新・闘わないプログラマ No.15

鬼の首


アメリカに次いで、日本でもマイクロソフトに対する公正取引委員会の調査が入り、けっこうあちこちで話題になっていますね。WebやNetNewsやらでも「ざまあみろ」とか「いいきみだ」とか、あと日本法人の社長のN氏(って隠すほどのことも無いですね)の人格にからめて罵ったり、もうここぞとばかりの言いたい放題で溢れています。
私もそれらの意見に同意出来なくも無いのですが、でもあまり品の無い罵詈雑言は、書いた人の品性を疑われるだけのような気がします。まだ、アメリカでさえ最終的な結論が出ていないのですから、変にはしゃいでも、あとで恥をかくだけかも知れませんよ。

私企業たるもの、利益を上げようと努力する事は賞賛されこそすれ、非難されるすじあいのことではありません。まして、この業界は政府の規制の下に置かれている業種ではありませんから、公共の利益がどうこう、ということも無いわけです。マイクロソフトが独占に近い地位を今日占めているといっても、例えば、電気会社や鉄道会社のように法的に独占が認められている業種とは、自ずから性格が異なっています。嫌なら、その会社の製品を使わなければいいだけですから。
まぁ、そうは言っても、公正な競争の無いところに、この業界の健全な発展も無いわけで、そこは、独占禁止法と公正取引委員会にがんばってもらうしかないわけですね。

それはそれとして・・・
私もやっぱりマイクロソフトは嫌いです。だからといってここで
「日本法人の会長のF氏は鉄道オタクだ」
とか、
「社長のN氏はみかん星人を怖がっている」
とかいう品の無い攻撃はするつもりはありませんです(^^;)

マイクロソフトの製品を基幹業務で使おうとしたとき、私が一番恐いと思う事には、向こうの顔が見えない、ということがあります。どういうことかというと、実際に製品を設計し、作っている人たちと、我々ユーザーとの間が離れすぎてしまっているということです。どんな思想でこの製品を作っているのか、そんなことがこちら側に伝わってこないのです。
私は、入社後2年くらい、IBMのメインフレームで通信やデータベース関係のシステムを作っていたのですが(アセンブラとOSのAPIを使って)、APIの仕様に疑問を持ったときや、予期せぬ動きをしたときなど、IBMの担当SEが直接開発者に問い合わせて、すぐに答えを持ってきてくれました。この場合、私と製品を開発している人との間には、うちの事情にも詳しい担当SEが一人入っているだけなので、結構話がスムーズに行きました。
似たようがことが、相手がマイクロソフトですと簡単には行きません。一応、マイクロソフトも(お金を取って)サポートサービスを行っていますが、はっきり言ってお金を取ってやるようなサービスの質じゃ無いです。
「メインフレームと違って単価の安いPCやワークステーションのサポートなんてそんなものだ」という話もあるのですが、必ずしもそうでもありません。PCのソフトウェアであっても、昔からあるコンピュータメーカーの製品の場合、結構まともなサポートを受けられていますし。

マイクロソフトの製品には「思想」が感じられません。いや、1つだけあるな、「売れりゃ、どんなことしてもいい」という「思想」が。私も、以前のコラムで何度か書いていますが、きちんとした設計思想が無いんですよね。そのために、場当たりで泥縄のシステムになってしまっています。
卑近な例ですが、エクスプローラでファイルやディレクトリ(あれ? Macintoshの真似して最近は「フォルダ」って言うんだっけ?)をドラッグ・ドロップしたときにどうなるか、っていうのがありますよね。コピーされる場合と、移動される場合と、ショートカットが出来る場合。私は今でも、その違いがよく分かっていないので、たいてい「Ctrl」とか「Shift」とかを押しながらやってます。そういえば先日、あるフォルダを移動させようとしてドラッグ・ドロップしたらなぜかショートカットが出来てしまいました。同じドライブ内なので「移動」になるはずなのに????としばらく悩んでいたのですが、よく見たらそのフォルダの名前が「なんとか.com」、エクスプローラは実行ファイルだと勘違いしてしまったようです。でも、フォルダは実行ファイルにはならないと思うんだけど(^^;)
WindowsNTなんか、UNIXカーネル(と出来ればX)上で作ってくれればよかったと思うのですがねぇ。「闘うプログラマー」は読みましたけど、あんな大変な事やるんだったら、似たような機能を持つものがあるんだから(しかも、結果としてNTのカーネルの方が劣っているのは明らか)それを使えばもっといいものになったような気もします。でも、それをやったらマイクロソフトでは無い、のかも知れませんね。

何にせよ私が望むのは、公正な競争のある業界と、製品に対する選択の余地です。
さてさて、アメリカの司法省と、日本の公正取引委員会は「鬼の首」を取ることができるのでありましょうか。

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