BLOGに書き溜めたレビュー その2





RushのPermanent Waves

RushにはMoving PicturesやFarewell To Kingsなど名盤が多いが、私は「Parmanent Waves」がダントツだと思う。

それまでのRushの良さである、アコースティック・ギターを使用した叙情性がありながら、次作のMoving Picturesの壮大さやヘヴィネス、きっちりと作り込まれた作品の完成度が存在する。

それに、アレックスのギターでの露出度が高いことが私を喜ばせる。
この作品以降、だんだんとリフ重視になってギターソロが減っていくのが残念なのだ。

ゲディ・リーのボーカルも、響き渡る低音から惜しげもなくシャウトしまくる高音まで、怖いもの知らずで実に爽快だ。
ハリのある細い声質が魅力的。

そして「Parmanent Waves」が好きなことの最大の理由は、“Different Strings”があるからだ。
曲を通してアコギ。叙情的にして宇宙的。寂寥感と虚無感。
これほど美しいバラードが他にあるだろうか。。
流れは“Natural Science”に引き継がれ、情景が見えるようなサウンドは音楽を超越する。

詩の重みが作品を引き立てているのだ。






DGMのHidden Place

イタリアのプログレッシブ・メタル・バンドの第5作目。
Hidden Placeは、かなりプログレ寄りになっている。
次作のMisplacedがパワー・メタルになったのを考えると、この作品が一番のプログレ寄りになるのだろう。この先も。

プログレがかっているだけに、細部までこだわってきっちり作られている。
ギターソロひとつとっても、テクニカルを誇示するだけじゃなく、メロディラインのきれいさまで追っている。

リズム隊はかなりヘヴィーなのだが、場面展開の切り替えの鋭さと変リズムと、キーボードによるサウンドの厚みのおかげで、とてもクールだ。
丁寧な曲作りで、どれもこぎれいにまとまっている。

演奏はとっても上手だ。ボーカリストも力量がある。
これほど実力があるのなら、もっと人気が出てもいい。
人気が出ないのは、クールなサウンドによるキャッチーでない点だろう。
マニアックすぎてしまう。もっとクサくていいのだ。感情移入できるから。






HeartのLittle Queen

美人姉妹の誉れ高いアンとナンシー率いるHeartが、1976年にリリースしたセカンドアルバム。
1曲目のバラクーダが有名で、私もこの曲で彼女たちを知った。

秋の特に収穫期になると聴きたくなる。
ジャケットの、中世時期の森に住みながら移動する民族を模したメンバーが、アメリカの収穫祭とかぶるのかも知れない。
それと、Love Alive、Sylvan Song、Dream Of Archerの、アコースティック・ギターを使った民俗音楽のようなサウンドが、フェアを思わせる。
上記の3曲を初めて聴いた時、なぜか懐かしいような、胸をかきむしられる思いがした。原体験にあるのかも知れない。

美しくて静かなアコギサウンドがあるかと思うと、アップテンポでZeppelinの影響をもろに受けたメタル・ナンバーがある。
この静と動のバランスが非常に良く、その後の私の音楽志向を決定づけた。
幻想的で儚げでパワフルである。

曲にバラつきがあるが、アコギナンバーは素晴らしい。

アンのボーカルは、体と同じでパワフルなんだけどその後に比べるとまだ細い。
ボーナストラックの「天国への階段」(ライブ)は、プラントに勝るとも劣らないシャウトするハイトーンヴォイスが聴ける。ちょっと入れ込み過ぎだが。






Last TribeのThe Uncrowned

スウェーデンのメロディック・ハード、Last Tribeのサード・アルバム。
ギタリストは、スウェーデンでは人気バンドであるミッドナイト・サンのマグナス・カールソン。

ミッドナイト・サンでは、ネオクラシカルもするが、総じてPOPで親しみやすい曲を作っている。
が、このLast Tribeでは、メロディー重視のメタルサウンドをやっている。
曲がキャッチーで乗りやすく、ギターソロもたっぷりとっていて、とにかく聴きやすい。
リフのカッコ良さや、ボーカリストがサビを歌う場面にかぶせてギターが軽くハモってくるのなんか、ゾクゾクする。

テクニカルなのに、これ見よがしに弾くのではない。リスナーを置いてきぼりにしないので、非常に心地よく聴ける。
メロディラインがまず最初にあり、哀愁や泣きがところどころに混じる。
サウンドもバラエティに富み、フックもあるので、1曲1曲が印象に残る。

ボーカルの声質は、パブロクルーズみたい。(わかりにくい説明だ)
できればもっと澄んだ声質がいいが、これでもいい。

哀愁がありながら、意外にもカラッとしている。
メヴィメタが苦手な人が入門編として入るには最適だろう。
点数をつけるとしたら、96点。






SentencedのThe Funeral Album

フィンランドのヘヴィ・メタル・バンドの7作目。
そしてこれがラストアルバムである。

彼らは今絶頂期にある。その絶頂期に解散するのが彼らの美学だそうだ。
ラストアルバムという理由で、葬儀アルバムというタイトルにした。
メンバーも撮影にあたり、葬儀の格好をして、棺を担いだ。

サウンドは、ヘヴィーなのだが、それほど音を密にしないので軽さもある。
歌メロがはっきりしているし、哀愁ギターが広がってメロディアスだ。
ボーカルが野太い声で、ちょっと残念。細い声ならお気に入りになろう。

とはいえ、スピードに頼らず、サウンドだけで勝負した楽曲志向は素晴らしい。
静寂や荒野を思わせるもの悲しさは美しい。
アルペジオとマイナー調のギターソロが胸に染み渡る。

高度な作品を生み出してきたSentencedの解散が惜しまれてならない。





Leaves' EyesのVinland Saga

ヴォーカルはLiv Kristine Espenaes Krull嬢。
彼女の歌声がいい!!
ゴシック・メタルであることから、オランダのWithin Temptationと比較してしまうが、より繊細で壮大で広がりがあり、叙情的だ。
それは彼女の囁くような歌い方にもよる。
ヴァイキングというコンセプト上、デス声の男性ボーカルも加わるが、彼女の声と絡むので苦にならない。
8曲目の民族音楽的なAmhranや、12曲目のクラシカルなワルツであるAnkomstは、ブラックモアズ・ナイトを彷彿させて興味深い。

ゴシック的な面はあるが、プログレのような大作主義や情景を映し出すサウンド作りが感じられる。
メロディック・ハード好きな人はもちろん、プログレ好きな人にも勧めたい。





Spock's BeardのX

今夜はプログレを聴きたい雰囲気。
ってことで、アメリカのSpock's Beardだ。

文字通り、5枚目のアルバム。
Spock's BeardはTransatlanticから入ったため、どうしても中心人物のKey&Vo担当のNeal Morseが気になる。実際彼のバンドである。

サウンドは、軽快なキーボードにリズムが乗った、プログレにビートルズが混ざったような動のサウンドと、こうむずかしい変リズムの静のサウンドに分かれる。
時に動、時に静で美しい。
ドラム、キーボード、ギターのバランスがジェネシスに近い。
ドラマティックな展開もジェネシスだろう。
ベーシストはむしろジャズをやっている。
日本人の奥本亮がハモンド・オルガンとメロトロンを弾いている。

2000年の作品というだけあって、随所に洒落た音を取り入れ、現代のプログレバンドだと主張しているようだ。