UNTER− WERT 1999/04/16に更新

「・・・・・・。」 「こ、こ、たえたわ。はやぐくその剣をど、かじて・・・」 「・・・・・。」 「ねぇ゛!早くど、かして!」 「ダメだ・・・」 「が!?」 「・・・アナタは人を殺しすぎたそして、」 「ぞ、して・・・?」 使徒を殲滅することが今の僕の生きる全てだから「じ、やめ・・・」 ガシュッ 懇願も虚しくエヴァンゲリオンは女の胸の石を粉砕した。 その欠片は雨のジーナスに美しく散った。 「・・・やはり本人をおびき出すのが早いか。」
 使         徒、襲来     編  β      
「・・・まさか冗談が本当になるとはな。  まぁ、いい。今は聖杯の奪取が最高任務だ・・・・。」 戦いの一部始終を見ていた男はそう言い残すと闇に消えた。 ジーナスの中央の高台に城はある。 外見にも美しい城で、中も古代の美術品の数々が並べられている。 この城から美術品を盗み出そうと考える盗賊は多いが その強固な守りに大抵は断念する。 強行しても門までたどり着くのが関の山だ。 鉄壁の城と呼ばれる由縁である。 さてその大広間に今シンジは立っている。 すでに日は暮れ雨はやんでいた。 「お初にお目にかかります。シンジ=イカリと申します。」 「エイプ国王、タブス=ドルクレイド=ギリウムV世だ。  使徒を倒してくれたことをこの国の者のの代表として礼を言う。  ありがとう。」 「・・・いえ、別にただの私闘ですから。」 「私闘?では貴公は使徒に個人的な恨みでも?」 「陛下、僕はアナタの配下ではありません。  よってそのご質問にお答えする義務はございません。」 「な、無礼な!」 「いや、良い。そなたの言うとおりだ。  ではこの話はもうやめよう。」 「ありがとうございます。」 「なら、褒美の話はどうかな?」 「そのことについてなのですが・・・僕からの願いを聞いてくれますか?」 「ふむ、できる限りのことをしよう。」 「では、僕の望みは・・・」 ――どこから入って・・・ グハァッ! ――貴様ぁ・・・ ヌアアッ! ――し、侵入者だ! 宝物殿に行くぞ! 遠方から喧噪と死の悲鳴が聞こえてきた。 「!?」 「もう一匹いたのか・・・。」 「まさか、また使徒か!?」 「多分・・・そうでしょうね。  聖杯は宝物殿にあるのでしょう?」 「その通りだ・・・・本当にすまぬが」 「陛下!あの扉には封印の魔法がかかっております!  いくら使徒といえどもそう簡単に外せるモノでは・・・。」 「もし封印を解けなかったとしても  このまま使徒を野放しにして置くわけにはいかん。」 「・・・申し訳ありません。思慮の浅い考えを述べてしまい・・・」 「いや、よい。お前の気持ちも分からぬものではない。  しかし今は使徒を殲滅することが最重要目的なのだ。  やってくれるね?」 「ところで褒美の話ですが・・・。」 「ああ、十分な金も名誉も君に渡せると思うよ。」 「いえ、そんなモノはいりません。  僕が欲しいのは・・・」 「何かね?」 「聖杯です。」 「バカな!聖杯は我が国の最重要宝物!  それを一個人の褒美などには・・・。」 「いや、良いだろう。」 「な、陛下!」 「この国にあれば新たな使徒が次々と攻めてくるだろう。  そしてそのたびに、優秀な人材、関係のない市民が犠牲となっていく。  その上それだけの犠牲を払いながらもいつか奪い取られてしまうかもしれぬ。  彼に預けるのがもっとも安全だと私は思うが?」 「・・・それが陛下の意志ならば・・・。」 答えとは裏腹にその表情は苦々しい。 「ありがとうございます、ではまた。」 シンジは青いマントを颯爽とひるがえし、謁見室から去っていった。 侵入者は若い男だった。 ロングコートを羽織り優雅な物腰で歩く姿は上流貴族を思わせた。 だがそのコートは紅く濡れている。 今しがた殺した兵士達の血で。 彼の手がヒラヒラと馬鹿にしたような動きをする度に 兵士はバラバラに切り刻まれていく。 彼の後ろにはすでに死体の山がうず高く積まれていた。 もはや彼に向かう者はなく、他の兵士達はジリジリと後退していた。 「もう終わりか?・・・・!」 余裕をもって喋っていた男は急に顔を引き締める。 「もう来るか・・・。仕方あるまい先に仕事をすませよう。」 彼は宝物殿の扉へと足を向け、呪文を唱え始める。 魔術師自慢の封印は呆気なく解かれ扉が開く。 そして宝物殿へと消えた。 「使徒は・・・・?」 シンジは王宮の庭を突っ切って来た。 「い、今しがた宝物殿の中に・・・。」 「遅かったか!?」 シンジも宝物殿の中へと消えていく。 宝物殿の中は思った以上に広かった。 男はすでに聖杯と思われるものを手にし、中央に立っていた。 「来たか・・・。」 「それを返して下さい。」 対峙する二人。 「悪いがこれは任務なんでね。」 「返さなければ・・・」 「サキエルのようになるとでも言うのかね?」 「サキエル・・・?」 「ああ、知らなかったんだね。君が先刻殺したあの女の名さ。  僕は仲間の仇をとろうとなど思ってはない。  だが、しかし君がどうしても僕たちの邪魔をしようとして  後に禍根を残すような者なのであれば抹殺しなければならない。  それが例え人間であったとしても全力を持って、ね?」 「お喋りはもういい。」 シンジは遂にあの氷のような一面をのぞかせる。 「聞きあきたよ。」 「そういきり立つな。相手はちゃんとしてやるから。  でも私は任務を先に済ませなきゃならないのでね。」 その言葉が終わるか終わらないかの直後、 その隣に急に背の曲がった小男が現れた。 「!?(気配は全くなかった・・・一体どこから?)」 「レリエル、来ているならさっさと出てこい。」 「フン!うるせーよ、シャムシェル!  俺にも都合ってもんがあるんだよ!さっさと聖杯を渡せ!」 「ち、調子に乗るな。  まったく何故お前をゼルエル様の側に付けるのかわからんな・・・・。」 「黙れ!俺はゼルエル様に次ぐ力を持っているんだ!  当然のことなんだよ!」 「・・・・まあ、いい。さっさと持っていけ。」 レリエルと呼ばれた小男に聖杯が手渡される。 「・・・そいつならゼルエルの居所を知っているな・・・・。」 「まーな!使徒の中でも場所を知っているのは俺ぐらい・・・」 「なら、聖杯もお前も帰すわけには行かない!」 瞬時にシンジは青い残映だけを残して消えた。 小男はまったく反応できておらず、まだ顔をニヤつかせている。 彼と、使徒達の間の距離等シンジにとっては無に等しい。 一瞬にして自分の間合いに入る・・・はずだった。 「悪いがそんなことはさせない!」 隣の男の方・・・シャムシェルの方が動いたのだ。 シンジは空気の揺れ動くのを感じた。 とっさに身体を低くする。 シュッ かろうじて頭をかすめ光が横へと飛んでいった。 その光とは超極細の糸。 視界に捉えることはきわめて難しいほどの細さだ。 だがただの糸ではもちろん、無い。 男は慣れた手つきで指を動かす。 キリ キリ キリ 軋む音と共に頭を通り過ぎた細糸がシンジへと戻ってくる。 「くぅっ!」 仕方なくシンジはバックステップで後退する。 それと同時に石造りの宝物殿は崩れ始めた。 おそらく細糸に主柱を崩されたのだろう。 だがそんなことには関係なく攻撃は繰り返される キリ キリ キリ 左右から同時に2本の糸がさらに迫る。 「――! エヴァンゲリオン!その声と共に右手の腕輪がグニャリと変形し、剣を形作る。 キン キン シンジはその剣を用いて同時にくる斬撃をきれいにはじいた。 「出したか・・・(ニヤリ)」 「・・・・・・。」 そのやりとりを呆然と眺めていたレリエルだったが ふと聖杯の方を見やり慌てた調子で後退する。 「・・・・・俺も参加したいが生憎仕事が残ってるのでな。  また今度だ!今度があればの話だがな!」 「うるさい・・・早く行ってくれ邪魔だ。」 「行かせない!」 だが口とは裏腹にシャムシェルはいつでも糸をとばせるように構えている。 うかつに動くわけにには行かない。 飛び込めば聖杯は奪取できるかもしれないがその後 バラバラのその辺に散らばっている兵士達のような姿になるだけだ。 「あばよ!」 ニヤリと笑うその顔が影へと沈んでいく。 影は彼を飲み込むと同時に小さくなり消えた。 「!」 「ふ、いちいち腹の立つヤツだ。さてと、」 それと共にいよいよ宝物殿は崩壊し、もうもうたる煙を上げる。 宝物殿の崩壊がおさまった後も二人はまったく同じ場所に動いていなかった。 ATフィールドが二人を完全に傷付けなかったのだ。 「これで”後に禍根を残すような者”の抹殺へと任務は移行したワケだな。」 「僕にはまだ次の相手が残っているんだ・・・早く終わらせよう。」 「おいおい、レリエルを追う気か?やめとけ。         タルタロス  ヤツの無明の異空は完全に気配を消して動くことが出来る。  どうやってもヤツが自ら出ていかない限り誰にも探せん。」 「それでもやって見せる・・・」 「それに、」 手をフラリと動かすシャムシェル。 「俺がいる。」 と、同時に始まる攻撃。 指から1本ずつ、計10本の糸がシンジを襲う。 シンジはそれを見越して右へとかわす。       グレイプニル 「この狂狼の縛糸からは逃れられん!」 キリ キリ 糸は軋みながらまるで生きてるかの如く直角に曲がり、 逃げたシンジを追撃する。 バリ バリ バリ 庭にある木が糸によってなぎ倒されていく。 だがそれでも糸は速度をゆるめず確実にシンジの後を追う。 「!」 いつの間に回り込んだのかシンジの前方からも糸が来ていた。 シンジはまたも右へと折れる。 (・・・これじゃ間合いに入り込めない) 糸は確実にシンジの後を追い、時には前から、横からと激しく攻撃し シャムシェルから一定の距離を保つようになっていた。 (このままじゃ殺られるだけだ・・・・  ここからラグナロクを撃つか?いや、この距離ではかわされる・・・・  他の魔法ではとてもATフィールドは破れない・・・) ますます攻撃は激しくなりそれと共にシンジも縦横無尽に走り回る。 (なら・・・) キリ キリ キリ 「ククク・・・それではいつまでたっても私は倒せないぞ。」 (方法は・・・・ただ一つ!シンジは振り返り、グレイプニルと対峙する。 「ぁぁぁぁぁあああああ!」 「ふ、バカめ。特攻をしかけるつもりか!?  だがそうたやすく10本の糸をくぐり抜けることは出来まい!」 シンジは自らグレイプニルに向かっていく。 シンジのエヴァンゲリオンが雷光の如く煌めく。 「―――!」 信じられないことだった。 シンジは10本の糸、全て的確に受け流したのだ! 「ば、馬鹿な!グレイプニルの10本全てをかわせるはずは・・・。」       メートル 後 10M・・・7M・・・5M 「く、くそぉーーっっっ!・・・・・・なーんてね。」 ヒュッ ジプシュッ 「!」 後、2Mのところだった。 シンジの背から腹へと向かってグレイプニルが生えていた。 「ハーーッハハハハァ!グレイプニルは私の意志に従い自在に動く!  受け流しをしたとしても、受け流された背後から攻撃すればいいこと!  残念だったな!」 「・・・・やっぱりアナタの負けだ。」 「!?」 ドシュッ 「が・・・・?」 シンジの剣がシャムシェルの胸を貫いていた。 もちろんシンジもグレイプニルが刺さったままだ。 使徒は生きてはいるが、胸を深く貫かれた激痛のためほとんど動けない。 「例え相手に攻撃を加えられたとしても、殺すか、致命的なダメージを  与えられないのであれば意味はない。一撃必殺が戦いの掟。  ただ一撃が決まっただけで喜ぶようなヤツじゃ  僕を殺す事なんてできやしない。」 スゥッと消えるグレイプニル。 おそらく指先に魔力を込めていられなくなったのであろう。 シンジの傷口から今さらのように血があふれ出す。 「君がゼルエルの居場所を知らない以上、用はない。」 「・・・・グッ。」 シンジの体中にあの魔法を唱えるとき特有の呪文が現れる。 ラグナロク 神々の終滅! 「ぐげぁぁぁぁがぁああああ!」 すさまじい緑の光の渦が剣を中心に巻き起こる。 それによって使徒の身体はまるで蒸発するように消えていった。
・ ・ ・
「ゼルエル様!ゼルエル様!」 バタバタと長い廊下をあの小男が駆けてくる。 「うるさいぞ、レリエル。」 「ありゃ?ゼルエル様は?」 だが広間にいたのは奇妙なものを目に付けている白髪の老人だった。 長い緑のローブをまとっている。 「あやつは”監視”中だ。  それより聖杯は持ってきたのか?」 「ここに・・・。」 レリエルはその老人に聖杯を差し出す。 「・・・ふむ、たいした代物ではないな。  だが試してみるか・・・・。」 老人は渡された聖杯に念を込め始めた。 輝き始める聖杯。 ピシッ だが中心からひびが入りすぐに輝きを失った。 「やはりダメだ。こんなものでは使い物にならん。」 老人は聖杯に別の念を込めて粉砕すると広間の奥の通路へと消えていった。
つづく

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