Blackmore's Night

Village Lanterne




Blackmore's Nightの5作目、Village Lanterneが2006.1.25に発売された。
最初はぱっとしないが、聴き込むほどに素晴らしさが実感される!
発売元はさておき、今までと変わらぬブラナイ節が展開される。
前作の『Ghoast Of Rose』よりさらに1段進んでストラトを使用している。

1聴して感じたのは、キャンディスの歌唱力の向上だ。
新作を出すごとに表現が豊かになって、儚さ、哀愁さも歌い分けられるようになってきている。女の芳香さえ感じられる。華がある。
今作はそれに余裕が加わった。貫禄と言ってもいい。今までいっぱいいっぱいだった表現を、さらりとこなしているのだ。
精神的な安定からなのか、年齢的なものなのか、各地でライブをこなした実績からなのかは不明だが、“歌姫”としての素養を自らの手でもうひとつ加えたのだ!
Child In Timeは、ライブ以上の堂々たるパフォーマンスだ。

サウンドは、全体的にシンフォニックになったようだ。音の厚みが増している。
背景に効果的に流れる壮大なシンセが心地いい。
ルネッサンス音楽の比重が減った分、ストラトが増えている。


1 25 years 中近東風なイントロから始まる、Blaclmore's Nightの典型的な曲。
期待を裏切らないし、上回ったりもしない。安心の1曲といったところか。
2 Olde Village Lantarne アイリッシュを思わせるシンセによるリズム。エンヤにも通じる。
本作品の新しい面(シンフォニックなリズム)がこの曲に集約されている。
キャンディスの声は癒しのように神々しい。
タイトルナンバーになったこの曲のメッセージの中に“故郷へ連れ帰ってくれる”“旅の終着駅”とあり、リッチーはこのアルバムでひとまず制作活動を休止してしまうのでは?と懸念する。
なにせ、『希望と家族と愛と友情という暖かみを与えてくれる』とあるのだ。考えすぎならいいが。。
3 I Guess It Doesn't Mtter Anymore 軽快なリズムに乗って、キャンディスのボーカルが冴える。キャッチーでノリがいい。All For One系。
ちょっとマイナーなリッチーのストラトが魅力的な佳曲。
4 The Messenger インストナンバー。
哀愁が漂う。ここでもシンセを効果的に使い、楽曲としての質を高めている。
5 World Of Stone イントロの男性コーラスは嫌いだが、中盤のshawnの演奏は素敵。
6 Faerie Queen キャンディスが力を抜いたはっとする歌声を聴かせてくれる。
リッチーのギターも気取らずさりげなくサポートし、よく合っている。
後半は、東欧の町並みでのフェスティバルのように、アクティブで、にぎやかなギターソロが繰り広げられる。
7 St. Teresa イントロのギターソロが歌うように、語りかけるように優しく奏でられて、とにかく素晴らしい。
その後のドライブ感のあるRock調の歌と演奏は、ルネッサンス風Rockと申すのか、一風変わっている。
リッチーのエレキでのソロは、RainbowというよりPurple。
shawnを抜いて男性ボーカル(ここでジョーリンを使えって!)にすれば、立派にRockとして通用する。キャンディスのために、アイドルがRockを歌ってみましたみたいに仕上がったのが残念。(がんばってはいるけど)
8 Village Dance 大先生の軽やかなギターの舞が聴ける。風の吹く野原に咲き乱れる花のよう。癒される。
9 Mond Tanz / Child In Time アコギでの作品だったMond Tanzがシンフォニックになって、楽しめる。
Chaild In Timeはキャンディスに似合う。朗々と堂々と歌いきるのはライブと同じ。
Sister Of The Moonのスキャットも素晴らしいのだが、それ以上にバックに流れるリッチーのギターが聴き所。

最後のキャンディスの大げさな笑いは、「パロディだよ」と示しているのだろう。
10 Streets Of London Village Lanterneには、2本の流れがあると思う。“癒し”と“土着”だ。
この曲は癒しの方。悪くはないが、軽く流れていってしまう。
11 Just Call My Name(I'll Be There) 軽快だが、やや1本調子。もうちょっとひねりがあればもっと良くなると思う。
12 Olde Mill Inn 街中、あるいは居酒屋で群集が集まって陽気に歌っているようだ。
手拍子とギターと太鼓とベースとマンドリンのような音色の楽器の構成。
リッチーは仲間たちと集まってジャムるのが本当に好きなんだな。
13 Windmills いかにもBlackmore's Nightらしい曲。
アコギとキャンディスの歌だけなのが、シンプルで好きだ。
14 Street Of Dreams キャンディスによるStreet Of Dreasは思いの外いい!丁寧に歌っている。
こんなにいい曲だったのだろうかと、びっくりしている。
Village Lanterneの中では雰囲気が違い、異彩を放つ。リッチーのギターは昔のまま。
15 Once In A Garden 日本のみのボーナストラック。
ブラナイ特有の3拍子で、安心して聴いていられる。
16 Street Of Dreams (+Joe Lynn Turner) こちらは、ジョー・リン・ターナー参加の初回限定版のボーナストラック。
デュエットのように、1フレーズずつ交代で歌うのが良かったな。ジョーリンの声がキャンディスにかき消されているのが何とも残念。
あとからかぶせたのだろう。


Blackmore's Nightだから、リッチーだからという思い入れが今回も強い。
リッチーのフレーズのひとつひとつが尊いものに思えて涙する。
音楽を聴いてまだ感動できる自分をうれしく思う。もうこうなったら、最後までリッチーについて行く!
長年リッチーファンを自称する人なら誰でもそうだろう。
還暦を越えたリッチーがいつまで音楽活動を続けてくれるかは不明だ。
ある程度財を築いているし、知り合いの中には隠居生活をしている者も多いだろう。
が、音楽への飽くなき探求によって、今回も珠玉のリッチーならではのアルバムを届けてくれた。
びっくりすることに、キャンディスの成長もあって、新作を出すたびに進化しているのだ!

ちょっとずつ、守りに入らずに、自分のやり方で着実に追求する音楽に近づいていく。さらに、ファンの希望も取り入れる。
リッチーが年齢を重ねて柔軟になったかどうかは不明だが、かつての栄光(失礼^^;)を葬ったままBlackmore's Nightを始めたのが、ここにきて過去との融合を試みている。
ネタ切れとは思わない。
どちらも捨てがたいと判断したのだろう。

ストラトをこれだけ使うのなら、いっそのこと。。というのは、私も思う。
Street Of Dreamsに、もう一歩踏み切れない中途半端さが感じられるからだ。もっとパンチがほしい。
ブラナイのアルバムだから、Rainbowを期待してはいけないとわかっちゃいるが。。
私もこのままブラナイで満足して枯れたくないという意地があるのだろう。
リッチー、たまにはイベント的でいいから、再結成を考えてくれないかなぁ。
2006.2.4