99.5.3…99.10.23…00.8.24

●博物館の機能の大半は、電子的なバーチャルな手段で実現できる
●しかも箱ものに較べれば、格段にローコスト

博物館のサイバー化

 博物館や郷土資料館(色々名称があり、法律上の規定※もあるが、ここでは総称として博物館)は、デジタル情報技術(マルチメディアとか、色々呼び方はあるが、以下総称としてサイバー※)を利用することで、その機能の90%はカバーできるはずである。サイバー化で、展示を直接鑑賞した際に得られる視覚的情報の80%(考えようによっては120%)と、背景説明文が(多分)200%は取得可能と思われる。

 実物を見るには如かず、と言われるかもしれない。それはありうるが、実際にはどんな場合だろうか。

  1. 観察眼を持った者が細部を詳しく観察すれば、新たな発見があるかもしれない
  2. 一般に伝わっている情報や写真では分からなかった情報が、実物を見ることで得られる
  3. 実物ならではの臨場感、あるいは、実物の大きさが実感として分かる

 以上のようなことは、考えられる。しかし、前2点は、素人にとってはあまり関わりのない話である。第3点は、確かに実物展示の効果かもしれない(その意味で80%である)。もっとも、多少ともその種の遺物を見慣れてくれば、実測図と鮮明な写真だけで、後は類推でカバーしうる範囲は大きい。また画像/映像は、様々な角度から撮影でき、実物展示より、多くの情報が得られる可能性が高い(その意味で120%である)。無論、3D(ステレオ画像)、3DのCG、VR技術なども有効だろう。

 少なくとも、ある程度手馴れた観察者からすれば、博物館のサイバー化は、得られる情報量をむしろ増大させる可能性が高い(適切なコンテンツが用意されていれば...)。ここに、展示施設に足を運ぶ手間が省ける、というおまけがつくわけである。

 実物展示が可能にする、ある種の実感は、どこまで技術が進歩してもカバーできない部分があるのは事実かもしれない(その意味で総合点は90%)。しかし忘れてならないのは、展示物は、収蔵品のごく一部にすぎない、ということだ。それをカバーできるのは、やはり広義のサイバー技術である。

 また、必ずしも現在の技術レベルを前提に考えてはいけないが、同時に、現在でも可能なことが、かなり多いことは知るべきだ。ほとんどの関係者は、技術には疎いまま、研究心も持たないまま、時期が来たら業者に発注すればいいと思っているに違いない。しかし、時期なら、とっくにきている...

Webの衝撃

 インターネット/WWW(以下、Web)が可能にしたものは大きい。現時点では、一般のインターネットの伝送速度が低いことはネックであるが、実際には、現状でも、コンテンツの作り方で十分カバーできる範囲である。Yahooや東京都のWebサイトは御存じだろうか。画像は極端に少なく、テキスト中心である。無論、画像は必要な範囲で使えばよい(でも、どんな目的であっても、Web用画像は30〜50KBで収まるはずだが...)。少なくとも、テキストベースでカバーできる範囲のインデックス的情報に、むやみに(重い)画像を用いるべきではない。

 Webは、単なる広報手段だろうか? Webはそれ以上の存在である。少なくとも、トップページ(=ホームページ)に、写真を大きくのせているようでは、Webの情報機能を基本的に理解していないことを明言しているようなものだ(場合によるけど...)。だが、情報量が多くても、多くのコンピュータ関連企業のサイトのように、錯綜したものではだめだ。

 当然、広報機能はカバーしておくべきだ。例えば、登録者には催し物をメールで知らせるようなサービスも必須だし、企画展の内容を、詳しくWeb上で伝えることも必要だ。

 博物館のサイトの基本は以下のようなものであろう。

 なお、地方自治体の機関ならば、遺跡地図/遺跡台帳も、Web上で全面公開すべきである(教育委員会のサイトに分担してもよい−それぞれホームページを明らかにしておく必要はある)。

 問題は、詳しい展示の紹介である。ここで期待するところの、詳しい紹介とは、実際に施設を訪れて得られる情報の90%をカバーする情報量を持ったものである。それは、どんな風に作り得るだろうか。

ディープなコンテンツ

 展示(常設展、企画展問わず)の詳しい紹介といえば、図録がある。でも、良く出来た図録であっても、どこか違う(出来の悪いものは論外...)。一般に、図録と、展示を見る体験とは、若干異なるものがある。これはなぜだろうか? 理由は簡単で、メディアに最適化した編集だからだ。やはり、図録には、図録の文法がある。報告書が、報告書の文法から自由でありえないのと、同様である。

 ちなみに、Webコンテンツを90%ルールで作りこむことは前提として、それをさらに超えるコンテンツ(特に画像を重くした場合)はCD-ROMで提供すればよい。少なくとも、紙印刷物は100%、CD-ROM化できる。複製コストは安いし、在庫も邪魔ではないし、送料も安い。

 ここで求めているのは、展示を追体験、あるいは疑似体験できる、(コースウェアのような)コンテンツである。その最小限の必要条件は、以下のようなものであろう。

 基本的には、展示の構成をなぞるので、展示の前に鑑賞者が立った時の「視野」が基準になる。それから、情報を分解して、個別に見ていくことになろう。

 資料に対して、どれだけ多角的な写真を用意するかも重要だろう。所要カット数は何ともいえないが(資料の性質や形状によって異なる)、多分1点あたり数カット以上は必要だろう。なお、カット毎に、表現の目的に応じた照明テクニックは、必須である。

 こうして考えてみると、展示を追体験、あるいは疑似体験できるようなコンテンツは、制作可能である。無論、何らかのVR技術を利用するのは、いいことであるが、必須ではない。

 ここで重要なことは、このコンテンツの目的が、展示のバーチャルな体験であることだ。決して、インタラクティブ性とか、ゲーム性は、重要な要素ではない(それでは、別のものになってしまう)。ゲーム性に走るのは、当初の目的を実現した上で、余裕があった場合だけである。まず、ドキュメント性である。こうした目的が達成されるような、新しいメディアの文法を確立する必要があるのかもしれない。


▼先進的なMuseumサイトの例(本格的なバーチャル展示はまだ存在していないようですが...)

▼参考までに


※ 博物館
狭義では、教育委員会管轄の生涯学習向け展示施設。具体的には、登録施設、博物館相当施設、その他の施設に分類されている。
※ サイバー
コンピュータ、デジタル情報技術、あるいはマルチメディア(ちょっと旧い...)とか、様々な呼び方があるが、要するに言っていることは同じであり、一言でいうなら、「サイバー」が最もふさわしい。情報のデジタル化を起点として、ネットワーク、データベース、クロスプラットフォーム、コストダウン等々が相乗効果を発揮し、かつ社会制度によって支持された時、実現される便利な状態、と定義できる。

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