墨 墨の寿命は一般的に50〜100年前後といわれる。煤煙である墨の粒子は 球状で、膠の溶液で練って成型したものを「墨」といいます。 膠は粘着し易く水に溶け易い、反対に煤煙は顔料の一種で水には溶けない。 溶けた膠に包まれた煤煙の「墨汁」という。膠の寿命が墨の寿命といえる。 ・墨の種類 松の木を煤煙したものを「 松煙墨」(グレー系の黒色)といい 10年以上たったものは自然に青みが帯びてくるので青墨(せいぼく)とも呼ばれています。 菜種油・ゴマ油等植物油を煤煙したものを 「油煙墨」(赤みがかった茶黒)木の看板に 墨で書く場合は必ず油煙墨を使うと良いです。油煙墨は木に浸透して長い年月風雨にさらされ 木自体が痩せてきても、文字は浮き上がって残ります。 また、分類としては「和墨」「唐墨」に分けられる。 和墨は粘り強い最良の膠(獣骨皮)を使い、墨匠が手足で均質に練りあげ、 膠をゆっくり乾燥させてひび割れを防ぐことに力を注ぎます。 深みがあり鮮やかな墨色唐墨は粘りの少ない膠(魚骨皮)を使い大きな金槌で 何百回も叩いて練り合わせます。打つことで膠はへたり(弱くなる)、粘りが弱くなって 磨った時に筆の滑りが良くなります。、にじみが出て趣きのある墨色 ・墨の磨り方 墨はじかに握らず、墨挟みや懐紙を巻いて磨る。良い墨ほどデリケート で、じかに握ると手の脂汗を吸収して品質が落ちる原因になるという。 磨り方は、ゆっくり静かに墨の重みを利用して出来るだけ均一に墨色が 出るように。墨を磨る速さによって墨色は微妙に変化する。 古来、無垢な10歳前後の少女に磨ってもらった墨汁は紫黒色に発色し 光沢を放つ最良の墨色になるといわれている。 墨はこのようにデリケートな生き物で、保存は膠の劣化を防ぐ為使用後 よく、水洗いをし水分をしっかり拭き取って桐箱に入れておく。 良い墨汁を得る為に一晩ねかせたり(宿墨)、墨色の紙への浸透を深めるのに 温めた硯水(約40℃前後)で磨ったり、作品作りには色々工夫されている。
最終更新日2019.01.11