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2002年7月、ザース・フェー Saas Fee への旅をチューリッヒ空港駅 Zürich
Flughafen から開始した。 ザース・フェーには朝早くたっても中途半端な時間についてしまうため、足慣らしをかねエッシネン湖に向かった。 20年ぶり3度目のエッシネン湖は大変ポピュラーなスポットに変貌しており、以前の幽玄とした雰囲気がなくなっていたのは残念だった。 しかしたまたま予定していた列車より1時間早い列車に乗ることができ、今まで出来なかった本格的なハイキングをする時間に恵まれ、湖畔までの往復しかしない人々には体験することの出来ないすばらしい景観を楽しむことが出来た。 |
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エッシネン湖 Oeschinensee 1,522m はベルン Bern からシュピーツ Spitz を経てブリーク
Brig に向かうスイス国鉄 SBB の幹線上のカンダーシュテーク Kandarsteg 1,176m
から約3kmの所に位置する。 空港駅からは毎時40分ごろ、直通またはチューリッヒ中央駅
Zürich Haubtbahnhof ないしはベルン乗換えで列車が出ており、カンダーシュテークには約2時間40分後の毎時24分に到着する。 ブリークからだと毎時59分発で34分後の33分に到着する。
カンダーシュテークの駅周辺にはキオスクが1件あるだけで閑散としている。 このキオスクで水の調達をしておこう。 エッシネン湖のチェアー・リフト
Sesselbahn を利用するなら駅舎を通らずブリークに向かってホーム後方の出口から出ると近い。 コイン・ロッカーはブリーク側にある駅舎に通ずる地下道の途中にある。
駅舎から右側の舗装道路を鉄道にほぼ直角に進むとカンダーシュテークのメイン・ストリートに程なくぶつかる。 この道路沿いにはホテルやレストランが並ぶ。 ゼッセル・リフトへはこの道を左に曲がり、家もまばらになったところにある標識に従い右手に折れ、草地の間の舗装道路をとる。 その右手に教会(上右写真ほぼ中央の尖塔)が見えるので間違うことはない。 自動車道にぶつかったらその道を左に曲がるとまもなくホテルや駐車場が現れる。 ここがエッシネン湖へのゼッセル・リフト乗り場(左写真)で駅からは10分というところだろう。 道々土産物屋をのぞいて地図がないか探したのだがどうも置いていないようだ。
ここのゼッセル・リフトはハイ・シーズンの6月中旬から9月中旬には朝7時半から夜6時20分まで運行しており、片道14CHF、往復19CHFだ。 この全長
1,405mのリフトは2人乗りで、面白いことにロープに平行の方向、すなわち前でなく横、を向いて高度差
485m をぐんぐん登って行く。 行きは南向きで眺めがすこぶるよい。
リフトの山上駅にはレストランが併設されていて、みやげ物も置いてある。 ここで地図はないかと聞いたら、独、仏、英、和4ヶ国語の「OESCHILAND」お奨めのハイキング・コースというパンフレットを無料でくれ、大変重宝した。
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山上駅を基点にエッシネン湖のハイキング・コースを見てみよう。 まずもっともポピュラーなものは1,682m地点の山上駅からレーガー
Läger 、ゼンヒュッテ Sennhütte 経由(時計方向回り)でエッシネン湖に向かうコース、これだと湖畔まで約30分。 湖畔に直行するコース(半時計方向回り)だと約20分。 往復をリフトにしてこのぐるっと一周するには山上駅から往復1時間半見ておけば十分だろう。
なお片道約7分のリフトのチケットを買うのにかなりの時間がかかる点に注意をしよう。
次のコースは山上駅から上記のレーガー方面に向かい、その手前から山道を登り、ホイベルク
Heuberg そしてオーバーベルクリ Oberbärgli を回り、ウンターベルクリ
Unterbärgli を経由して湖畔にいたるコース。 これはおおむね3時間ほどのコースで、湖を堪能するには絶好のコースだ。 今回私のとったコースであり、下に詳述する。
このコースをさらにオーバーベルクリの先のホーテュルリパス Hohtürlipass
を越え、壮大な氷河を見ながらスイス山岳会SACのブリュムリスアルプヒュッテ
Blümlisalphütte まで行くコース。 これは片道4時間半。
もうひとつ山上駅からエッシネン湖のベルクハウス脇を通ってオーバーベルクリの対岸のSACのフリュンデンヒュッテ Fründenhütte まで登るコース。 これは片道2時間45分。
そして湖岸のベルクハウスからエッシネンバッハ Oeschinenbach の流れに沿ってカンダーシュテークまで下るコース。 これは下りが約1時間、登りが1時間15分。 今回この道を下ったが、思いのほか急な道で、眺めもたいしたものでなくお奨めでない。 帰りもリフトを使うことにして湖岸の少しでも高いところまで登ってエッシネン湖の景観を楽しむべきだろう。
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山上駅からはすぐにレーガー方面と湖畔直行との分岐点(上写真)に着く。 ここを左に取りレーガー方面に向かう。 山上駅から15分ほどのレーガーの手前にこのコースへの分岐がある。 左に折れ壁のほうへ向かう。 すぐに急な登りとなり息が切れる。 壁を右へ回りきって反対側に出るとカレンダーに出てきそうな昔懐かしいエッシネン湖の景観(下写真)が見られる場所に出た。 樹林の先にかすかにエッシネン湖、その右手前には高台に立つゼンヒュッテ、そして背後のブリュームリスアルプホルン
Blüemlisalphorn 3,663m とそれを取り巻く山々がすばらしい。
ここからはゆるい登りで歩きやすい。 すぐに湖は隠れ、レーガ−近くの分岐から30分ほどで再び湖を今度はかなり至近から見られる眺望のよい場所に出る。 ここがホイベルク
1,950m だ。 ここからは湖が近すぎてかなりの広角レンズでもないと湖と背後の山々が納まりきれない(下の2つの写真)のが残念だ。 左下の写真の左側に湖から切り立つ岩山がロートホルン
Rothorn だ。 ここで一休みだ。
この先は山の斜面に沿って湖と山を見ながらのアップダウンが続き、やがて谷に沿って大きく右に曲がるとオーバーベルクリ
1,973m の小屋だ。 しかしこの手前に障害物が現れた。 牛たちである。 かなりの数の牛がいるのをよけてあと少しで通過できるところまできたが、その目の前で牛のけんかが始まった。 しかたがないので、いったん退散だ。 けんかはやがて静まったが、今度は交尾を始めるものまで現れた。 発情期なのか牛たちの中には気が立っているものがいる。 おまけに私はどじなことに真っ赤なシャツを着てきてしまった。 いつまでまっても牛たちはどきそうにない。 しょうがないと意を決して遠巻きに牛たちに目立たないようにそこを通過した。
ここからは湖に向かいなだらかな斜面を下って行くが、途中のウンターベルクリの小屋(下写真の左下にかすかに見える)でしつこいハエを追い払いながらスッペ・ウント・ブロート(写真下右)だけの遅めの昼食をとった。 6.5SFrであった。 これはアルプスで山歩きするときの私の大好きな昼食である。 犬養道子の「私のスイス」(1982年刊)に次のような一節があった。 これに共感したのであろうか。 少し長いが引用してみよう。
『ひる、はたごとも農家とも茶屋ともつかぬ一軒を見つけ出し、背負ってきた弁当の相の手の一杯のスープを分けてもらおうと中に入った。 土間には先客がいた。 斧を腰にした五人の木樵兼森林監査員。 「いつもの通りでよいのかえ」と主。 「ああ、ええだよ」。 運ばれたのは五人に対し一杯のスープ(邦貨約百五十円)であった。 背負い袋から五人は、子供の頭ほどのまっくろなパンのかたまりを取り出すと、山刀で切り取っては、かわるがわる一碗のスープをすすりながら食べた。 バタもない。 チーズもない。 子供の頭が半分になると五人は金を出しあい何度も数えて、「ここへ置くだよ」。 「おいよ、またあしたな」。 レッチェンタールの村人の食事はそんなもの、なのである・・・・・・』
この小屋の下の草原はなんとも気持ちがよい。 もちろん登山道はきちっと踏みしめられているのだが、わたしはその草原を湖と山稜のすばらしいアングルを求め自由に歩いた。
この緩やかな草原を下りきると、湖をまくように登山道はさらに下って行く。 リフト頂上駅からレーガー経由で湖畔に至る道と合流する少し手前から出会う人々は増え、湖岸に達すると多くの人が水遊びに興じている。 ボートに乗っている者もいれば、なかには水浴をしている者もある。
湖岸をさらに行くとベルクハウス Berghaus (下左写真)とホテル・エッシネンゼーに着く。 ホテルの脇にはきれいな水洗トイレがあり、無料であった。
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湖畔につくと、カンダーシュテークまで歩いて下っても予定していた列車より1時間早い列車に乗れそうだ。 そこでエッシネンバッハの流れに沿って一気に下る道をとることにして歩き始める。 後ろを振り返るとエッシネン湖のかたわらにベルクハウスがかすかに見えた(上右写真)。
この道は砂利の急坂が多く足に負担がかかる。 バンダーベークに平行して舗装道路があり、舗装道路をとってもよいのだが、こちらはさらに勾配が激しい。 前方にカンダーシュテークの町とその背後の山々(右写真)、そして左側のがけから流れ落ちる滝を見ながらの下山となるが、その勾配の急なことから立ち止まらないとそれを堪能するのも難しい。 カンダーシュテークには線路をはさんでエッシネン湖と反対側のアルメンアルプ
Allmenalp に上るロープ・ウェーがある。 そこはハングライダーの天国のようで天気がよければ町の左上方にハングライダーが飛んでいるのを見ることができるだろう。
約1時間ほどで駅に着くことができるが、先にも述べたようにここは歩くよりリフトを利用したほうがよかったというのが偽らざる感想である。
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今回の旅程はおおむね次のようなものである。
チューリッヒ空港駅 07:43 - IC810 - 10:24 カンダーシュテーク ・・・・10:50
ゼッセル・リフト駅 11:05 - 11:15 リフト山上駅 ・・・・12:00 ホイベルク
・・・・・ 12:55 オーバーベルクリ ・・・・・ 13:15 ウンターベルクリ (昼食)
13:35 ・・・・・ 14:15 湖畔のベルクハウス ・・・・・ 15:20 カンダーシュテーク
15:25 - IC879 - 16:00 ブリーク
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車窓からチューン湖を見る
ベルンとカンダーシュテーク間の列車からの景色のハイライトはなんと言ってもチューン湖
Thunersee であろう。 ベルンから乗車する場合には単純に進行方向左側に席をとればよいのだが、チューリッヒ中央駅からだと進行方向右側かつ後ろ向きに座るのが正解だ。 というのはベルンで逆方向に進むからだ。 同じようにチューリッヒ空港駅からだと進行方向左側の前向きの席がベストということになる。
旅行日
2002年7月7日
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