4年ぶりにくびき野を走ることが決まったのは、7月の小布施マラソンを走っている中でのことだった。
この日、たまたま中学部のSくんのサポートランをすることになり、かつてないほどゆっくりペースでハーフを走った。あまりトレーニングできていないにもかかわらず、このゆっくりペースが楽しくて、一緒に走っていた同僚S氏に「俺が決意したら一緒に100km走る?」ときくと、予想に反して即「やろう!」という返事が返ってきてしまった。
決めたからにはトレーニングに励もう、とも思ったが、今年の酷暑はなかなかのもので、重い腰を持ち上げる気力をそいでくれた。あっという間に大会は近づいてきた。大会と共に近づいてきたのは台風22号だった。前夜は車中泊だったが冷たい雨が車のボンネットをたたく音がにぎやかだった。それでも前夜祭は盛り上がった。地元新潟の初挑戦の方と同席して、「事前に70kmまでは練習したけど100kmまでは練習できなかった」と不安がっているので、太鼓判を押してあげた。前夜祭終了後 業務連絡のように「UMMLerのかたはステージ上にお集まりください」のアナウンスがあり、S氏も誘って写真に収まる。
9時就寝。3時間後おしっこに起き、さらに3時間後に起床。雨は降り続いている。
台風の天候判断について、午前3時に最終判断という掲示板が受付に立てかけてあったのを思いだし、いつものようにコンロでお湯を沸かして、うどんとおにぎりの朝食を摂った後準備を調え会場入りして、判断を確認する。「本日は予定通り決行します」の文字に口では「よし」と言ったものの荒天の中走りきる自信はまったくなし。行くしかなくなったかあ、、といったところ。2年ぶりの100km大会、練習不足、プレッシャーはかかるばかり。
100円ショップ改造カッパを着込んで、正直に13時間の所に並んでいざスタート。5時30分。
前半6時間、後半7時間たっぷり時間を使おう!
できるだけ濡れないようにぎりぎりまで軒下にいたが、まったく意味なし。
5kmあたりで 空が白んでまわりがよく見えるようななる。33分37秒。急ぎすぎないことを序盤のテーマにしていたので、まずまず。気持ちよく走れているので、「これで完走を確信した」などと軽口をたたき、すぐに痛い目に遭う。10kmすぎあたりから右足の付け根の当たりに違和感。気にしないように走り続けるが、15kmすぎには、本当に痛みを感じる。すぐに、泉さんの完走記を思い出すが、あまりに残りの距離が多すぎる。とにかく我慢しながキロ6分30秒ペースくらいでキープし続けると30km前くらいから痛みを忘れている時間が長くなる。巨人軍団 斉藤さんに追いつき、耳についてる飾りが気になって「何ですか?」ときくと「補聴器だよ」とボケられて、大笑いしたりしたのも気分転換になり。
いよいよ上りが始まる。山の中の急登では歩くことも考えていたので、おぼろ汁のある牧村役場まで一気に登るようS氏に声をかけ、ペースを落とさず登る。牧村について、おにぎり、おぼろ汁をいただくが胃が調子悪いことに気づく。実は今回初めてスタート前にガスター10を服用してみた。後半に胃が働きにくくなるのを防止したかったからだ。が、前半から消化が抑えられている感じで、ものを食べたいという意欲が湧いてこない。若干吐き気まで感じて、固形物を摂るのが怖くなる。
二つ目の峠を越えて、ほぼ下りきったところでフルの距離を超える。過去2回この距離でこんなに疲れを感じたことはない。コーラの自販機を発見して思わず購入。うまかったけど冷たさが胃に刺さる感じ。吉とでるか凶とでるか分からない。でもちょっと元気になった気がして、最初のトランジット安塚町役場についてみると、ほぼ予定していた時間であった。これに気をよくして、またちょっと元気になり、Tシャツ、靴下を着替え、豚汁、おにぎりをほおばる。乾いたものを着るとリフレッシュ。このときは固形物に違和感なし。
前回記憶している場所に来ても50kmの表示がなかなか表れず、おかしいなあと思っていると、再び上りが始まったあたりで、50kmを越える。今までとコースが若干変わっていることに気づく。さらにきついことには、豚汁のエイドを横目でみながら通り過ぎて折り返してこなければいけない地獄の新コースが設定されていた。予定と違う状況に歯を食いしばるのみ。エイドにつくと再び軽い吐き気を感じ、豚汁は、具を全部残す。再びかなりの疲れと眠気を感じる。ホットコーヒーを少し口に含んで気付け薬とする。四つ目の峠は走る自信が全くなかったので、迷惑がかかってはいけないと思い同僚S氏に「どんどん上れそうだったら先に行って」と大きな弱音を吐く。S氏もいっぱいいっぱいで、いっしょでないと不安であることを告げられ、二人三脚で最後まで目指すことをお互いに決意する。
四つ目の峠を越えると、長い長い下りはペースよく下れる。あまり調子に乗るとえらい目に遭うのは、あちこちで経験済みなので、慎重に、でも稼ぐならここしかない、という走り。虫川の大杉を眺め、上田から来た方とお話をして気を紛らわせている内に第二関門着。69.1km、関門の余裕20分。
おにぎり、お茶を両手に持ち、食べながら太股、ふくらはぎにアイシングしてもらう。パンパンになっているのがよく分かる。手っ取り早く糖分をとるため、今日2本目のコーラ。リフレッシュして最後の峠へ。上りは完全に歩き通す。ちょっと風が強まり、雨が冷たく感じる。そういえば台風が近づいていたんだ。
下りにかかり、再度ペースを作り直す。前回足に来てしまい、この下りを歩かざるを得なかったことを思い出す。今回は歩いていたらゴールはない。なかなか吉川町役場が近づかないと思いながらとことこ走っていると、ドクター中島さんに並ぶ。同僚S氏はクランケなので、しばし会話を交わし、二つ目のトランジット吉川町へ。78.6km。手早く着替えるつもりだったが、結構時間がかかり、さらに、左の膝横とおしりのほっぺに鋭い痛みを感じ始め、最後の関門 柿崎町がやばいかも、、、という気がしてきた。とにかくそばとうどんを無理矢理詰め込んで、出発する。
走りながら時間の計算で頭がぐるぐる。柿崎の関門はクリアーできそうだが、もしぎりぎり通過だとすると、残りをキロ8分以上かけられない。左足の状態が悪化すれば、すぐアウトのなるだろう。その前に柿崎の関門で引っかかるかもしれない。そうなったら悔しいけど楽になるなあ、、、とこの日最大の弱気がやってくる。かろうじて、可能性がある内は走り続けようという気持ちが上回り、思ったより短く感じながら柿崎町で反射材のたすきを受け取る。やはり余裕は20分。
のこり15kmで2時間20分の持ち時間が、少しだけ気持ちのゆとりを感じさせる。少しペースが落ちる。一日中雨だったが、日没が近づき妙に空が赤くなっている。海に沈む夕日がみられるかと思ったが、90km越えてみると海は大荒れだった。やはり台風のしわざか。すぐにあたりは真っ暗。最後のお楽しみエイド 海賊汁にたどり着くまで、何度か左足にむちを入れる。海賊汁には、ワタリガニが入っていたが、かぶりつくことができず、おにぎりにも手が伸びなかった。胃散は抑えられている感じだが、三度吐き気を感じていた。でもカニのだしは出まくっていて、うまいと感じた。
後はひたすらゴールを目指すしかない。ペースはキロ8分。口数も少なくなり、ホントにひたすらという走りが続く。線路をわたり、残り5kmを切って、完走を確信しつつ、カウントダウンになっている距離表示がなかなか減らない。ゴールのポーズを考えながら、発電灯が連なっている先を見続け、走り続ける。
ここまで来ればもう近いと記憶していたお店が見え、500mほど走るとこうこうと明かりが見える。「あそこ 右でゴールだ」とS氏に叫んで、曲がると もうゴールが見えている。時間差を付けてゴールするよう示し合わせて至福の瞬間へ。
やはりなみだは出ない。ようやく久しぶりに100を越えたといううれしさはあるが、それ以上に疲れていた。自分は鉄人でもウルトラでもない。ただのおじさんだ、と再認識した。予定通り13時間をちょっと過ぎるタイム。目一杯楽しめたということか。
宿に着くと布袋屋まっさん、江戸川特急さんなどUMMLerがたくさん宿泊していた。すでに酒宴にはいっていた方もいた。のどが痛くてビールの通りが悪い。関東へそれた台風は、首都圏にえらい被害をもたらしていた。こちらへきていたらマラソンどころではなかったかもしれない。
宿の薬湯につかりながら、一日を振り返る。残り25kmをどうして頑張れたのか、自分でもよく分からない。ただ、1つ分かっていたのは、同僚S氏がいなければ今回の完走はなかったということ。絶対ゴールしたいと思う2人でつかんだゴールだった。
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