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本稿は推敲中である[03.12.24初稿,05.4.26追記]

文化財とデジタル マニフェスト2004

著作権者自身が公開

 報告書の電子化においては著作権が問題とされ、一般論としての議論は収束しにくい。調査団体(報告書発行団体)だけでなく、執筆者各個人にも著作権があるという見解もあり(但し団体が著作権を持つという契約が行われる場合もある)、著作財産権は行使しないまでも、デジタル化と公衆送信、アーカイブ的保存と公開において、著作者人格権に基づく留保が主張される可能性はある(日本の著作権法では人格権の保護傾向が強い)。従って、あらかじめ、デジタル化・アーカイブ化・オンライン化の承諾を得ておくべきかもしれない。
 外部から許諾を求める作業には甚大な手間が予想され、現実的でない。結局、著作権者(それが誰であるかは内部的にしか分らない)自身が決定し、自発的に公式サイトにおいて公開されることによって、現実的な報告書オンライン公開の展望が開けてくると思われる。外部からは、リンクやアクセスが可能であれば、問題ない。

著作権の発生

[04.6.4]著作権保護の対象となる著作物は、定義上「思想・感情の創作的な表現」物であり、範囲としては芸術ばかりでなく学術も含まれる。普通、単なる事実の伝達は著作物には含めない。断片的なデータの集成も、資料価値はともかく、著作物とは見なされないと思われる(但し、編集の創作性には著作権が認められる可能性が高い)。研究論文に著作性が存在する事に疑いの余地はないが、一般に遺跡(遺構や遺物)の情報に著作権が存在するのかどうか、必ずしも自明ではない。もちろん、実在する史的文化財の殆どには著作権が存在しない(著作者の死後50年以上経過しているから)。しかし学術的な図面や図表は条文上も著作物であり、純粋に事実伝達を目的とした写真であっても、立体物の写真は、撮影角度や照明等を含めて考えると撮影者の著作物と見なされる可能性が高い。遺構や遺物の図版も、書き手や撮り手の知性や個性が反映し、及びその学術的な性格からしても、著作物である可能性が残る。従って、報告書作成に関わった者達から(正当に)著作権[05.4.26追記:もちろん出版権や公衆送信権など、公開にかかわる権利を意味する]を譲り受けた機関が、著作権を主張する事は可能である。
 もちろん、正当な引用行為は一般に認められているので、その限りでの使用に問題はないはずである。ただ、図面の引用は一般に認められるとして、「写真の引用」は微妙である。

デジタル写真の扱い

[04.6.4]オリジナルと物理的に等しいデジタル写真のコピーの場合、引用が法律上可能な事なのかどうか微妙である。そこで、著作権者はデジタル写真の引用について特段の規程ないし仕組みを設け、基準や態度を明確にする必要があると考えられる。仕組みとしては、見える透かし、電子透かし、メタデータ(最近のPhotoshopでサポートしている標準的なものがある)、何らかのパスワード保護対策などが考えられる(PDFでも分るように、パスワード保護の対象には様々なレベルがある)。また個々の画像使用契約を、電子的(オンライン)、あるいは自動的に行う仕組み(トラックバックのような)もありうる。
 ちなみに、オンラインデータについては、画像の直接リンクによる埋込みも技術的に可能である。これについては、閲覧契約のような形で態度を明確化しておく必要があるかもしれない。何らかの技術的保護対策 を導入する事も考えられる(データベースを稼動させる等)。

HTMLがメイン

 Webコンテンツとして見た場合、PDFをメインとする選択肢は考えにくい。Acrobatはアプリケーションとして重い方だし、Web閲覧の流れからはずれてしまう、別の閲覧環境であると言わざるをえない。プラグイン表示も出来る場合と出来ない場合があり、一定しない。但し特殊な事情で、メインでないコンテンツとしてPDFを活用する場面はありうる。
 PDFでは頁をまとめたワンファイルにする傾向があり、ダウンロードの負荷が問題になりやすい[04.4.8追記:サーバを仕込めば、オンデマンドで1頁づつダウンロードするようにも出来るが...]。HTMLでは閲覧のスピード感を重視して軽いファイルにする傾向があり、負荷が分散されるといえる。なお、XML処理の都合上、Well-formedなXHTMLの方がいいかもしれない。
 今日、プラグインとして現実的なのはFlashのみである。その意味で、印刷物流用にはFlashPaperという選択肢もある。

アクセシビリティの重視

 HTMLコンテンツは、構造をHTMLで記述し、書式をCSSで記述する流儀が望ましい。CSSのリンクにmedia属性を入れる等の工夫で旧版ブラウザ問題は回避でき、構造化したHTML記述でWebアクセシビリティ問題にも対応できる。またフレームの使用は極力避けるべきである(但し閲覧の都合上、フレームの方が望ましい場合もある)。ページ毎の容量は適度な分量とすべきである。
 スムーズな閲覧のため、キーボードでのナビゲーションがあると快適である(JavaScriptでこれを可能にする手もある…アクセスキーという手法もあるが、操作性がブラウザによって異なり、組み合わせキーは煩雑かもしれない)。HTMLにはサイトナビゲーションのリンク要素も定められており、これを用意しておくと、MozillaやOpera等のブラウザではボタンが利用できる。

文化財デジタルアーカイブの必要性

 報告書の著作権者は通常、埋蔵文化財を扱う地方自治体ないし財団などの公的団体である。こうした機関の公式サイトで報告書がオンライン公開される事は、著作権の観点から必要な事だが、報告書の永久公開が保証されるとは限らない。
 長期にわたって安定した公開状況を確保するには、いずれ著作物を寄託する電子図書館ないしデジタルアーカイブ機関が必要になると考えられる。そうした機関は、デジタル化された文化財情報の超長期保存を使命とし[04.4.8追記:マイクロフィルムの耐用年数は500年だそうだが、超長期はそれを越え、基本的には永久と同義である]、またオンラインサービスを事業として行うことになる。
 文化財デジタルアーカイブは、どのレベルで作られてもよいが、地域レベルないし県レベルが妥当であろう。さらに、全国数カ所にバックアップとしての文化財データセンターを、国レベルで設ける事が望ましい。


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