1.標準の哲学 橋本毅彦著 講談社選書メチエ  

(1)標準化の歴史は互換性から

 ネジとネジ穴に互換性がなかったら、大変使い難いものになったでしょう。太平洋戦争中、三菱重工のゼロ戦工場を見学したある大学の教授が、「通路に落ちているネジに刻印が打ってあり、どこのネジかすぐわかるようになっていた。品質管理がよく行き届いている。」と感心して話されたのを、聞いたことがあります。どこかおかしくありませんか!50年前には、日本にも互換性という考え方が無かったのです。このような不便を解決するために、材料の標準化が始まります。

 

(2)方法の標準化

 次の段階はI.Eの始祖でレンガ積みの科学で有名なテイラーの出現による、作業方法の標準化です。これらが流れ作業と結びついて、フオードシステムが誕生します。

 

(3)製品の標準化(国家による標準化・・・デジュレスタンダード)

 製品の標準化が、兵器の大量生産から更には家庭製品まで、廉く、大量に供給するために、標準が決められてきます。

(4)製品に個性を(デファクトスタンダードへ)

 製品や方法の単純性に飽きた人々は、個性を要求してきます。「すべての財布と目的に」合った物や方法が要求されます。

 この難しい課題に対して、標準は市場競争で決めようというのが、デファクトスタンダードです。マネージメントシステムやパソコンのOS(Windows)がその代表例です。

 以上で「標準の哲学」の要約をしましたが、いわばこの本は哲学ではなく、「標準の歴史」です。文章は学者特有の書き方でやや読み難いところもありますが、現在、議論の対象となっているグローバルスタンダードを考えてみる上で、参考になるのではないでしようか。

2.亜細亜新幹線 前間孝則著 講談社文庫

 太平洋戦争前夜、東京から下関へ、さらに海底トンネルをへて北京へ3日で結ぶ弾丸列車の計画が、着工されていた事をご存知でしょうか。私は本書を読むまで知りませんでした。この計画は新丹那トンネルの掘削と鉄道用地買収を残して、戦争の激化で中断されました。

 しかし、この計画は東海道新幹線として見事に蘇りました。元国鉄技師長島秀雄とその父安次郎ら国鉄マンの夢と情熱を賭けたノンフィクション物語です。

(1)線路幅の広軌と狭軌の問題(JRと営団地下鉄の相互乗り入れはなぜ出来ないのか)

(2)関が原降雪問題と鈴鹿トンネルルート、関西本線ルート

(3)電源周波数の50C/Sと60C/Sの問題(東海道新幹線と東北新幹線の相互乗り入れはなぜ出来ないのか)

(4)東京の始発駅問題

上記のような今日でもネックになっている課題が書かれていて、大変に面白い物語です

 著者の前間孝則氏は石川島播磨で20年間ジェットエンジンの設計に従事された後、作家に転進された方で、私のよんだ著作だけでも次の大作があります。

* 「マン・マシンの昭和伝説」 講談社文庫

* 「富嶽」 講談社文庫

*「ジエットエンジンに取り憑かれた男」講談社文庫    「戦艦大和誕生」 講談社文庫

*「YS-11講談社文庫

*「ハイテク開発の魔術師たち」講談社文庫

いずれも、“物づくり”に命をかけた技術者たちのノンフィクション物語です。

以上


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