思ツタコト No.37

スペック


以前、ある人とパソコンの話をしていて、私が家にパソコンがあると言ったら、こんなことを聞かれました。
「あなたのパソコン、何メガ?」
さて、私はいったい何を答えたら言いのでしょうか?? 「何メガ」と聞かれてもなあ、だいたい何の値を聞いているんだ?? パソコンの重さかなあ。家にあるデスクトップは10kgくらいだから、ええとメガに直すと0.01メガグラムだなあ。あ、もしかして筐体の大さかも知れない、それなら、高さが0.0004メガメートル、幅が0.00022メガメートル、奥行きが0.00045メガメートルだし(←今わざわざ測った ←バカ)、それとも電源の電圧なら、0.0001〜0.00022メガボルトだし、いったい彼はどの値を知りたかったのでしょうか :-p
しかし、自分の持っているパソコンを自慢する人とか、愛着を持っている人とか、結構いるのですけど、私はその感覚がよく分からないです。そういう人って、結構高いパソコンを買っているのですけど、いまどきパソコンなんて2〜3年もしたらゴミ同然になってしまうし、「いいものを買えば、末永く使える」っていうのが全く通用しない世界ですからねえ。
件の人物も、その時点での最高スペックのパソコンを高いお金で買ったばかりで、それを自慢したかったようなのですけど、相手が悪かったのです、諦めてください。
私なら、デスクトップパソコンなら、どんなにお金をかけても10万円以下、ノートパソコンなら、フロッピーやらポートリプリケータやら増設バッテリ込みで20万円以下、ってあたりが目安ですね ←ただ単にケチともいう。

別にここでパソコンの話をするのが目的ではなくて、カタログスペックのお話をしようかな、と思っているわけです。なんか知らないですけど、カタログの数値を必要以上に重要視する人って多いですよね。
今ですと、デジタルカメラのCCDの画素数ですか? ビデオ関係だと水平解像度なんてのが話題になったりしてましたけど、どちらも要するに画像の解像度のお話ですよね。
私は昔から写真(銀塩フィルムを使ったスチル写真……と断らなければいけないかいな?)を撮ったりしてますけど、そういう目から見ると「解像度」=「画質」というのに、非常に違和感を感じてしまうのです。もちろん、銀塩写真の世界でも、レンズの解像度とかフィルムの解像度とかいう概念はありますけど、それは画質との関係はそれほど強くないのですよね。
銀塩写真での画質を決める要素としては、階調の豊かさとか、発色の再現性とか、そういうのからくる全体的な表現力を指していることが多いと思いますし、少なくとも私はそういう面で「画質」というものを捕らえています。
じゃあ、CCDを使ったビデオカメラとかデジタル(スチル)カメラとかの場合には、解像度が画質を決める主要な要素になっているのか、というと、私は必ずしもそうではないのではないか、と思うわけです。
初めてそう思ったのは、今からもう10年ほど前のことです。知り合いに、いろいろ変な実験をやる人物がいました。当時、確かSONYから、レンズ交換式の8mmビデオカメラ(not Hi8)が出ていました。Cマウントというスクリューマウントが付いていて、レンズを交換できるようになっているんですね。
このビデオカメラに、ビデオカメラ用のCマウントのレンズ(値段は確か1〜2万円)を付けて撮影した画像を見ると、まあ、いわゆるホームビデオカメラでとった、お世辞にも「画質がいい」などと言えない画像でした。とにかく、階調が無い。だから画面全体が立体感に乏しく、表現力のカケラも無いのです。
ところが、このビデオカメラに、アダプタを付けて、一眼レフ用のレンズを付けて撮った画像を見てびっくりしました。もちろん解像度は特によくならないですけど、階調が豊かで立体感がある。色再現性もいい。逆光になってもフレアが少ないせいか、画質が落ちない。特に逆光の場合、Cマウントの安いレンズを付けたときとは雲泥の差が見られます ←あ、「逆光で撮らなけりゃいいじゃない」なんて言わないでね、逆光はポートレート撮影の基本中の基本ですから。
あの画質の差を見て、ビデオカメラの画質が悪いのは、安物のレンズのせいが多分にあるのではないか、などと思い始めたわけです。

確かにメーカーとしては、カタログスペックにならない「レンズの質」などというものにお金をかけられない事情というのもわからないでもないですけど、みすみす画質を落とすようなことをやっているような気がしてならないのです。
10年前と今では違うよ、という意見もあるかも知れませんけど、光学系は10年前と今と、技術的にはほとんど差が無いと言っても過言ではありませんから、レンズ部分にかけられる予算が同じなら、昔も今も同程度の性能のレンズしか搭載できないと思います。
そう言う意味で「うまいなあ」と思ったのがSONYですね。ビデオカメラに「Carl ZeissのVario-Sonnerレンズを搭載!」とか言って、それなりに高い値段で売り出したことがありました。最近だと、デジタルカメラにVario-Sonnerレンズを搭載したやつもあるんですね。
Carl Zeissっていうのは、ドイツにある世界最大の光学機器メーカーで、ブランド力があります。私も恥ずかしながら、一眼レフ用のレンズではCarl Zeissのレンズを使っていますけど、もう30年も前に設計されたレンズでありならが、今でもトップクラスの性能がある、というような点ではすごいところがあります。
ただ、Carl Zeissのレンズだからと言って、他のメーカーのレンズと比較して性能がいいか、と言われると、それは評価の基準もはっきりしないし、異論も沢山あるので、とりあえず置いておくとして、SONYがうまいなあ、と思ったのはCarl Zeissのブランド力を利用したところなんですよね。「Carl Zeissのレンズ搭載」というカタログスペックによって(ある一部の人に対してでしょうけど)高くても買いたい、と思わせる効果をもたらした、というところなのです。
「レンズなんかにカネをかけても商売にならない」というのを、Carl Zeissのブランド力によって打ち破った、というところがSONYのうまいところだと思います。

というわけで、あのSONYのデジタルカメラ、いいなあ、などと思っているのですけど、先立つものが ←最近、こればっかり。

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