一般的な構造設計や設備設計に関しては、
他の同業者サイトに多く語られていますので、ここでそれは省くとして、
そのほかでチカラを入れているのは
「改修設計」と、断熱や結露防止対策といった「熱環境設計」です。


改修について
 実のところ、それを目的で渡仏したわけではないのですが、長年フランスで研究と仕事をしているうちに、リノベーション(改修・改装)のイロハを学びました。かの地では、日本では想像もできないような内容・規模のリノベーションが、当り前のように行われています。

 そこで学んだリノベーションの奥義は、もちろん「設計」にもありますが、何をおいても現場での「工事監理」にあります。フタを開けてみて、初めて中身が分かることの多いリノベーション現場・・・そこでは、問題に直面したときの咄嗟のアイディアと判断能力を求められます。こればかりは書物などからは学べない、現場で、カラダで覚えるしかない部分だと感じています。

 一般的なリノベーションのほか、最近は「耐震改修」のご依頼も多いです。これについては地震国・日本で学んだ部分が多いですが、特に耐震というわけではなく、古建築に施す「美しい構造補強」という概念は現在のフレンチ・リノベーション界にもありますので、「日本耐震技術+フランス構造補強美」というコンピレーション方式で考えております。


熱環境について
 構造的な力の流れや、電気、熱といったものは、目に見えないものなので取扱いが難しいです。しかし、それを生業としている人にとっては、慣れてくると力の流れは柱や梁を通して見えてきますし、電気も配線を見れば何処を流れているかが分かります。ただ、熱だけは、実際に何処をどう流れているのか、その道のプロでも厳密には分からない、というのが正直なところです。

 とはいえ、それでは仕事になりませんので、現実に近似した理論値からそれらを割り出して設計しています。その結果から、グラスウールや発泡ポリスチレンといった一般的な断熱材を、必要部位に必要量だけ充填・張付けしています。

 そのほかに(ここが重要なのですが)、「ガイナ」という断熱・遮熱塗料を当事務所では設計標準仕様にしています。少々専門的な話になりますが、これは、太陽光中の熱線(主に遠赤外線)が物質に当たって分子活動を活発化させて「熱」となる前に、その熱線自体の多くを反射して、熱(輻射熱)を発生しづらくさせる効果があります。

 これを用いれば、熱の発生源自体を抑えられますので、とても熱環境設計が進めやすいのです。また、ガイナの関連製品である「ノン結露」も、結露計算の結果から結露発生しやすい部位に用いています。(これは設計標準仕様ではありません)


デザイン断熱
 ガイナは本来、太陽光中の熱線反射を目的とした製品なので、建築物の外部仕様(屋根・外壁)として熱が屋内に流入することを防ぐことが基本ですが、原理的に逆の利用方法、つまり内部仕様(床・壁・天井)とすれば、室内の熱線を屋外に漏れ難くすることもできるわけです。また、ガイナとノン結露を併用して、寒冷地では必須とされる給水設備の「水抜き」を不要とするシステムも考案しています。

 ガイナは塗料です。見た目には、強力な断熱・遮熱を施した建築物のようには見えません。一般的に「高気密・高断熱」を謳っている量産住宅などでは、外観が「いかにも・・・」といった堅牢なものが多いですが、ガイナを施した建築物は、そのような様相にはなりません。(見た目は通常の塗装と同じです)

 逆に言えば、軽快なデザイン性と断熱性の高い建築物が可能になります。
これを用いて、「デザイン断熱」という新たな領域を確立すべく、日夜、研究に勤しんでおります。

※ ガイナとノン結露についての詳しいことは、こちらをご覧ください。