デュープレクサ MX-72N

2011.7.11作成
目的
MX-72N 手持ちのデュープレクサ(第一電波工業MX-72N)の特性を評価しました。15年以上前に購入したものと思います。
 デュープレクサは、1本のマルチバンドアンテナを複数台のリグで利用するのに便利です。V/VHF機はデュアルバンド機が主流で、かつ実質的にデュープレクサを内蔵しアンテナケーブルが1本のリグが多いようですが、昔のモノバンダ2台がアンテナを切替えずに使え、メリットもあります。実力を調べてみました。
定格
 原理は、ローパスフィルタとハイパスフィルタの組み合わせです。
 パッケージの厚紙に規格が記載してあり、1.6-150MHzと400-460MHz帯の2バンドで使用可能です。アマチュアバンド以外の周波数を含みますが、「アクションバンド」という名称で帯域外受信がブームだった頃なので、帯域を広げて表示したものと考えます。
 アマチュア以外の業務無線でも使えそうですが、ニーズがあるかは不明ですHi。
アンテナ側コネクタ 耐電力はHFで400W(CW)、144MHzで150W、430MHzで100Wです。ケースが小さく(55 X 45 X 26mm)、個人的にはHFは100W以上で使うのは心配です。
 1.6-150MHz側はMコネクタオスの付いたケーブルですが、400MHz帯側はNコネクタオスです。アンテナ側はMコネクタメスですが、インピーダンス整合のために中心導体と外部導体間に絶縁物がありません。コネクタの抜き差しを雑にすると、簡単に中心導体が変形するのが泣き所です。
 以前に別ページでも書きましたが、144MHz以下の周波数のローパスフィルタとして利用出来ます。地デジ化でTVがUHFへ移行したので、144MHz以下でTVIフィルタとして使えるようになりました。
通過損失
 左図のように、SG(HP8656B)とスペアナTR4131の間に本機を入れて特性を評価しました。
通過損失の測定方法 SGから0dbmの信号を出力し、スペアナでレベルを測定して0dbmからの減少分を損失としました。
 説明の便宜上、144MHz以下の入出力をVHF側、430MHzの入出力をUHF側と記しています。
 100MHz以上の周波数特性を下グラフに示しました。
 VHF側は、200MHzを超えると損失が出始め、カットオフ周波数(損失が3dBになる点)240MHzを越すと急に損失が増大します。
 一方、UHF側は低い周波数では損失が大きく、290MHz付近で3dBまで改善されます。その後は430MHz付近をピークに損失は減少し、550MHzまでは損失1dB以内に収まります。
通過損失特性
 さらにVHF側では430MHz付近、UHF側では145MHz付近に減衰の大きいノッチ(減衰極)があります。144MHz・430MHzのリグを接続した時の相互干渉を抑える設計になっています。
アイソレーション評価
 2台のリグを接続した際、一方のリグで送信した場合に他のリグの受信に影響を与える可能性があります。
 左下図のようにUHF側からSGで信号を出力し、VHF側で得られる信号レベルを測定しました。SG出力との差がアイソレーション値です。周波数特性を右下図に示します。
アイソレーション評価アイソレーション評価結果
 グラフはVHF側特性とUHF側特性のほぼ和になっています。デュープレクサ内部でローパスフィルタとハイパスフィルタが接続されているので、当然といえば当然の結果です。
 定格ではアイソレーションは60dB以上と規定されていました。但し、定格の通過帯域は1.6-30MHz、140-150MHz、400-460MHzと書かれていますから、おおむね規格は満足しています。
 仮の話ですが、海外の220MHzが許可されている国でこのデュープレクサを使うとすると、VHF側に接続すれば送信可能かもしれません。しかし、アイソレーションが30dB程度しか取れないので、10W出力とするとUHF側のリグへ10mWの電力が印加されます。結構大きなレベルではないでしょうか。
まとめ
 2台のリグや受信機で受信だけの目的ならば、230-300MHzを除き900MHzまで使用可能です。アンテナの性能次第ですが、UHF側は地デジに使えるかも?(但し、インピーダンスが50オームなので、75オームのTVとは若干ミスマッチが生じます)