全国大会を振り返り
(田園クラブは品川区の各チームに所属する人たちが、都大会用に結成したチームです)



全国大会は、夢の舞台でした。
東京体育館のセンターコートで、バレー仲間やよそのチームの人たち、家族や親戚一同が勢ぞろいして駆けつけ、応援してくれました。
数えくれないくらい感謝しています。


田園クラブでは、私は最後に選出されたメンバーじゃないかと、コンプレックスを持っていた。
自分でいいのか、ふさわしい人は他にいるんじゃないか、と自問していた。
みんなに追いつくように、一生懸命に練習するものの、田園クラブの高いレベルにはなかなか追いつけないし、
「ああしたらいい、こうしたらいい」のアドヴァイスも、かえって混乱を招き、チームのメンバーの足を引っ張っているんじゃないかと悩んでいた。

そんな私に目からウロコのアドヴァイスをくれたのが、体操で県内優勝をした経歴を持つIさんだった。
「実力うんぬんじゃなく、ムードメーカーで入ったんだよ。持ってる雰囲気がチームに必要なんだよ。」
言われてみれば、がむしゃらさを誉められたことがあった。
それに、田園クラブはいろんなチームからの寄せ集め的な要素があったから、どうしても淡々とまとまりに欠けるきらいがあった。
それならば、いいプレーがあった時に、一緒に喜ぶことにしよう!チームを盛り立てよう!
Iさんの言葉が転機になり、吹っ切れた。
相変わらず、レシーブではミスが多かったものの、得意なプレーはあるので、それで埋め合わせすればいいと開き直れた。


当日は、ママさんといえど、全国大会の雰囲気がありあり。
全国から集まったチーム
、長身の選手も多く、みんな上手そう。
いつも使ってる東京体育館だし、地元のハンデがあるのに、私の調子が全然上がらない。
ものすごい緊張感と、焦る気持ちと、カッコいいとこ見せたいのにどうにもならないもどがしさとで落ち着かない。
加えて、連戦の疲れと、緊張のためのおなかの緩み、応援しに来てくれた人たちの「がんばってね」のありがたい言葉とプレッシャー、さまざまなものが入り混じって、外面では明るいのに、内面では弱気の虫が頭をもたげると、誰かに頼れれば楽なのにと思えることばかり。
チームメートが「1回勝ってからは、同じトイレばかり入っている」と聞き、誰もがマネして毎回自分で決めた同じトイレに入ることにした。
トイレが自分を守ってくれるワケじゃないのに、誰かにすがりつきたい思いはみんなが一緒だったんだね。

1日目を勝ち進んだものの、翌日も朝早く集合するため、居酒屋さんにも寄れず、家へ直行した。
明日着るユニフォームを洗うのと、夕飯の支度をせにゃならないから。主婦はツラいなぁ〜。
加えて、前日もそうだったが、興奮して寝付かれない。
目をつぶると、試合のシーンがプレイバックされる。
自分がレシーブミスしたところ。トスが上がって来て、それを思い切り打てるかどうかってところ。
要所要所を決めるのは、慎重さよりも思い切りだ。
迷いを打ち切ってこそ、自分のプレーができる。敵は自分だ。

私の1日目のプレーはいいところがなかった。打っても弱かったり、アウトになったりしていた。
自分自身のふがいなさに落ち込んだ。
他の8人ががんばってくれたおかげで、勝ち進んだようなものだ。私ひとりだけバスに乗り遅れていた。
でも、落ち込んだところで、何になるんだろう?1日目は断ち切って、新しい2日目を作り上げるしかない。
この9人で戦い抜いてきたのだから、9人で戦わなくてはならないのだ。
決まらなくて自分がツラいことはひた隠し、チームメイトが決めると笑顔で駆けつけて盛り上げていたのは、今考えても“けなげ”だったと思う。
いいんだ、いいんだ、それでいい、ムードメーカーだ。
暗い顔せずに戦ったのが、自分的に最大の功績だったと思う。


2日目の対戦相手は、交流試合でそれほど強いとは思わなかった山口のチームだった。
ラッキー。が、2日前と比べて、格段に良くなっていた。どのチームも最初の固さが取れてきたのだろう。
交流試合でうちのチームに勝った北海道のチームが負けた。粘り負けだ。
勝負は水物、常に調子を維持することはむずかしい。ならば、私の調子を上げることは可能なはず!

田園は前日よりも調子を上げていた。
エースのKちゃんの破壊力は頼もしい。
それと共に、私の調子も上向きになってきた。
山口のチームを下したことにより、A組を優勝し、金メダルをもらった。
調子が良くなり、メダルがもらえたとなると、バレーが楽しくなってくる。

続く総理大臣杯の京都戦では、ブロックの調子が良かった。
インナーを抜かれないように、右腕を締めながら、外側を意識して外から内側へ巻くようにしてブロックする。
それによって、ストレート攻撃をある程度防止できたと思う。決めた時の手ごたえは、たとえようのないほど気持ちいい。
Kちゃんをはじめとする攻撃はずっと好調だ。
加えて、レシーブ陣は穴がないように完成されてきた。
飛び込みワンハンドレシーブの連続に、攻撃が刺激され、いい流れに乗ってくる。


そして、ついに総理大臣杯決勝の徳島戦では、私の調子がすっかり戻り、いつもよりも調子いいくらいで活躍できたと思っている。
メンバーがここまで勝ち残ってくれたおかげで、やっと力が発揮できたのだ。
これで自分もチームのメンバーになれたとほっとした。こんなこと思っているのは自分だけだろうが。
テレビ中継もあったセンターコートだったので、好調な姿を録画できたのは幸せだ。
むしろ、決勝戦に来るまでに力を使い果たしてしまった感のあるKちゃんには申し訳ないくらいだ。
途中負傷というアクシデントがあって、流れが徳島に移ってしまったが、準優勝は上出来だった。力を出し尽くした。
シャワールームで力が抜けて呆然とし、体育館を後にするまでだらだら過ごし、ちょっぴり残念だったけれど満足した試合を引き続き味わっていた。

翌日が仕事だったから、急いで打ち上げをした。
ゆっくりしたいのに、バレーボーラーの前に主婦なんだなぁ〜。
ビールがおいしかったことは言うまでもない。
また、メンバーだけでなく、ベンチで支えてくれた人たちに感謝する。


それぞれの所属チームは違えど、全国大会というひとつの目標に向かい、目的を達したのは、かけがえのない思い出になった。
出場できるだけでも幸せなのに、なんとかひとつでも勝利をという願いが、準優勝までつながったのだから。
田園のメンバーとは、誰とでも試合会場などで会えば楽しく話せる。
私は今は家庭の事情で田園を辞めてしまったけれど、たまに練習に顔を出して交流している。
どんな境遇になろうとも、受け入れてくれる。
いろんな人との結びつき。。それは財産だ。

全国大会での日々は、もうひとつの青春だったのだ。