刷版を廃止しているのですが(ブックレットは添付)、通常の頁に換算すると158頁に相当するようです。159頁以降は資料性と印刷性を考慮され、図版や写真の素材(本編と同じデータのようですが)、及び遺物データベース風の頁が貼付けてあります。全体では105.5MB、1069頁あるので約10KB/頁ですが、仮に158頁とみなせば、約68KB/頁ということになります。元のDTP編集は一太郎、スライドショーはPowePointで製作されたHTML版です。なお本盤のファイル名は完全にWindows準拠です。
▲『松ノ木遺跡V』の閲覧用PDFは約70KB/頁(総469頁)です。別に保管向けに高品位版も用意されています。写真は巻頭カラー印刷も充実しているのですが、別にHTML版写真集も用意されています。
▲『新町野・野木遺跡 II(青森市埋蔵文化財調査報告書第54集)』(23,800m2+69,900m2)は6分冊トータル概算2390頁という膨大な頁数がPDFで収録されています(含空白頁)。PDF報告書としては、史上最大(!)と思われます。分冊毎の平均容量は、それぞれ約315KB/頁、177KB/頁、118KB/頁、52KB/頁、154KB/頁、720KB頁になっています(全体平均約248KB/頁)。全体では600MB近くあります。CDはISO9660レベル1準拠。CD-Rですが、レーベル印刷されており、本格的なものです。

※なお1MB=1024KB、1KB=1024Bで計算

▼1999年5月30日の状況を元にして書いていた旧稿はこちら▼

報告書電子化の現状:1999年5月30日の状況から


<WebSiteTop