Tribute To Rainbow 〜虹の彼方に〜
              東京芸術劇場 2006.8.4



(プログラムクリックで拡大になります)

演奏曲目

1. Eyes Of The World
2. Catch The Rainbow
3. Gates Of Babylon
4. Weiss Heim
5. Rainbow Eyes
6. From Overture“1812”op.49 to memory of Mr.Powell / Tchaikovsky
    〜休憩〜
7. March“Poem and Circumstance”No.1 op.39 / Elgar
8. Spotlight Kid
9. Stone Cold
10. Can't Let You Go
11. Stranded
12. I Surrender
    〜アンコール〜
13. Maybe Next Time
14. Street Of Dreams

   Vocal : Joe Lynn Turner
   指揮 : 竹本泰蔵
   コンサートマスター : 豊嶋康嗣
   オルガン : 室住素子


いつものイントロが。。
Rainbowの曲を、ジョー・リン・ターナーの歌で、オーケストラが演奏するライブだ。
オーケストラの演奏を従えて、ジョー・リンが歌うといった趣か。

イントロが、Rainbowのライブを模して、ジュディ・ガーランドの“Over The Rainbow”だ。
We must over the rainbow。。
rainbow。。
オーケストラでその後のイントロを演奏し、かなりインパクトがあった。ああ、やっぱりクラシックなんだなと。
その後、曲調が変わり、「Eyes Of The World」だ。今さらながらに、クラシックとRockが一体化した、素晴らしい曲だと思った。
Rainbowのオリジナルそのままでも、十分にクラシカルだ。

ジョー・リン登場!
色とりどりのライトを浴びて、ジョー・リン・ターナーが登場した。
どっと沸き上がる場内。グラハムの曲でも違和感なくジョー・リンはこなす。
Rainbow時代よりもずっと声が出ている。細部の歌いまわしはうまくなっていた。
私は25年ぶりでジョー・リンの生歌を聴いた。その事実だけで感動する。
ジョー・リンがシンガーとして進化していたことに、背筋がゾクゾクした。

「Catch The Rainbow」は、ライブ通りに、グリーンスリーブスから入った。
中間部のギターソロ部分も、重低音のライブ盤そのものだった。
アレンジャーは、ライブ盤をも聴いて、どのようにすればより効果的かと模索したのだろうか?
だとしたら素敵だ。
終盤の、♪Catch the rainbow〜、Make it to the sky〜、Let it shine!
と来た時に、ジョー・リンが手を前に差し出した。観客に歌えと示しているのだ。
私は歌おうとしたが、クラシックの演奏会場っていう重い雰囲気から、“Shine!”と歌えなかった。
ジョー・リンは、一瞬あれっという表情をしたが、ひるまずに歌い続けた。ごめんよ〜、勇気がなくて。(歌詞はテキトーです)

「Gates Of Babylon」は本当に素晴らしかった。
ジョー・リンの歌はなかったが、中間部のリッチーでのギターパートは、多彩な楽器が演出していていた。
ホーンセクションが2小節奏でたかと思うと、その後のメロディをヴァイオリンが引き継ぐ。
さらに今度は木管楽器が続けるといった具合で、アレンジの妙を感じた。
どの楽器が鳴らせるのかわからない、スリル!!
楽器や曲調の変調を感じさせながら、メロディも追わせるという、大胆な試み。
ヘタをすると、バラバラになってしまうのを、リスクも顧みずにチャレンジした姿勢を買いたい。

その間、ホルンとコントラ・バスは低音を鳴らせっぱなしだ。
4台のホルンと7台のコントラ・バスという、低音重視の編成。さらに打楽器は7人もいる。
これって、倍の人数じゃないだろうか?
Rockをオーケストラで再現するには、リズムや重低音が手薄になってしまうのをカバーしていた。
個人的には、この1.5倍あればもっと良かった。
が、個性的な演奏が気に入ったので、もう一度聴いてみたい。
コンサート・マスターの豊嶋康嗣氏がラストのヴァイオリンを奏でた。叙情的で切なく美しく、涙が出た。
一夜限りの儚い夢である、今夜のライブを象徴しているかのようだったので。

「Weiss Heim」は、インストだけあって、小奇麗にまとまっていた。
いかにもオーケストラ然としていた。遊び心がないとつまんないな。

「Rainbow Eyes」は、中間部のフルートが効いていた。
ジョー・リンはバラードを歌わせてもうまい。
ラストのフルートへのヴァイオリンの絡みがカッコ良かった。

コージーへの追悼
ここで、コージー・パウエルへってことで、チャイコフスキーの「1812年」が始まった。
両壁には、コージーの画像が映し出されていた。
大砲用の大太鼓がコントラ・バスの後ろに移動して、大音量で何発も打ち鳴らして爽快だった。
ここぞとばかり、打楽器が頑張っていた。
どうやら、16分ある曲の13分過ぎ、コージーがドラムソロに使用していた部分だけだったようだ。
けれど、始めてコージーのドラムなしの演奏を、それも生で聴けて、原曲も迫力あるんだなと、ちょっぴりううれしがっていた。

休憩タイム
ここで、15分間の休憩。
私は会場内でなくしたと思われたチケットを探した。
というのも、開演前、到着して席に着こうとしたら、自分の席に誰かの荷物が置かれていたからだった。
隣りの人に、「この荷物は?」と聞くと、「男の人のです」との返事が。
そんなはずがないと、チケットを探したら、みつからない。どこかへ行ってしまった。
が、すぐに「どうかしましたか?」と、荷物の持ち主が戻ってきた。私のチケットがなくても、彼のチケットがあったので、見たら“RB”と書かれていた。
私のは、確か“B”だけ。
なぜだろうと思っていたら、左隣にいた女性が「それは右のBじゃないの?」と言ってくれた。ここは左側だったのだ。
「すみません、右のBだったみたいですね」と言い残し、彼は去って行った。
その間、私の頭は「チケットどこへ行ったんだろう??」に占拠され、あっけに取られて見ていた。かろうじて「いいえ」と言えただけだった。
はぁ〜、左隣の女性がいてくれて、良かった。。。
で、やっぱりチケット、ないや。

休憩後は、「威風堂々」で始まった。あまりにも有名な曲だ。
今宵の指揮者、竹本泰蔵氏は、小柄だが、ジョー・リンと同じくらいある。170cmくらいだろうか。
踊るようにリズミカルに振っていた。
この日の演奏でわかったが、重低音の堂々たる演奏が得意と見た。
Yngwie Malmsteenが日本フィルハーモニー・オーケストラと演奏した時も、彼が振ったのだ。
繊細さはないが、ダイナミックさはある。ジャンルに捉われない柔軟さがある。
彼が指揮者として選ばれたのがわかるような気がした。

「威風堂々」が終わると、またジュディ・ガーランドだ。
ここからが、ジョー・リン自身の歌のによるレインボー幕開けだ。

ジョー・リン時代のRainbow
「Spotlight Kid」「Stone Cold」と続く。
無難なアレンジで、冒険が減ったように思う。その分まとまりはいいが、おもしろくない。
それなのに、リズムが明確でないから、歌を合わせるのがむずかしそうだ。もっと歯切れがほしい。
ジョーは自分の持ち歌のためか、遅れることなく完璧に歌った。さすがだ。
「Stone Cold」のサビで、ホルンとコントラ・バスが掛け合いをするようにベースラインをなぞっていたのはおもしろかった。

「Can't Let You Go」では、ずっと待機中だった、パイプオルガンの女性のソロで始まった。
長調で始まったのが、急に短調になり、中世の音階になった。その辺りの厳かな雰囲気がいい。デイブ・ローゼンタールも教会で弾いたっけなぁ。

ノリノリだったのが「Stranded」だ。
今日のセットリストの中では、ハードである。シンプルな重低音のリズミカルな演奏に乗って、ジョーが歌う。
サビの“Stranded”で、半数以上が拳を振り上げ歌う。もちろん私も歌った。「Catch The Rainbow」の借りが返せて良かった!
何度か一緒に歌っていると、Rockのライブのような一体感が生まれてきた。
隣りの男性が「ジョー!!」と叫んでいる。クラシックなんだけど、Rock。。そんなおいしいとこ取りだった。

ジョー・リンのMC、「最後は、僕が最初に出会った曲です」と、「I Surrender」を演奏した。
勢いよりも、丁寧に演奏している感じだった。
ノリの面では今イチだった。これは原曲の方が良かった。
だけど、ジョー・リンにとっては原点で、Rainbowの中で大切にしている曲なんだろう。

曲が終わり、指揮者・オーケストラの面々、ジョー・リンは、ご挨拶をした。
会場は割れんばかりの拍手。それと歓声。クラシック向けの会場だからなのか、拍手がよく響き渡る。みんなスタンディング・オベーションだ。
クラシック演奏者たちは、こんな熱のこもった拍手と歓声を聞いたことがあるのだろうか?
ジョー・リンは、何度も手を広げて挨拶をし、「This is my best time in my life」と言った。生涯最高の時。。
そして、手を目に当てて、涙をぬぐっていた。歓喜のあまり、泣いていたのだ。
自分が主役になってライブを成功させ、観客を満足させ、ほっと安堵したと同時に襲った、歓喜の涙だ。思わず私ももらい泣き。。

アンコールは。。
アンコールは「Maybe Next Time」
リッチーの現在の音楽形態であるBlackmore's Nightを最も色濃く感じさせる曲。
これもオーケストラだけで演奏していた。またも、コンサート・マスターの豊嶋氏の哀愁のヴァイオリンが胸に迫る。
80年代初期には、この曲を形を変えて何回も聴くとは思いも寄らなかったなと、特別の感情を持って聴いた。

アンコール2曲目は「Street Of Dreams」
Blackmore's Nightの新曲にも収められているせいか、キャンディスがまるで亡霊のようにつきまとってデュエットしていた。
彼らの最後のアルバムとなったバージョン、Blackmore's Nightのバージョン、そして今聴いているバージョンが渾然一体となって私に迫り来る。
“Do you remenber me〜”のフレーズが、私にこの夜のことは忘れないようにしたいと誓わせる。
頭の中が、ずっと好きだったRainbowのことでいっぱいになって、深くて静かな感動を呼んでいた。

ありがとう、ジョー・リン。
ライブで聴けて良かったよ。
何回も出たり入ったりしたカーテンコールでの、あなたの誠実さと素直な対応は、ずっと忘れないよ。