朝一番に始動した時、しばらくエンジンをかけずに久しぶりに始動してカンカン音が出る。
カンカンカンやカタカタという感じでカン高い音でエンジンの回転に比例して伴う精神的にいやな音でエンジンが壊れるん
じゃないかと一瞬思ってしまうのですがほとんどがラッシュアジャスター機構のエア混入による異音です。
ラッシュアジャスター機構とは本来、エンジンの吸気バルブと排気バルブには駆動されるカムシャフトとの間隙がいくらか
設けてあるのですが従来は部品の摩耗に伴い、メカニックが手動で隙間の調整を行っていたのですが、ここ最近の車のメ
ンテナンスフリー化と静粛性の追求に伴い吸気と排気のバルブの隙間を自動で調整する機構がシリンダーヘッド内に組
み込まれるようになりました。
この機構は古くから存在するもので特別、目新しい機構でもないのですがスバルではThe
Newレオーネのターボエンジン
「EA81」のみ採用されましたがこの時はOHV方式というカムシャフト駆動タイプのものに採用されていました。
この機構の作動はエンジンが始動すると発生した油圧が各通路を通りヘッドまで送り込まれラッシュアジャスターの中へ
充満してアジャスター内のバルブが持ち上がり隙間を常時ゼロにするようにします。
このアジャスターがへたってくると油圧を保持する力がなくなったりオイルの溜まる部屋にエアが噛むとバルブとロッカーア
ーム「このエンジンはバルブを駆動するのにカムシャフトがダイレクトにバルブを押すのではなく間にロッカーアームを入れて
テコの作用でバルブを駆動します。」との隙間が出来て激しい打音が発生します。
長期に渡りエンジンをかけない時にエンジンを始動して2,3秒で止まるものは問題ないのですが中古車で手に入れて前オ
ーナーのオイル管理が悪い車ですと内部にスラッジが発生してオイルの通路を閉塞してアジャスター本体の動きを悪くして
いるものがあり、通常ですとオイルラインに乗って一緒に巻き込まれたエアはアジャスター内のオイル室が充満すると自然
に過剰なオイルと一緒に噛み込んだエアは抜けて音は直ぐに止まるのですがこれが抜けずに異音を発したままとなり正常
なバルブの作動が出来なくなりエンジン性能の低下を招きますので、この状態になるとエアを抜く作業が必要となります。
左はラッシュアジャスター単品です。
右側画像のロッカーアームの先端の黄色の部分に隙間が出来て激しい打音が出ます。
対処法
エンジンオイルが規定まで入っているのを確認してからエンジンの回転を2000から3000回転位まであげて
15分から30分程度そのまま保持します。
この場合、回転を一定にしておくのがポイントですがアクセルペダルをずーと踏みっぱなしにしている間はエンジ
ンの音が少しずつ変化していくかを確認します。
当然ながら油圧計の付いている車両でしたら油圧が回転に対して上昇していくかを確認します。
油圧計の付いていない車「デジパネ車」はメーターバイザー内の油圧パイロットランプが消灯しているかを確認す
る事。
ラッシュアジャスター及びオイルポンプ系統が正常でしたらこれで音が止まりエンジンの調子も変わるはずです。
日常使用されている方の車でしたらほとんどの場合は上記の作業で解消しますが音が止まる時間は大体
、5分から30分位でまちまちですがこれで駄目な場合は下記へ。
上記の作業で止まらない場合はエンジンオイルを一回抜き替えてズームパワーのようなフラッシング剤をとり
あえず1本注入してから上記の作業を繰り返します。
注:フラッシング剤の使用はあまりお勧めではないですが場合に限り可!
この時にフラッシング剤によってオイルが希釈されますのでアナログ計プレッシャーメーターの付いているもの
はこの針の動きに注意しながら0になるようでしたら中断してください。
普通はオイルポンプが正常でしたら回転を上げている間は2,3キロ位までゲージが上がっているはずです。
その他の車両は油圧警告灯に注意します。
この作業で止まらない場合はフラッシング剤をもう一本追加して下さい。ほとんどの場合はこれで解消しますが
音が止まっても直ぐに再発したりする場合は残念ながらアジャスター自体の不良や通路の詰まり、ポンプの不
調が考えられますので下記を参照して下さい。
尚、この作業で解消した方は必ずオイルとフィルターを交換して下さい。
上記の作業で詰まりが解消されない場合はラッシュアジャスターを交換する必要があります。
音の出ている箇所だけ交換してもいいのですが先先の事を考えると全数を交換する事をお勧め致します。
VS、VRは8本、VXは12本必要です。これはユーザーレベルでは少し、難易度が高く、ディーラーでの交
換作業になります。
手順としましてエンジンを降ろさなくても可能でエンジン左右にあるヘッドの先にカムケースというカムシャフ
トを保持しているケースを脱着しての作業になり、先にタイミングベルト回りを分解してからタペットカバーと
カムシャフトケースを外します。
シリンダーヘッドは外さなくてもいいのでそんなに重整備でもないのですが場所的に邪魔くさいということで
す。
ついでにオイルポンプやオイルパン関係の整備をするなら、もしかしたらディーラーではエンジンを降ろす所
があるかもしれません。
アジャスター自体は一本¥4000位だったと思います。
他にタペットカバーのゴムパッキンや0リングと液体パッキンが必要ですがこの時に同時にカムシャフトのホル
ダーの0リングとオイルシールを交換して更にタイミングベトとウオーターポンプを交換しておけばしばらくトラ
ブルフリーで乗れると思います。
参考迄に実際に作業する場合の必要な部品を列記しておきます。
13272 AA000 | ガスケット/ロッカーカバー LH | 1 | VS、VR | |
13270 AA000 | ガスケット/ロッカーカバー RH | 1 | VS、VR | |
13272 AA010 | ガスケット/ロッカーカバー LH | 1 | VX | |
13270 AA010 | ガスケット/ロッカーカバー RH | 1 | VX | |
13271 AA002 | ワッシャ/ロッカーカバー | 13 | VX | |
13271 AA001 | ワッシャ/ロッカーカバー | 9 | VS、VS | |
13229 AA000 | ラッシュアジャスター | 8:12個 | VS、VRは8個、VXは12個 | |
13089 AA010 | カムケースとシリンダーヘッドの間の0リング「対策品」 | 2 | ¥180 | VS、VR |
13090 AA000 | カムケース0リング大 | 2 | ¥680 | VX |
13089 AA000 | カムケース0リング小 「1袋に4個入っています。」 | 1 | ¥680 | VX |
以上が最低必要なパーツですが下記がついでに行っておきたい推奨交換部品リストです。
13160 AA010 | タイミングベルト左側とコーションラベルのセット | 1 | ¥5680 | VS、VR |
13160 AA000 | タイミングベルト右側とコーションラベルのセット | 1 | ¥3860 | VS、VR |
13070 AA001 | タイミングベルトを張るテンショナー | 1 | ¥2320 | VS、VR |
13071 AA002 | タイミングベルトを張るテンショナーNO2 | 1 | ¥2320 | VS、VR |
13073 AA000 | タイミングベルトのアイドラープーリー | 1 | ¥1930 | VS、VR |
21110 AA026 | ウォーターポンプAssy | 1 | ¥8450 | VS、VR |
21114 AA000 | ウォーターポンプとクランクケース間のパッキン | 1 | ¥180 | VS、VR |
15066 AA000 | オイルポンプとクランクケース間のゴムパッキン | 1 | ¥470 | VS、VR |
オイルポンプ本体の0リング | 1 | ¥220 | VS、VR | |
13160 AA030 | タイミングベルト左側 | 1 | ¥5770 | VX |
13160 AA020 | タイミングベルト右側 | 1 | ¥3810 | VX |
13068 AA030 | タイミングベルト自動テンショナー | 1 | ¥4400 | VX |
13070 AA010 | タイミングベルトテンショナー右 | 1 | ¥3960 | VX |
13069 AA000 | タイミングベルトテンショナー左 | 1 | ¥4920 | VX |
13073 AA040 | タイミングベルトアイドラプーリーLH1 | 1 | ¥4490 | VX |
13073 AA020 | タイミングベルトアイドラプーリーLH2 | 1 | ¥4170 | VX |
21110 AA110 | ウォーターポンプAssy | 1 | ¥9920 | VX |
21114 AA000 | ウォーターポンプのガスケット | 1 | ¥130 | VX |
15066 AA000 | ガスケット/オイルポンプボディー | 1 | VX | |
オイルポンプ本体の0リング | 1 | VX | ||
806738040 | カムシャフトのオイルシール「左右同一です。」 | 2 | ¥450 | VS、VR、VX |
806945020 | カムホルダーの0リング | 2 | ¥190 | VS、VR、VX |
以上が筆者がついでに薦める部品ですが、気の利いたメカニックが作業すればついでに行っておく作業
なのですが最近のメカニックを見ていると単一な定期交換項目部品の交換ばかりをしている事が多いの
でユーザー側から見た側の整備が出来ていない所が多々あるようです。
一つの部品を脱着すればその周辺の部品にも目を配り、劣化していれば当然交換するのが現場での責
任だと思います。
上記に掲げた部品はタイミングベルト廻りを脱着すれば必然的についでにやっておこうという深層心理が
働くようなパーツばかりです。
ホース関係は後からでも比較的、簡単に交換出来ますので省いていますが。
一つの作業のみを達成して数ヶ月後にウォーターポンプから漏れたとなると2度手間になりますので、ユ
ーザーの財布とバランスしていけばいいのですがユーザー側は心理的に出来るだけ安く仕上げたいと思
うのが人情であり、必然的な事なのですが古い車は出来るだけトラブルになりそうな箇所はつぶしておく
のが調子よく維持出来るポイントだと思います。
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