インタビュー
小学六年生7月号(2000)より
五輪では結果はもちろん自分が納得するプレーを!

 前回、アトランタ五輪で実に28年ぶりの本大会出場をはたした日本サッカー。おしくも決勝トーナメント進出はならなかったものの、予選リーグで強豪・ブラジルとハンガリーを破り2勝をあげるなど、選手の力が確実にレベルアップしていることを証明した。

 あれから4年。23歳以下の選手で構成された日本代表(U―23)は、みごとアジアの予選を全勝で勝ちぬき、ふたたび五輪の大舞台に立つ。

 “史上最強の五輪代表”と評判のこのチームでエースナンバー10番を背負い、見ているものをワクワクさせるプレーを連発しているのが、“Jリーグ若手No.1レフティー”の異名をとる横浜F・マリノスの若き司令塔・中村俊輔だ。

 アジア地区予選では、予選全12試合にフル出場し、9ゴール。また、毎試合のように見方の得点シーンをお膳立てするなど、17ゴールをあげた平瀬と並び、五輪出場権獲得のMVPともいえる活躍をした。

 もっとも、自らの手(足?)で2大会連続のキップを手に入れた“勝利の立て役者”も、ひとたびグラウンドを離れるとその素顔は、プレー同様いたってひょうひょうとしている。


「アトランタ(五輪出場)までは、五輪とサッカーっていわれてもピンとこなかったな。
 だって、日本(のサッカー)って、僕らが生まれてからズーッとオリンピックに出てなかったじゃない。
 だから、前園さんや城さんたち五輪代表が予選を勝ちぬいて、オリンピックに出るってきまったときには『へ〜、オリンピックでサッカーやっていたんだ』ってカンジだったよ。
 23歳以下の日本代表があるってことも、そのとき初めて知ったしね。だから、オリンピックに対する特別な感情みたいなものは特になかったな。
 確かに五輪代表は同年代の連中と競り合ういい機会で、それなりに刺激を受けるけど、僕の最終目標はやっぱりA代表入りだからね。
 そりゃ本当に力があれば、ヒデさん(=中田英寿)のようにひとっ飛びにA代表に選ばれて、たまたま年代的にも23(歳)以下だから、五輪でも出てほしいってことになるんだろうけど。残念ながら、ボクの場合、まだその段階じゃないと、自分では思っているんだ」

 では、中村俊輔にとって、五輪&五輪出場とは?

「ウ〜ン、他の国の同年代の連中と真剣に闘える場、自分の実力を確認できる場、かな。
 もちろんシドニーではいい結果が残せればそれにこしたことはないけど、それ以上に、五輪のようなめったに経験できない大きな大会で、自分自信納得のいくいいプレーをしたいね」

 五輪のような世界規模の大会では、海外のスカウトマンの視線も数多く集まる。アピール次第では、俊輔の将来の夢でもある、海外進出の半紙も現実味をおびてくるハズだ。

「確かにいつかは海外でプレーしてみたいと思ってるけど、今はまだ早いよ。だって、Jリーグでもまだ満足な結果を残していないんだもの。
 毎試合毎試合、その節に行われた全試合の中から余裕でベストイレブンに選ばれるぐらいのプレーができるようになってからじゃないと、海外に出ても通用しないと思うんだ」

 では、中村俊輔が考える自分自身満足で、納得行くプレーとはどういうものなのか?

「まわりの選手の良さ・特徴をうまく引き出し、活かしてあげること。それが、自分を活かすことにもなると思う。
 あと重要なのは、そういうプレーをレベルの高い連中を相手にしたときにできるかどうかということなんだよね。
 レベルの高い相手と闘うと、気持ちがゲームに入っているから、自分でも思いもよらないようなプレーができちゃうことがあるんだ。そういういつもの自分とは全然違うプレーが飛び出したときは、自分でも『スゲェじゃん! やるじゃん』って、ちょっと興奮しちゃうし、点数でいうと、『今日は自分のプレーに満点に近い点数をつけてやってもいいかな・・・・』って思う」

 はたして、シドニーの大舞台で、日本が誇る“ファンタスティックレフティー”が世界の強豪相手に、我々が思いもつかないイマジネーション豊かで、思わずため息が出るような華麗なプレーを見せてくれるのか、今から楽しみに待っていよう!
 注) 五輪にはオリンピックというルビがうってありました。

小学五年生11月号(1999)より 
自分の力が世界でどこまで通用するのか、五輪で試したい!!

 来年、オーストラリアで開かれるシドニー・オリンピックの出場権をかけたアジア地区最終予選が、いよいよ今月から始まる。ケガで欠場する小野(伸二・浦和)に代わって「2度目の五輪出場」を目指す中田(ペルージャ)とともに、“W司令塔”を務めるのが、1次予選で8得点・9アシストと大活躍した中村俊輔だ。
――中村選手は、現在「JリーグでNo.1のレフティー(=左きき)」と評判ですが?

「そう言ってもらえるのはうれしいけど、自分ではまだまだ満足していないよ。FKにしても、もっともっと自分がイメージしたボールが蹴れるようになりたいし、肉体的にも筋トレで体を鍛えて、今以上に強くなりたいと思っているんだ」

――中村選手の理想というと?

「毎試合毎試合いいプレーをして、その週に行われたJリーグすべての試合のなかでも文句無しにベスト11に選ばれるぐらいうまくなりたいんだ。
 みんながオレのプレーを見て『俊輔ってウマイじゃん』『スゴイじゃん』って言ってくれれば最高だね」

――さて、中村選手のオリンピックに対するイメージは?

「読者の人もそうだと思うけど、日本のサッカーって、オレたちが生まれてからズーッとオリンピックに出てなかったでしょ。だから最近まで『へえ、オリンピックでサッカーってやってたんだ』って感じだったよ(笑い)」

――じゃあ、オリンピックにはあまり興味がなかった?

「そんなことないよ。ワールドカップと同じで、オリンピックに出場するチームは国を代表しているわけだから、どこも本気で戦ってくるよね。
 当然、友好試合や招待試合と違って、真剣勝負ができる大会になるでしょ。そういう真剣勝負の場で、はたして自分の力がどれぐらい通用するのか、見てみたいよね。
 そういう機会ってなかなかないから、やっぱりオリンピックには出てみたいよ。そのためにも、最終予選は頑張らなくちゃ。読者のみんながアッと驚くようないいプレーを見せるつもりなので、応援しててほしいな」