新・闘わないプログラマ No.469

カギのかかる……


「あのさ、あそこの部屋まだ空いているじゃん。だからこのマル秘書類の保管に使いたいんだけどいいよね?」
「ダメですよ。あそこはサーバ室なんですから。だいたいにして常時カギがかってますけど」
「だからいいんじゃん。この書類って厳重に保管しておかないといけないものなんだよね。だからあそこの部屋に目を付けたわけで」
「いやあ、それは……サーバ室は倉庫でも金庫でもないんですから」
「まあまあ、そうかたいこと言わんと。書類の出し入れで出入りするのは部長と課長とオレと、あと担当者2人の計5人だけだし」
「え? そんなにですか?」
「そんなわけで、合カギを5本用意しておいてね」

某社において「情報セキュリティなんちゃら規程」とかいうのが制定されたことに伴い、サーバ等はすべてカギのかかる専用の部屋に設置しなければならないことになって、それで急遽作られたのが件のサーバ室です。
幅が約3メートル、奥行きが約6メートルの細長い部屋で、今のところラックが1台あるだけなのでスペース的にはまだまだ余裕があります。今後ラックが増えることも考慮に入れて少し広めに確保していたわけですが、そこに目を付けられてしまいました。

「いやあ、いくら空きスペースがあるから、カギのかかる部屋だからって、まったく違う目的のためにあそこのサーバ室を使うのはちょっと問題があるんじゃないかと思うんですが」
「いいじゃん、別に。こっちもこの書類はカギのかかるところに保管しておけ、って上から言われてるんだよね」
「でもですよ、あそこのカギはサーバのお守をしている我々も持っているわけで、そこにマル秘書類なんか保管していたら、我々だってそれを見れちゃうことになってしまいますけど?」
「見たいの?」
「別に見たくありません。でも後になってから『お前、あのマル秘書類見ただろ? カギ持ってるしな』なんて疑われたらいやですよ」
「まあ、いいから。そこは責任持つから、とにかく合カギ5本な」

押し切られてしまいました。それからというもの……

「あのさ、あそこの部屋空いているじゃん。だからこの端末(←マル秘情報が見れるので厳重な管理が必要らしい)を設置使したいんだけどいいよね? 合カギある?」
「あのさ、あそこの部屋空いているじゃん。だからちょっと秘密の打ち合わせに使いたいんだけどいいよね? 合カギある?」
「あのさ、あそこの部屋空いているじゃん。だからこの機械(←高価なものらしい)の保管に使いたいんだけどいいよね? 合カギある?」
「あのさ、あそこの部屋空いているじゃん。だから……」

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