「たかがフォーク・されどフォーク!」



 ここで述べるフォークは、荷役などに使用するフォーク・リフトのことで、食事に使うフォークのことではありません。
 私が実際に見た、フォーク・リフトに関する不安全行動や災害事例を初めに述べ、次にフォーク・リフトに関する全国の死亡事故についての調査結果を報告したいと思います。

1 私が見たり、経験したこと
(1)フォークリフトを踏み台に使う
 今年の春のことです、安特の指定を受けた会社の役員とお会いするためその工場を訪れました。
正門を入りましたが受付が分からずにウロウロしていると、トラックヤードに大型のトラックが止まっているのに気がつきました。
 近づいて見ますと、なんと、フォークリフトのフォークにまたがった作業者をトラックの荷台に載せるために、フォークリフトを移動させている最中ではありませんか。この作業者は保護帽も被っていませんでした。フォークから振り落とされたら労働災害です。 
このような不安全行動の積み重ねが、労災多発につながるのではないでしょうか。リスクをリスクとして認識できないトップの姿勢に根本の原因があると思います。(図1参照)




図1フォークを踏み台に

(2)フォークリフトのフォークに乗り移動
 東京浅草の三社祭りを見物に出かけた時のことです。浅草観音は有名なお寺ですのでご存知の方が多いと思いますが、その境内の浅草観音に隣接して浅草神社があります。この神社の祭礼が江戸三大祭の一つの三社祭りです。閑話休題。

 「邪魔だ、邪魔だ」ねじり鉢巻で威勢のいい兄いが、フォークの上に跨って、フォークリフトでやって来るではありませんか。兄いはフォークリフトの先導でもしているつもりなのでしょう。怖い怖い。

(3)フォークの先端で踵を骨折
 トラックの発車時間がせまって、トラックヤードは大混雑でした。リーチ型フォークリフトが後退してきました。後方で待機していたフォークリフトのフォーク先端に作業者の踵が突き刺さりました。
 救急車に同乗して病院に向かう途中、車のわずかな振動にも漏らす、被災者の苦しそうなうめき声、今でも私の耳に残っています。
 被災者がもっとよく、後方を確認していれば。
加害者がフォークを下げて待機していれば等々、
悔やんでも悔やみきれません。(図2参照)


図2.フォークの先端が踵え

2.フォークリフトによる死亡災害
 フォークリフトによる災害が、どのていど発生しているかを調べてみました。平成13年までしかデータが入手できませんでした。また死傷災害については、データが入手できませんでした。

フォークリフトによる死亡災害 全国の労災による死亡災害
H11 67 1,992 3.3
H12 63 1,880 3.3
H13 52 1,790 2.9
合計 182 5,662

(注)%は?*100/?
表1.フォークリフトによる年度別死亡者数


フォークリフトによる死亡災害は、全国の労働災害による死亡の約3%を占め、低い率ではありません。

(2) フォークリフトによる業種別の死亡災害   
(単位:人)

業  種 H11 H12 H13
製造業 35 23 20 78 42.8
運輸交通業 11 13 28 15.4
商業 11 26 14.3
建設業 18 9.8
貨物取扱業 14 7.6
清掃業 3.3
農業 1.6
その他 5.2
67 63 52 182 100.0

表2.フォークリフトによる業種別死亡者数

 私の予想では、建設業、運輸交通業に死亡災害が多発しているのではないかと思っていましたが、案に相違して、製造業が全体の死亡災害に対し、約40%を占めていました。

(3)フォークリフトの製造業での型別死亡災害
(単位:人)

事故の型 H11 H12 H13
はさまれ・巻き込まれ 13 6 5 24 31
激突され 5 7 4 16 21
転倒 4 2 6 12 15
崩壊・倒壊 3 4 2 9 12
墜落・転落 4 2 2 8 10
飛来・落下 4 2 1 7 9
爆発 1 0 0 1 1
交通事故 1 0 0 1 1
35 23 20 78 100

表3フォークリフトによる製造業での型別死亡災害 

 フォークリフトによる業種別死亡災害の約40%を占める製造業のなかでは型別に見るとはさまれ・巻き込まれが多いことが分かります。これらがどのような状態で起こったのか、次章で見ていきましよう。

3.フォークリフトによる死亡災害事例

(1)はさまれ、巻き込まれ−1

図3マストとヘッドガードにはさまれる−1

フォークリフトの積荷の荷崩れを直すため、運転席から体を前方にのり出して、荷役操作レバーが体の一部に接触し、マストとヘッドガードの間にはさまれ死亡したものです。(図3参照)

(2)はさまれ、巻き込まれー2

図4 マストとヘッドガードにはさまれる−2


 フォークリフトを運転していた被災者がエンジンをかけたまま運転席をはなれ、マストと運転室ヘッドガードとの間を通ってパレット上に昇降しようとした際に、マスト傾斜用操作レバーに身体の一部が触れ、マストが後傾して、マストとヘッドガードとの間に頭部を挟まれ死亡したものです。(図4参照)


(3)はさまれ、巻き込まれー3


図5 マストとヘッドガードにはさまれる−3

 ダンボール箱の片付け作業をしていた被災者は、前方の棚の空場所を探すため、フォークリフトの運転席で立ち上がり、ヘッドガードから顔を出していたとき、マスト操作のレバーに左足が触れて、マストを後傾させたため、マストとヘッドガードの間に首をはさまれ死亡したものです。(図5参照)

(4)はさまれ、巻き込まれー4



図6 積荷とバックレストの間にはさまれる

 被災者は積荷のずれを直すため、積荷とバックレストの間に入ったところ積荷が崩れ、頭部をはさまれて死亡したものです。(図6参照)

(5)墜落・転落



図7二階から転落

 フォークリフトを使用して製品を2階の物品揚卸口の端に揚げ、運転席を降りて2階作業床で搬入作業をしていたところバランスを崩し、1階コンクリート床に墜落して、死亡したものです。
 この事業所は安全管理特別事業場に指定され、私が改善計画の作成や、その後の指導にもあたったので、印象深いものがあります。(図7参照)

4.どのような対策を考えたらよいのか
 製造業でのフォークリフトの死亡例は、はさまれ・巻き込まれが多く、その30%を占めています。
 しかも、その事例の多くはマストとヘッドガードにはさまれたケースが顕著です。また、レバー操作の誤りがあります。
その対策としては次のようになるのではないでしようか。
(1) マストの動作範囲に人がいたときは、マストが動かない
ように、本質安全化の対策を施してください。
レバー等の操作装置に身体の一部が触れ、誤操作をする場合が多いようです。誤操作防止のために操作装置の人間工学的配慮をしてください。
マストとヘッドガードの間には人の身体が入らないように、網を張る等の対策を考えてください。
(K6作業設備の安全化)
(2)作業手順書を作ってそれを守らせてください。
(K1作業手順の定め方)
(3) 作業手順にもとづき指導、教育を徹底してください。
(K4指導・教育の方法)
(4) 墜落については、前記の事例とは異質ですが、私の実
体験ですので、あえて記入しました。
 2m以上の高所での開口部は、手すりを付けるか、安全帯を使用するようにしてください。
(K6作業設備の安全化)
(K4指導・教育の方法)

5.参考資料
(1)新最近の労働災害 
厚生労働省労働基準局安衛生部編著
日本労務研究会刊(H14)
(2) 送検事例と災害事例        
労働調査会編著
労働調査会刊(H13〜H15)
(3)労働災害イラスト100      労働事例研究会編
                  労働事例研究会刊(H14)
(4)安全衛生情報センター(中災防)
HP・・・ http://www.jaish.gr.jp/
(5) フォークリフト運転士テキスト    労働省安全課編
                         中災防刊

―以上―


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