新・闘わないプログラマ No.102

DOSを知らない子供たち


私はノートパソコンを毎日持ち歩いている関係上、いろいろ情報を得るために、いわゆるモバイル関係の掲示板をいくつか覗いているのですが、よく「非純正のCD-ROMドライブで、OSの再インストールとか、新しいOSを入れたいのですが、どうしたらいいでしょうか」という質問に出くわします。
いわゆる「サブノートパソコン」と呼ばれる、A5〜B5サイズ程度の持ち運びに便利なノートパソコンは、小型化するために通常CD-ROMドライブが内蔵されていませんし、ほとんどの製品が、CD-ROMドライブは別売りになっています。ところが、カタログに載っている「純正品」のCD-ROMドライブって高いんですよね。売値でも3〜4万円位のが多いんじゃないでしょうか。
この手のサブノートパソコンにCD-ROMドライブを付ける場合は、PCカードスロット接続になりますが、この種のドライブでも、安いやつを探せば1万円強でありますから、わざわざ高い純正品を買うのは馬鹿らしいわけですね、普通に使っている分には。ちなみに私も純正品じゃないやつを使っています。
ところがこの「非純正品」しかもっていないと、ディスクのリカバリを行ったり、OSの再インストールを行ったりするときに、困ることになります。こういったときにはハードディスクからOSを立ち上げることが出来ないわけで、別なメディアからOSを立ち上げる必要があります。この場合、一般的にはフロッピーかCD-ROMからOSを起動しますが、この場合、純正のCD-ROMドライブ用のデバイスドライバしかロードしませんから、純正品以外のドライブはそのままでは使用できません。
もちろん、OSのメディアががすべてフロッピーディスクで提供されているよなものだったら、OSのインストール時にCD-ROMが使えなくても問題は無いのですが、いまどきのOSでそういうものはきわめて稀ですから、それも現実的はありません。
まあ、そんなような事情で、上に挙げたような質問がよく出るのですが、これ、実は結構やっかいだったりします。基本的に、Windows系のOSだったら、とにかく、その非純正のCD-ROMドライブが使えるようにしたDOSの起動用フロッピーを作るのが一番なのですが、これがなかなか……

「○○を参考に、立ち上げ用フロッピーを作成したのですが、○○というメーカーの○○というCD-ROMが使えません、なぜでしょう」
「これだけじゃ答えようがありません。config.sysとautoexec.batの内容を見せてください」
「『config.sysとautoexec.bat』って何ですか? 難しいことを言われても、初心者なのでわかりません」
「ううむ、そうか、最近の人はconfig.sysって言っても知らないのか。フロッピーディスクのルートディレクトリに、そう言う名前のファイルがあるでしょう? それはテキストファイルだから、その内容を書いてください」

などというような話になって、しかも、CD-ROMドライブ毎にDOS用のデバイスドライバがあって、そのドライブがマイナーなやつだったりすると、パラメータの与え方が誰も知らなかったりして(所有者本人はマニュアルを持っているはずだから調べられるのだけれど、本人はその意味がさっぱりわかっていなくて、結局どうしようもない)、この手の話は大変だなあ、などと思ってしまうわけです。
まあ、もちろん「初心者」は純正品のドライブを買ったほうがいいのは言うまでもありません……けど、純正品って高いんだよなあ、どう見ても足元を見ているとしか思えん。
この手のCD-ROMドライブをDOSで使うときに厄介なのが、PCカード接続だ、ということもあります。PCカード接続のデバイスの場合、どんなものでも基本的には、PCカードのドライバ(これは実際には複数のドライバに分かれていて、接続するデバイスによっては必要があったり無かったりする)があって、その上(下?)で、個々のデバイスのドライバが動作するような構成になっている、ということですね。ですからCD-ROMドライブの場合、そのパソコンのPCカード用ドライバがまず必要で、それに加えて接続するドライブのドライバが必要になります。あ、あとCD-ROMの場合はmscdex.exeも要るか。
でもって、このあたりのことをconfig.sys(やらautoexec.bat)に記述するわけですけど、config.sysって何ですか、などと言われるととたんに脱力してしまったりします。

でも、よく考えてみたら、Windows95が出てから4年が経つわけで、「DOSを知らない子供たち」が沢山いるのも当然のことなのかも知れませんけど。その昔、1MBの壁に苦労しながら、UMBとかEMSとかHMAとかを駆使してできるだけコンベンショナルメモリーを空けようとconfig.sysやautoexec.batを弄ったのは……などと言うとおぢさん扱いされてしまいそう。
そういえば、職場で見ていても、ここ数年に新入社員で入ってきた人たちを見ていると、DOSのコマンドが使えない人が結構多いです。「そんなん、いちいちエクスプローラでしこしこやらなくても、コマンドを使えば一発じゃん」というようなことを結構やっているのがいます。もちろん、UNIX関係の開発をやっている人間は大丈夫なのですけど、そうじゃないと覚える機会がないのかも知れません。
でも、この間、こんなことがありました。
「なにかいいWindows95用のFTPクライアントソフトがありませんか?」
「ん? 何に使うの?」
「客先に行って、一時的にFTPを使うんです」
「それだけだったら、Windows95に付いているのFTPを使えばいいじゃない?」
「え? Windows95に標準でFTPなんか付いているんですか?」
「付いているよ、ただしコマンドラインだけど」
「もしかして、DOSプロンプトで使うやつですか? じゃあダメだ。私、DOSプロンプトは使えなんです」
ううむ、一応プロなんだから、それくらいは使えて欲しいなあ、などと思ったりもするわけですけど。そもそもそれじゃあ、ネットワーク関係の障害があったとき、どうやって調べるつもりなんだろ? pingもtrarcertもrouteもarpも……何も出来ないような気がする。

まあ、そんなこんなで、最近のワカモノはDOSも知らないのかー、などとおぢさん的発言に終始した今回のお話でした。でもまあ、DOSはフロッピーディスクで起動できる一番身近なOSでもあるわけで……でも、DOSはOSなのか、OSの体などなしているのか、などという根源的なお話もあったりするかも知れませんけど、そういう、進んで地雷を踏むが如き発言は止めておきます。何せ私はcomputer scienceなどというものをちゃんとやったことの無い、単なるシロートですから :-)

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