平成9年8月13日付文化庁通知
「出土品の取扱いについて」
平成10年9月29日付文化庁通知
「埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について」

全文については、いずれ文化庁サイトで公開されるのではないかと思われる(「出土品の取扱いについて」平成9年2月付け、は公開されている−ただし最新版は平成9年8月13日付けのはずであるが...)。ここでは要点を把握し、整理してみたい。引用と断わったもの以外は、ここでのオリジナルコメントである(断わりなき場合の引用元は「埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について」)。


通知は以下のような項目立てになっている(項目抄録)

  1. 基本的事項
  2. 埋蔵文化財行政の組織・体制のあり方とその整備・充実について
  3. 開発事業との調整について
  4. 埋蔵文化財包蔵地の把握と周知について
  5. 試掘・確認調査について
  6. 開発事業に伴う記録保存のための発掘調査等について
  7. 発掘調査の経費等について
  8. 発掘調査成果の活用等による保護の推進

内容を(字面から)まとめると、以下のようなことになる。

特に最後の要求は、重い問題かもしれない。また、遺跡の定義について注目すべき記述がある。

引用1:
埋蔵文化財包蔵地の所在・範囲を的確に把握し、これに基づき保護の対象となる周知の埋蔵文化財包蔵地を定め、これを資料化して国民への周知の徹底を図ることは、埋蔵文化財の保護上必要な基本的な事項である
引用2:
埋蔵文化財として扱う範囲に関する原則
(1) おおむね中世までに属する遺跡は、原則として対象とすること。
(2) 近世に属する遺跡については、地域において必要なものを対象とすることができること。
(3) 近現代の遺跡については、地域において特に重要なものを対象とすることができること。
引用3:
埋蔵文化財として扱う範囲の基準の要素
 遺跡の時代・種類を主たる要素とし、遺跡の所在する地域の歴史的な特性、文献・絵図・民俗資料その他の資料との補完関係、遺跡の遺存状況、遺跡から得られる情報量等を副次的要素とすること。

関連する指示をまとめてみると以下のようになる。

いわゆる周知、広報、活用に関する要点は以下のようなものである。

引用4:
埋蔵文化財の保護については、広く国民の理解を求め、その協力によって進めることが肝要であるから、各地方公共団体及び関係の機関において、発掘調査現場の公開、調査成果のわかりやすい広報、出土品の展示、その他埋蔵文化財保護に関する事業の実施を積極的に進める。
引用5:(「出土品の取扱いについて」より)
埋蔵文化財の保護や発掘調査に対する国民の理解と協力を促進するためにも,出土品の積極的な活用を図る

コンピュータの活用

「コンピュータ」への言及が2箇所で出てくる。

引用6:(「出土品の取扱いについて」より)
出土品の広範な活用のためには、出土品の保管・管理や活用状況に関する情報の広報誌・コンピューター利用の情報ネットワークなどを活用して相互に発信することが有益であり、そのシステムの開発の研究も必要である。
引用7:
都道府県教育委員会が決定した周知の埋蔵文化財包蔵地については、都道府県及び市町村において、「遺跡地図」、「遺跡台帳」等の資料に登載し、それぞれの地方公共団体の担当部局等に常備し閲覧可能にする等による周知の徹底を図ること。また必要に応じて、関係資料の配付等の措置を講ずること。
この資料については、都道府県と市町村が内容として共通のものを保有することとするとともに、常時最新の所在・範囲の状況を表示できるよう、加除訂正が可能な基本原図を用いることや、コンピュータを用いた情報のデータベース化等、機能的な方法を工夫すること。

埋文における情報化への基本的な動機付けとしては、これでも十分な言質になっていると思われる。この文言は、もっと注目されてよいはずだ。


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