「あの子も、ひょっとして知り合い?」
 さすがにそろそろ慣れてきたらしいるりか。
 ユカさんと共に来た少女、すなわち真奈美の方を向くと、穏やかな口調でそう僕に尋ねた。
 「うん、まあ、中三のときに、ちょっと、ね。」
 「すいぶんとおモテになりますことで。」
 うう、こわいよぉ。
 まあねえ、ここで一発『僕の好きなのはるりかだけだよ。』とか言ってあげられればいいんだけど・・・
 言ったら言ったであとが恐そうだしなあ。
 なんか来るやいなや真奈美は真奈美で泣きそうな顔だし。
 にらまれたり怒られたり、ってのはいやだけど実のところ泣かれるのが一番参るんだよなあ。
 まあねえ、確かに昔っから真奈美って子は泣き虫だったけど、なにも着くそうそうそんな顔・・・
 ・・・ひょっとして僕の横に引っ付いてる二人が原因、かねえ?


Sentimental Midnight
第十章


 一つありがたかったのはユイさんたちに加えてユカさんが登場したことで、ようやく事態が動きはじめようとしていたことだろうか。
 この先こそ、真の修羅場、といってしまえばそれまでなのだが、今までの修羅場と質が違うぶん、かえって僕にはそちらの方が楽であるように思えた。
 いやほんと、冗談抜きで。
 「修羅場修羅場って言うけどねえ。」
 相変わらずなぜか僕の考えていることがわかるるりか。
 こりゃあ先が思いやられる。
 浮気なんぞしようもんなら・・・
 「浮気・・・する予定があるわけ?」
 あ、いや、それは・・・そのぉ・・・ま、ほら浮気ったってしたくても相手がいなきゃどうにも・・・って心当たりはいっぱいあるのか。
 「まあ、将来の浮気よりともかく今の方が大事だけどね。大体修羅場を作ってるのはあなた自身でしょう?はっきりした態度を取ればいいんじゃない。」
 それはまあ、確かにるりかはれっきとした恋人であって・・・言ってることは至極ごもっともだとは思うんですけどねえ。
 どっちにせよいつかは決着をつけなきゃならないってのももちろんわかっては・・・決着つくんだろうな、ほんとに。
 「あの、ちょっと悪いんだけどね、いちゃつくのは後にしといてくれる?」
 そんな僕たちの会話をそう言って遮ったのはユカさんだった。
 ああ助かった。
 「あなたたちが思っているより、事態は逼迫してるのよ。」
 こっちの事態も思いっきり逼迫してますけどね。
 が、それをこの場では言うまい。
 「若菜ちゃんたちが襲われ、ナオコさんがさらわれた。その上あなたの幼なじみにまで魔の手が伸びてる。敵も、手段を選ばなくなってきたわね。」
 「そうよねえ、タブリスとしてもアダムの覚醒前に事を起こしたいだろうし、ねえ。」
 深刻そうな顔でユイさんとユカさんがそう言葉をかわしている。
 ちなみにどっちがどっちか、僕には区別がつかない。
 「ようは、さあ。監視者という奴をとっ捕まえて、」
 「タブリスを捕獲すれば、いいんじゃないの?」
 そんな二人とは対照的に、呆れるほど楽観的にそんな意見を述べたのは明日香とるりかだった。
 お前ら、もちっともの考えろよ。
 「あなたは現状をどうするか考えてね。」
 ・・・はい、それはもうごもっともでするりかさん。
 が、実は僕は知らなかったが、ここに集っている人間は大なり小なり、どこか楽天的な者たちばかりだったのである。
 やっぱり深刻な部分は僕一人が背負い込まなきゃいけないらしい。
 「まあそうねえ、うだうだ考えても仕方ないものねえ。」
 「そういうのって私たちの性に合わないしね。」
 そう言ってユカさんとユイさんが顔を見合わせる。
 「たしかに、せこせこやるのはまだるっこしいわね。」
 そんな二人の意見にキョウコさんが同調する。
 ・・・もちっとみなさん思慮深い方々だと思ってたんすけどねえ。
 なんかこれじゃるりかや明日香とあまり変わらないような気がする。
 え?るりかたちを引き合いに出してないで素直に言ったらどうだって?
 いやまあ確かにねえ、リナとナーガのようって・・・そんな事言ってる場合じゃないんですけど。


 され、乗り込むとはいったものの、敵の拠点を探るまでがまた、一苦労であった。
 まあよく考えて見りゃ、わかってりゃユイさんたちやキョウコさんたちのことだからさっさと乗り込んでいたんだろうけど。
 ようするにそれがわからないから事態がこうなった、訳なのか。
 ・・・どうせなら僕の知らないうちにことが住んでくれれば楽で良かったのに。
 「問題ない。」
 ・・・この六分儀ゲンドウという人もよくわからない人だなあ。
 さて、何が一苦労だったか、というと、その拠点探しそのものが、ではない。
 向こうにも多少の焦りがあるのだろう、だから妙子を襲ってみたりとかなり強引な手を使ってきたわけなのだが、そうやって僕たちの前に姿をあらわす、というのはそれはそれ向こうにしてみれば危険性を伴う。
 本心を言うなら、あちらさんもユイさんたちに気付かれないうちに事を進めたい、といったところなのだろう。
 が、結果としてそれはかなわず、若菜を襲い、赤木ナオコさんをさらい、といった行為は、自分たちの存在を明るみにしてしまった。
 いったん姿をあらわしてくれさえすれば、どうにかなるものなのだ、とキョウコさんはそう言っていた。
 どういう方法を使ったかは知らないが、その言葉通り、キョウコさんと優、そして明日香の三人は、なんか必然性のあるようなないような組み合わせだが、とにかくその三人は、わずか一週間の後に敵の拠点を探り当てた。
 で、何が大変だったか、というと・・・明日香と優は前述の通りキョウコさんと一緒に、ユイさんとユカさんとゲンドウさんでもう一組、そんでもって・・・
 「なんで残り全部僕んとこにくるかね・・・」
 三人ずつぐらいにに別れてて分けて調べよう、という提案をしたのはユカさんだった。
 その考え自体は妥当だと思う。
 で、誰が僕と一緒になるかでおおもめにもめた末、くじ引きになった、というのも・・・まあ理解しよう。
 がそのくじ引きの結果、ユイさんユカさんゲンドウさんがひとくくりになった、というのが僕にとっての最大の誤算であった。
 当初、僕のパートナーはるりかとリツコちゃんであった。
 この組み合わせはある意味僕にとっては理想的であった。
 まあリツコちゃんにとってはそうでなかったようであるが。
 それが美由紀と離れ離れになってしまったことが原因なのか、それともゲンドウさんと一緒になりたかったのかは・・・まあ取り合えず伏せておこう。
 男って大変なんだよ、うん。
 そんな訳ではないが、当然、リツコちゃんは僕に特別な感慨がないから、それでるりかともめるようなことはない。
 そして、もちろんリツコちゃんがいるわけだからことさらにるりかといちゃつく、ということはないにせよ、相手がるりかである以上、ある程度はみんなも納得して・・・
 「確かにね、これであたし以外の子がパートナーだったら、そりゃああたしも黙ってられないけどね。でも、」
 そう言って僕の横でるりかが睨む。
 何がいったい誤算であったか、それは残る一組の組み合わせにある。
 必然的に残る三人、若菜、真奈美、美由紀という組み合わせになるわけなのだが、この三人の場合強力なリーダーシップを取るものがいない。
 というかたとえばキョウコさんがついていれば、強引にでも明日香たちを引っ張っていて本来なすべきことに目を向けさせてくれるのだが、それをするものがいないのである。
 つまりどういことかというと・・・
 「だいたいあなた、この三人にあたしが恋人だってこと、ちゃんと言ってなかったような気がするんですけど。」
 そうか、そうだよねえ、それじゃ納得しないよねえ。
 しかも止める人もいないから、当然僕たちと一緒に行動・・・
 一週間、端から見れば五人(含むリツコちゃん)の美少女に囲まれてなんとも羨ましい状況ってことになるんだろうけど。
 誰か助けて(泣)
 そして僕はこの時一つのことを忘れていた。
 キョウコさんがついていればこそ、しぶしぶながら明日香も優も別行動を取っているわけで・・・当然、夜毎の彼女たちの追求というのは・・・あまり思い出したくない。
 が、この事件の最後の最後に、さらにもっととんでもないどんでん返しが隠されていたことを、今の僕は知る由もなかった。


第十一章へ続く


あとがき

ジェイ:さてさて、真奈美ちゃんも合流してようやく登場人物が一堂に会したわけで・・・
ほのか:ちょっとちょっと。
ジェイ:あ、いやまあ確かに妙子ちゃんは合流してないけど、まあそれは最初からそういう予定だし。
夏穂:そうでなくって。
ジェイ:あ、あと晶ちゃんに関してはこっちで出番がない代わりに、私のホームページでやってるヒット記念の小説の中で出てくることになって・・・
千恵:そうじゃなくって!
ジェイ:なに?
えみる:私たちの出番はどうなってるんだりゅん?
ジェイ:・・・さあ?
夏穂:ちょ、ちょっと、ほんとにあとがきだけの出番なわけ?
ほのか:夏穂さんはまだいいですよ、本編でちらっと名前だけでも出たから。
夏穂:よくなーい!!
千恵:あたしらの扱いはどうなってるんだー!!
えみる:ひどすぎるりゅん!




アスカ:まがいなりにも出番があるだけ、アタシらまだましかもね。
美由紀:そうですね。
明日香:ところでいったいどんでん返しって何かしら。
るりか:まあだいたい予想はつくけどね。
ジェイ:予想ついてもばらさないでね。
るりか:ヒントぐらいはいい?
ジェイ:うーんまあ、少し位なら。
アスカ:ヒント?
るりか:まあ上で騒いでいる人のうちの誰かが関わってくる、ってことは確かね。
明日香:そうなの?
ジェイ:うんまあ、それが誰かは・・・まだ秘密。複数ってことはない。
美由紀:ってことは結局残り三人はまったく出番がないわけなんですね。








新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。



J’s Archeのジェイさんの、
センチ&エヴァ連載シリーズの第10話公開です。

ついに登場人物が一通り・・・・出ていない人のつっこみが怖いぞ>ジェイさん

さて、とんでもないどんでんがえしとは、そして最後の一人は誰なのか

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