ヴァリス・アルプスと言えば誰もがまずマッターホルンとツェルマットを想起するだろう。 サース・フェーは日本人の間では余り知られていないマイナーな村と思って2002年7月初めてこの地を訪れたのだが、私の予想に反し日本人の多いのにまず驚いた。
このサース・フェーからは正に心の洗われるような絶景のスポットにケーブル、ロープウェ-等で容易に登れるし、ハイキング・コースも整っている。 おまけにホテルではすばらしい食事が安価で堪能できるときてはどうしてもファンになってしまう。
ここは周辺の地名等をみても明らかにドイツ語地域と思われるので、私は今まで「ザース・フェー」と発音してきたが、ツーリスト・オフィスの日本語パンフレットを見ると「サース・フェー」となっているので多少疑義を挟みながらも「サース・フェー」と表記することにする。
Overview of the village
 サース・フェーへ  早起きは三文の得
 サース・フェーの村  サース・フェーのロープウェー
 滞在税とゲスト・カード  サース・フェーの宿
 車を締め出す村  

SBB Brig Station and Post Busesサース・フェーへ

サース・フェーへはブリーク Brig からポスト・ブスで行くのが一番便利だ。 バスはブリーク駅前(右写真)を朝6時15分から夜8時半までおおむね1時間毎、毎時15分に出発する(2002年6月16日から12月14日のスケジュール)。 スーツ・ケースや大きなザックは当然バス側面の収納庫に入れる。 ブリークを出たバスはフィスプ Visp 駅前の郵便局を経由してマッタータール Mattertal を登っていく。  ブリーク・フィスプ・ツェルマット鉄道 BVZ と並行して走ったバスは、シュタルデン・サース Stalden - Saas の駅を経由した後、左に分かれてサースの谷 Saastal を登る。 直立するように氷河によって切り裂かれた斜面に沿って作られた片側1車線往復2車線の広くはない舗装道路をバスは快走し、ブリークから55分ほどでサース・グルント Saas-Grund に着く。 ここではサース・アルマゲル Saas-Allmagell 方面行きのバスと連絡している。 ここからさらに10分余り登るといよいよサース・フェーだ。 

サース・フェーの村

バスがサース・フェーの村の入り口に近づくと、道路左側のサース・フィスペ川の崖沿いに巨大な駐車場ビル Parkhaus に見えてくる。 一般車はここまでしか入れない。 バスは直進し自動車用遮断機を越え村の中心部のバス・ターミナル(郵便局)に向かう。 標高1800mのサース・フェーは内燃機を使用した自動車を締め出している村なのだ。
バスはほどなく左折し、バス・ターミナルの木製の自動ドアが開くと中に入って停車する。 上右写真がその内部だ。
サース・フェーの村はその郵便局をほぼ中心として北東と南西に細長い形(長方向1600m、短方向600mほど)Informationをしている。 観光局は郵便局前にあり日本語のパンフレットも入手できるし、時間によっては日本人スタッフもいる。 またリヤカー(おそらく日本製と思われる)もここで借りられるそうだ。 村には50軒を超えるホテルのベッドを含め、約7500のベッド数を誇る。 レストランも50件ほどある。
細長い村の中央部にメイン・ストリートが通り、主なホテルやペンションの多くはこの通りに面してている。 繁華な部分は観光局前の坂を下り切りメイン・ストリートにぶつかったあたりから村役場の手前までのわずか200m足らずである。 その観光局前の坂がメイン・ストリートに合流する手前左側にスーパーがあるので覚えておくと良い。 もう1件のスーパーはコープで、メイン・ストリート沿いのドルフプラッツ Dorfplaz からメイン・ストリートの東側を郵便局に向かう道をとるとすぐ右側にある。 ハイキングに必須の水の購入はこの2軒のどちらかでしよう。

Main street滞在税とゲスト・カード

スイスでは滞在税 Kurtaxen (Visitors' Tax) が徴収される。 徴収された滞在税は観光局によりハイキング・コースの維持等に使われている。 その金額は自治体ごとに異なり、ここサース・フェーでは1泊に付き大人CHF2.10、子供CHF1.05(2002年)。 これはサース谷の4つのゲマインデ Gemeinde の中の最高金額だ。 ホテルの場合にはこの滞在税は宿泊料に含まれているが、アパートメントの場合には家主に別途払うことになる。
宿泊施設では宿泊客にゲスト・カード Gästekarte を発行してくれる。 これをもっていると割引をしてくれる場所があるので、パンフレット等で確認すると良いだろう。

Panoramabrucke and Freizeit Zentrum Bielen

Electric Car車を締め出す村

先に述べたようにこの村には一般のガソリンやディーゼル・エンジンを搭載した車は入ることはできない。 車は村の手前の駐車場に入れることになる。 料金は2002年は24時間CHF11.00。 ゲスト・カードがあれば2日目以降CHF3.50が割り引かれる他、8日目以降はさらに割引が増す。
村の中の移動はしたがって徒歩が原則だ。 しかしレンタ・カーやバスで着いた時には荷物が問題となる。 たいていの宿泊施設は電話をすれば電気自動車(右写真)で迎えに来てくれるだろう。 その他の交通機関は電気タクシーと言うことになる。 冬にはバスも走ると言うことだが、夏にはない。

Eary in the morning in Saas-Fee早起きは三文の得

山へ来たら朝早く起きてハイキングに出かけたいものだ。 ところがホテルの朝食は7時からのところが多いし、星の多いホテルではビュッフェ・スタイルのフル・ブレックファーストが普通だ。 となるとホテルを出る時間が8時に近くなってしまう。 もっともロープウェーは早いところで7時半からなのであせることはない。
それよりも6時前に起きて表に出てみよう。 朝の寒気の中に朝日を浴びて山々が光り輝いているのが堪能できるだろう。 またハンニック Hannig 2340m 方面などへのウォーミング・アップをかねた軽いハイキングも気持ちが良い。 私はハンニックのほうへ歩き始めたのだが、途中で道を間違えてしまいトリフト Trift 2213m に行ってしまったが、朝の冷気の中、朝食前の良い運動となった。
なお朝の5時または5時半にご来光を拝むためのフェルスキンバーン経由でミッテルアラリンまで行くサンライズ・エクスカーションを行う日がある。 観光局に催行日を確認するとよいだろう。

Alpin Expressサース・フェーのロープウェー

アルピン・エクスプレス Alpin Express
ポストからレジャーセンター ビーレン Bielen に沿って坂を下り、フェーフィスパ川にかかる大きなパノラマ・ブリッケ Panorama Brücke を渡った先の小高いところがアルピン・エクスプレスのタールスタチオーン山麓駅だ。 ここのロープウェー(右写真)はフェルスキン Felskinn 2991m でフェルスキン・バーンのロープウェーと合流し、さらにメトロ・アルピン Metro Alpin という全線地下を走るケーブルカーで白銀の世界ミッテルアラリン Mittelallalin 3456m まで簡単に行くことができる。 サース・フェーでどこか1箇所しか行く時間がないと言うときにはこれを利用してミッテルアラリンに行くのが最も良いだろう。 天気がよければ圧倒的な景観が楽しめる。 ただしせっかくサース・フェーまではるばる来たのなら最低2−3泊はしたいものだ。 フェルスキン往復34フラン、ミッテルアラリン往復68フラン。
ハンニック Hannig
ポストから観光局方面(北西)へ少し行った所にこのロープウェー乗り場はある。 中心部から最も近いロープウェーで、ハンニック 2340m からはサース・フェーに下りてくる軽いハイキング・コースがいくつかある。 ハンニック往復24フラン。 なお私は今回このロープウェーは利用しなかった。
シュピールボーデン Spielboden レングフルー Längfluh
シュピールボーデン行きロープウェーとプラッテSpielbodenbahn & Plattjenbahn Talstationィェン行きロープウェーの乗り場は同じ建物(下写真)で、村の中心部からはかなりの距離のメインストリートを南の突き当たりにある。 チケット購入後前者は右に、プラッティェンへは左の改札を利用する。 シュピールボ−デンバーンはシュピールボーデン 2455m からサース・フェーに下るハイキング・コースでポピュラーだ。 ここからレングフルーバーンに乗り換え終点のレングフルー 2867m へ行くとフェー氷河の舌が間近に見られる。 シュピールボーデン往復24フラン、片道18フラン。 レングFelskinnbahnフルー往復34フラン。
プラッティェン Plattjen
プラッティェン山上駅 Plattjen Bergstation 2570m からの眺めはあえて展望のために上ってくるほどのものではない。 その利用価値は何といってもブリタニア小屋へのハイキングの基地と言うことだろう。 プラッティェン往復24フラン、片道18フラン。
フェルスキン Felskinn
シュピールボーデンとプラッティェンへのロープウェー乗り場の少し手前を右折してテニス・コートのわきをシュピールボーデンバーンに沿ってかなり行った所にフェルスキンバーンの乗り場(右写真)はある。 このロープウェーはフェルスキンでアルピン・エクスプレスに合流し、ミッテルアラリンまでメトロ・アルピンで行くことができる。 村の中心部近くにアルピン・エクスプレスの乗り場ができてからはたくさんのゴンドラがつるされているアルピン・エクスプレスを利用する人々が増え、サース・フェー南西の端に宿をとった人々が利用の中心となり利用者が減った。 フェルスキン往復34フラン。
なお前期のサンライズ・エクスカーションはこのロープウェーを利用する。

サース・フェーの宿

サース・フェーにはホテルとかガルニ Garni = 旅籠、もしくはアパートホテルと言った類の宿泊施設が50件余りある。 夏のシーズンは最も安い1つ星で朝食つきが1人1泊53CHF位で、最高の4つ星クラスで130CHF位だ。 それに20から45CHFを加算すると1泊2食付=ハルプペンション Halbpension となる。 その他にシャレー Chalet とかフェーリエンボーヌング Ferienwohnung と呼ばれる宿Metropol Grand Hotel泊施設が250件余りあり、安いところは1人部屋30CHF、2人部屋40CHF位からある。 これらは原則として素泊まりのようだ。
私はサース・フェーで唯一ベスト・ウェスタンに加盟している4つ星のメトロポール・グランド・ホテル Metropol Grand Hotel (右写真)に3泊したが、ドゥーシェ付きのシングル・ルームがハルプペンションで150CHFだった。 朝食つきだと130CHFだからわずか20CHFで豪華な夕食付きになるのだ。 このホテルの場合日替わりで、毎日最低2種類の中から選べる。 夕食にはデザートまで付いているが、飲み物は別だ。 ちなみに私のオーダーしたエヴィアン1リットル・ボトルが10CHF、ワインの安いのが34CHF、カプッチーノが3.6CHFとこちらはよい値段だ。 もちろんミネラル・ヴァッサーやワインはボトル・キープをしてくれるので計画的に飲んで出費を抑えよう。
このホテルには室内プールとサウナがあって、私は鍵を借りて1人で広々としたジャグジーや水風呂まであるサウナでリラックスさせてもらった。 これらはフリーである。
このホテルをお奨めホテルとするかどうかはちょっと迷う。 外観はお世辞にもよいといえないので、新婚旅行には勧められない。 しかし食事はすばらしいし、サウナも良いので気に入ったのだが、ひとつ残念なのが日本人の団体客によく使われることだ。 私の宿泊中も毎晩20人から50人くらい泊っていたようだ。 夕食に彼等がやってくると(幸いなことに毎日はこのホテルで夕食を取らなかったようだ。)、急にダイニング・ルームはうるさくなり、ムードががらっと変わってしまう。 朝食時はさらに大変だ。 彼等は大挙してやって来るので、彼らの前に到着しないとビュッフェの朝食は補充が間に合わず、とりたい品目が皆空ということになってしまう。