2010年W杯南アフリカ大会アジア最終予選 
  日本 VS バーレーン
 

                                  
埼玉 2009.3.28

   
 3時だと人がまだ少ない  
   
 4時過ぎ。スタンドの座席には日の丸が

 
今日は大切なバーレーン戦。
W杯出場に向けて、絶対落とせない。
ホームだということもあり、負けるはずはないと、勝利を信じていた。

この日はアウエー側のサポ席。自由席。
友人達のおかげで3時に駆けつけた私でさえも、ゴール裏、応援団のすぐ前という、素晴らしい席を確保できた。
いつもいつも、ありがとう。


さて、この日もなかなか点が取れない。
バーレーンは、信じられないほど引いた守備。
日本が相手陣営に入り込むことは容易にできる。
しかしその後が問題だった、いつものように。
1m85cmを超えるDF2人に、いやというほどクロスが弾き返された。
ゴール前までは、簡単にボールを運べるものの、サイドに散らしてクロスを蹴ると、高さで圧倒的に負ける日本は、FWにボールを渡すことができない。
競り勝つ以前のレベルで、ボールに触ることさえできない。
それなら、戦い方を変えればいいと思うのだが、いつものワンパターンクロスをやめることができない。

ゴール裏から見てると、ミドルシュートを狙えるタイミングは前半で3度ほどあった。
コースが開いていた。
けれど、ゴールを狙うよりもボールを繋いでしまっていた。
内田がクロスバー直撃の惜しいシュートもあったが、惜しいで終わったらいつものサッカーだ。
何とかしてほしい!!

私達は、サポ席で、次第にフラストレーションを抱えていった。
“シュートで終わろうよ!”
“シュートを打たないことには点は取れないよ!”
これらの声が虚しく響いていた。

   
   スタンドは青一色
   
   サポ席に揺らめく巨大ユニ

守備は、引き気味の布陣ということもあり、全く点を取られる心配はなかった。
中澤と闘莉王の2枚看板は、安定した守備をしてみせた。対人でも制空権でも強い。
けれど、サッカーは点を取らないと勝てない。勝ち点3がどうしてもほしい。
一方的に押し気味でありながら、無得点のまま前半が終了した。


後半が始まり、相変わらずの放り込みサッカーが展開されていった。
玉田や田中達也、大久保のFWは、動きは確かにいい。
ボールを奪われても、しっかり前線からチェックに行き、数人で連動してボールを奪い返す。
ただ、FWが下がり気味なのが気になった。その後ろにいる俊輔が、もっと下がってしまうからだ。
もっと前目でボールを受けるとか、ボールをキープするとか、無理やりシュートするとかできなかっただろうか?

そうは言っても、チャンスは来た。
後半2分、ゴール前の左寄りで玉田が倒され、FKのチャンスを得たのだ。
う〜ん、右寄りなら遠藤ヤットだろうか?前半のCKでもヤットが蹴る場面が多かったから。
この大チャンスを決めてくれと、スタジアムは緊張感に包まれた。
私も俊輔が決めるのを信じ、祈った。
だけど、そうそう決められるものじゃない。ダメな場面だって多い。
祈りながらも、落胆するのを恐れ、期待しすぎちゃいけないと自分を戒めたりもした。
だけど、決めて、きっと決めて。。胸は高鳴った。

どちらが蹴るかわからない中、2人が並び、俊輔が左に立つヤットに、軽くちょこんと流した。
ヤットはそのボールを止めると、すぐさまその場から走り去った。
その走り去った場所に俊輔がすぐさま走り込んで、左足で振り切った!!
トリックプレー。
ボールは、クリアしようとジャンプしたスキンヘッドの相手DFの頭に当たり、緩やかな弧を描いてゴール右上隅に見事に決まった!!

ウォーーーー!!

   
 俊輔のFK。相手DFに弾かれてしまった。

 
   
 ゴール前の競り合い。

 
スタジアムは大歓声だ。
私は今この目で見たものが、即座には信じられなかった。
うそ、俊輔が決めた?この大切な試合で決めた?
ゴールネットを揺らしたのは、幻じゃないよね??

オーロラビジョンでリプレイを見て確認した後は、うれしくて、興奮して、じっとしていられなかった。
友人達と一緒に抱き合い、ハイタッチをし、ガッツポーズをした。
後ろの知らないオジサンともハイタッチをした。
周りから「さすが俊輔だ、あの場面でよく決めた」との声が聞こえてくる。
それを聞いて、俊輔が誇らしかった。CLなど、海外の大きな試合に出てきたのは伊達じゃない。
もう、最高の気分だった。

この日の感触では、1点を取ったから、もう勝てると思った。
だけど、サッカーには“絶対”はない。事故のような失点はある。例えばキャッチミスとか。
前回のバーレーン戦では、闘莉王のバックパスが、オウンゴールとなってしまったし。
俊輔のFKが決勝点になることを考えつつ、もう1点を取ってくれることを望んだ。

バーレーンは、一転、守備的布陣から攻撃的布陣へ変化した。
点が取れなければ、負けるだけだから。
それが、日本にはいい流れになった。
沈滞していたFW陣が動いて、何度もチャンスを作った。
焦ったバーレーンは、再三日本陣営に入り込みながらも、シュートをミスしてチャンスらしいチャンスは作れなかった。
何とかしなければと、はやる気持ちがボールを確実にヒットさせなくしたのだろう。
それほどまでに、重たい1点だった。
その後に追加点が取れなかったのは、相変わらず日本の課題だが、ともかく勝って勝ち点3が予定通り取れて良かった。


試合後、バーレーンのマチャラ監督は『中村俊輔なんか大嫌いだ』と述べたとか。
相手の監督に苦手意識を植え付けた俊輔。
俊輔ひとりにやられたと思ったことだろう。
風貌がどこか弱々しい表情で、とても頼りになるとは思えない俊輔が、バーレーンの天敵になるとは痛快だ。
私が俊輔を応援するのは、弱そうなのに実は強いといったギャップにも因る。
マチャラ監督、いいことを言う。さすが名監督だ。


ということで、俊輔の観点だけで観戦記を書いてしまったが、他に思いつくことも。

・守備陣は安定してきたと思う。中澤と闘莉王が連携を取り合っていれば、点が取られる気がしない。
・FWには長身の選手も入れてほしい。1.5列目に最適な選手を3人揃えたところで、ポストプレーができなければ、選択肢が狭まる。
・長谷部は運動量があるし、当たりが強くて頼もしい。
・内田の上がりは結構あったが、上がるタイミングが少し遅い。
・俊輔と呼吸が合う遠藤は、この日も危ないシーンに顔を出してカバーしていた。危険察知力は俊輔と同レベルだと思う。