ブダペストは1国の首都としては大変珍しいことに多くの温泉がある。
オーブダ地区にローマは西暦89年にアクインクム Aquincum (豊かな水の意)が作られ、109年からはパンノニアの首都であった。当然の如くローマ風呂があったわけである。
オスマン・トルコ占領時代の16世紀、次々と温泉施設は作られた。ルダシュやキラーイなどはその当時に作られたものである。1913年にはペスト地区最初の、そしてヨーロッパ最大と言われるセーチェニ温泉が、1918年にはゲッレールト温泉が開業している。
ブダペストの温泉は、1696年にルダシュ温泉が市の所有になって以来、時間をかけてそのマネージメントが統合されていった。現在 Budapest Gyógyfürdői és Hévizei Rt.(Budapest Healing Baths and Hot Springs Co.Ltd.)が、ゲッレールト、セーチェニ、キラーイ、ルカーチ、ラーツなどの通年営業の10か所の温泉といくつかの季節営業の温泉のマネージメントを行っている。

 ゲッレールト  キラーイ
 ルダシュ  

Danubius Hotel Gellertゲッレールト

ゲッレールト温泉 Gellért gyógyszálló はブダペストで最もよく知られた温泉であり、温泉ホテルである。ホテル宿泊客は温泉施設を追加料金なしで利用できる。
ロケーション
 ゲッレールトの丘の南、ペスト側から自由橋 Szabadság hid でドナウ川を渡った所の交差点を渡った所にある。地下鉄3号線 M3 Kalvin ter 方面からは47番、49番のトラムに乗り、中央市場を左に見、自由橋を渡った所の Szent Gellert ter で下車する。この停留所にはバッチャーニ広場からの19番のトラム等、いくつものトラムが停まる。
ヒストリー この地の源泉に効用があることは15世紀から知られており、中世からはここに病院があり、オスマン・トルコ時代にはここに温Elevetor to the thermal bath泉施設があった。1912年、この地にアール・ヌーヴォーなどの影響を受けるセセッション(Sesession = ウィーン分派派)様式の温泉ホテルの建設が始まった。1918年に開業後、1927年と1934に新たな浴槽が作られた。第二次世界大戦で損害を受けたが、再建された。
営業時間 サーマル・バスとそのヒーリング・マッサージは毎日06:00-19:00。スウィミング・プールは日曜を除く毎日が06:00-19:00。日曜は06:00-17:00。その他の施設は平日おおむね06:30-19:00。ただし土曜日は午後1時まで、日曜休業。
サーマル・バスに入る ホテルに宿泊している場合は、各階の表示に従いサーマル・バス行きのエレベーター(右写真)に乗る。エレベーターの中で温泉への入場カードを受け取る。エレベーターを降りたところは温泉入り口からちょっと奥まったところだ。係のおばさんが「あっち」と指示してくれた。
Right Cassier at Gellert広大なメイン・ホールに出る。宿泊客でない場合も表からまずここに到着する。ここには両側に料金ブースがある。内部に向かって右側が一般用、左側が処方箋を持っている人用だ。外来の人はここで希望コースの料金を払う。2007年現在キャビン利用のフル・エントランスは3,100Ftのようだ。ターン・スタイルの先は優美で広大なホールとなっている。晴れていれば天井のステンド・グラスが美しくブルーい。中央部分は円形でその四周には春夏秋冬の女神像が、床にはモザイクが、そしてその上にはドームが乗っている。このホールがサーマル・バスやプールにつながっており、この一番奥には天使Main Hall of Gellertを肩に乗せたヴィーナス像?があり、その場所から入口方面を望んだのが右写真である。
サーマル・バスの方へ行ってみよう。男性用サーマル・バスは右奥に入口があり、まず上の階に行く係員にのキャビンを割り当ててもらう。キャビンと言っているが、下写真のようにカーテンで仕切られただけのものだ。病院の大部屋を想像していただくとイメージがつくだろう。この中にはベッドとロッカーがある。ホテルのリセプションで聞いたらスイミング・パンツを着用しないでOKだと言われた。そこで私は素っ裸になりタオル1枚を持って浴槽に向かったが、素っ裸の人などだれもおらず、好奇の目で見られ恥ずかしい思いをした。どうも私の質問の仕方が悪かったようだ。サーマル・バスの入口ではふんどしを貸してくれたはずだが、私は単にシャンプーのみを受け取ってどんどん進んでしまったのだ。なおその越中ふんどし、かなり使い古したもののようであった。
まずシャワーを浴び、前方に進むと大浴場だ。NHK-Hiではここまでカメラを入れていたが、ここは撮影禁止だ。大浴槽は2つあり1つは36℃、もう一つは38℃。日本の尺度からはかなりぬるい。天井からは太陽光線がガラス天井から射し、2人の子供が下を見ている彫像の下から3筋のお湯がほとばしり出、肩に打たせ水(湯)をしている人がいる。浴場全体がライト・ブルーで、壁面にはモザイク・タイルがはられており豪華だ。。奥の方には体を洗うシャワー・ルームがある。出口付近には体をぬぐうためのシーツが置いてあり、体をぬぐったあとこれを腰に巻いて退場する。その途中にマッサージ・エリアがある。ここは現金で払うということだったので、私はいったんキャビンに戻ってからマッサージを受けた。
Indoor Swimming Pool at Gellertプール プールは屋外と屋内に子供用も含めいくつかある。私は屋内のプールのみ見てきた。上階が展望室となっており、ここから撮った写真が右のものだ。プールは男女共用でスィミング・キャップの着用が義務づけられている。
感想 この温泉はブダペストの顔の一つなので、1度は行ってみると良いだろう。いろいろな泉質の温泉があるそうだが、私の入った大浴場の泉質はおそらく単純泉の類で、無色、無臭。私には面白みがなかった。
私の宿泊した部屋は、1番安い部屋と言うこともあるが、我が国のビジネスホテルにもないような2畳ほどの部屋で、何となく薄汚くがっかりした。
ここを訪れたのが2004年のことであるので、現在はいろいろと改善されているかもしれない。

Rudas Gyógyfürdőルダシュ

ロケーション ルダシュ温泉 Rudas Gyógyfürdő ゲッレールトの丘のふもと、エルジェーベト橋 Erzsébet híd をペスト側から渡り切ったすぐ左手にある。ペスト側から見ると右写真のようにゲッレールトの丘の切り立った崖の下に堂々たる建物を誇っている。ここからドナウに沿って写真左方向に600-700m行くとゲッレールト温泉だ。反対にドナウに沿って北に2kmほどでキラーイ温泉というロケーションにある。
Erzsébet híd from Buda side聖ゲッレールト・モニュメントからエルジェーベト橋を望む(左写真)と、橋の右手にルダシュ温泉を見ることができる。ドナウに沿って走る道路とトラムはエルジェーベト橋の下を通っている。温泉入口はそのドナウに沿いの道側(下写真)にある。
ヒストリー ルダシュ温泉はオスマントルコのハンガリー占領下の16世紀に作られたサーマル・バス(温泉施設)である。1896年には浴場にサウナが併設され、また新たに素晴らしいプールが設置された。1936年からは温泉施設は男性専用となっていた。リノヴェーションのため約1年休館された後2005年12月にリオープンした。
営業時間 現在では男性だけではなく女性も利用できるようになっている。ただしここにはサーマル・バスは1つしかないため、利用時間は現在次のようになっている。サーマル・バス 男性:月水金 06:00-20:00 火 14:00-20:00 木 06:00-12:00 土 06:00-17:00 女性:火 06:00-12:00 木 14:00-20:00 混浴(水着着用):土 22:00-04:00 日 08:00-17:00 プール(男女とも) 月―金 06:00-18:00 土日 06:00-14:00。
Entrance of RudasFfürdőサーマル・バスに入る 正面入り口(右写真)から中に入ると右側に料金所があるのでここでデポジットの2,200フォリントを払いICカードを受け取る。ターンスタイルにこのカードをかざして入場する。ターンスタイルを通って入場するとすぐ右に曲が。と、左側にもうひとつターンスタイルがあるので、またカードをかざして中に入る。ここには受付の人がいて、前掛けを受け取る。この温泉は伝統を重んじ水着の使用は禁止(混浴時間以外の時間帯のみと思う。)され、その代りこのふんどしを着用する。どういうわけか私には前用と後用と、2枚渡してくれた。通路の両側にキャビン(下左写真)が並んでいる。鍵の付いているもので、使用していないものを利用する。ここで来ているものをすべて脱ぎ、先ほど受け取った前掛けだけをつける。キャビン内側のカードのスロットにカードを入れる(下右写真)と鍵

Cabin Insert the IC card inside cabin

をかけ、鍵を抜くことができる。最近リニューアルされ、設備はよい。持ち物はせいぜい石鹸とかシャンプーのみで、体をぬぐうタオルは不要だ。 キャビン内部のセキュリティーも高いと思う。
キャビンを出て浴室エリアに向かい、まずシャワーを浴び、足を殺菌層に入れると浴場エリアだ。浴場エリアの中央には8本のコラムとアーチで支えられているガラス・ブロックをちりばめた直径10mドームがあり、晴れていればそこから射し込んでくる光線が美しい。このドームの下が8角形の大浴槽である。その四隅には30℃、33℃、42℃そして28℃の浴槽がシンメトリカルに配置されている。四隅の温泉はいずれも硫黄泉のようでほのかに香りがする。私は28℃のものが気に入った。
サウナは42℃と28℃の浴槽の間から入り、左側がスチーム・サウナ、右側がドライ・サウナである。これらは奥に行くにしたがって強くなる。(ドライ・サウナは50℃、60℃、70℃) 前方右には水風呂があるが、異常に冷たい。
水風呂の先に湯上げシーツが置いてある。退場する際にシャワーを浴び、ふんどし入れにふんどしを入れ、シーツを1枚とって体をぬぐる。そしてシーツを腰に巻いてキャビンに戻る。キャビンの手前には休憩室があり、ビーチ・チェアーに横になって休むことができる。キャビン・エリアにはヘア・ドライヤーや鏡も設置されている。着替えをしてカードをスロットから抜き、元来た道を戻る。最初のターンスタイルのところでシーツを返すと返金があれば返金(リファンド)伝票をくれる。第2のターンスタイルを出て料金所でリファンド伝票を渡すと返金してくれる。
プール この温泉にはプールが併設されている。写真を見るとなかなかきれいなプールのようだが、私は見ていない。
感想 この温泉は最近リノヴェーションを行ったおかげで明るくクリーンで気持ちよく入浴できる。ほのかに香る硫黄泉も良い。怪しげな人々もおらず、ここはお薦めである。(2007年5月23日)

Kiralyキラーイ

ロケーション キラーイ温泉 Király Gyógyfürdő は地下鉄2号線のバッチャーニ広場Batthyány tér から北に歩いて10分ほどの所にある。ドナウに沿った道ではなく、1本奥へ入った道に沿って建っている地味な建物だが北側に通りからからドーム屋根が見える(右写真右)ので間違うことはなだろう。
歴史 オスマン・トルコ占領下の1565年にアルスラン・パシャ Arslan, the Pasha of Buda により建設が開始され、彼の後継者スコーリ・ムスターファ Sokoli Mustafa により完成された。この温泉には固有の源泉がなく、近くのルカーチ温泉から湯を引いてきている。1796年に王家により買いとられれ、現在の形に改造された。キラーイ温泉(Király = King)と呼ばれるのはそのためだ。第二次世界大戦で被害にあったが1950年復興された。
営業時間 男性:火木土 09:00-20:00 女性:月水金 07:00-18:00 なお2007年9月まで水関係の改修工事を行っており休刊している。
サーマル・バスに入る 入口から中に入ると左側に料金窓口がありそこで1,300フォリントを払う。階段を上るとキャビンが現れ、突当りのデスクで伝票を渡Passageすと湯上げシーツを1枚渡してくれ、キャビンをアサインしてくれる。ちなみにここは裸で入ってはいけないことになっており海水パンツを持参する。キャビンで着替えるとさらにキャビンの間を「Gózfürdő」の表示(右写真 左側の黒い表示板)に従い前進する。最後の部分で階段を下りるとそこが温泉だ。左側には内部の見えるドライ・サウナ。直進するとシャワーと30℃の小さな浴槽。ここで体を洗い(ルダシュのように体を洗わずに入ってはだめというような表示はない。)足を殺菌層に入れるとアーチに支えられたドームの下の大浴場に入る。ドーム自体はルダシュのものによく似ている。違いはコラムが無いことだ。ドームにちりばめられたガラスから漏れる光の下には12角形の大浴槽。右側には小さな40℃の浴槽。前方奥まった所に26-28℃の小浴槽。その左がスチーム・サウナだ。この温泉は制限時間が月―金が1時間半、土は1時間。超過すると超過料金を請求される。風呂からあがるとそのままキャビンに戻る。係員の鍵と自分の持っている鍵の2つでキャビンを開けるので盗難の危険性は低そうだ。
感想 この浴場には怪しげな人々が大勢いた。水着着用となっているのに前も隠さず素っ裸でいる人、カップルに見える人々などなど。スチーム・サウナは扉が透明でないので4-5人以上入っているときに入るとよいだろう。気持ちが悪いので人が近くに来ると避け、早めに退場することにした。お勧めできない温泉だ。(2007年5月24日)