レストア
注意!
オークションの無断リンクがあるので、仕様は非公開です。
2009.4.14作成
2010.10.5追記

ヤエス FT-730RII

☆周波数・モード非公開
☆定格出力非公開
☆送信周波数構成非公開
☆受信周波数構成非公開
☆マイクインピーダンス非公開
☆受信方式非公開
☆受信感度非公開
☆通過帯域幅非公開
☆電源非公開
☆消費電力非公開
☆寸法・重量非公開
☆発売年・定価非公開

リグの説明

FT-730R発表後1年半で登場した後継機種です。末尾の「II」で表現された通り、FT-730Rのマイナーチェンジモデルです。
外観上・機能上は、レピータのスイッチの表現が変わっています。730Rは−、SIMP、+でしたが、730RIIは右写真のように−、SIMP、REVです。JAでは受信周波数>送信周波数が当たり前ですから、+という表現の混乱を避けたのでしょう。−をNORMALと書けないところが、JA独自の事情ですね。
では回路上は?と詳細を調べたかったのですが、回路図がありません。ブロックダイヤグラムと「回路と動作のあらまし」を、730Rと比較しました。
周波数構成は同じ、ユニット(基板)の番号もほぼ同じですが、送受信回路のメインユニットの番号が異なっています。730Rは中間増幅からFM検波までをモトローラのMC3357Pでまとめていましたが、730RIIはトランジスタでした。
察するに、MC3357Pが生産中止になったためにディスクリートに設計を変更したのではないでしょうか。ICは回路の小型化・簡素化に便利ですが、廃品種になると入手・代替えが困難になります。リグを長生きさせるには、ディスクリート回路が最善です。
というわけで、中間増幅回路付近以外は730Rの回路とほぼ同じであろう・・・と推定し、730Rの回路図をもとにメンテナンスを行いました。ところが、周波数コントロール付近の回路図が公開されていません。海外の説明書を探し、全回路を知ることが出来ました。
受信の第一中間周波数は17.2MHzという何とも微妙な値です。他の機種ではこの周波数は用いられていないようです。
前のFT-770は21.6MHz、後のFT-712は45MHzと機種毎に変更され、理想の仕様を模索していたようにも感じます。フィルタが壊れると、入手困難なので要注意です。
上面 送受信回路 下面 PLL・コントロール回路

周波数表示が出ない!

周波数が表示されないジャンク機を入手しました。送受信は出来そう・・・・という話です。
まず受信からチェック、SGで433.00MHzの信号を入力すると、受信出来ます。10KHz毎に周波数を変えても大丈夫でした。送信出力も出ており、これも調整次第で何とかなりそうです。
表示部付近の回路に問題があると判断、オシロでチェックすると、液晶ドライバICへ供給されるVDDが約3V、ドライバへの信号のHレベルも同じくらいしかありません。同時に入手したFT-730Rのジャンクを動作させて測定すると、5V弱になっています。
レギュレータ7805の異常かも?と、手持ちの部品と交換しましたが直りません。レギュレータ付近の回路が部品面から分かりにくいので、とりあえず交換・・・・と、チェックもせずに作業したドジをとりあえず反省(Hi)。
一息ついてテスターでチェックすると、コントロール回路のCPU HD44820A62とその周辺回路のMC14069B 2本のVDDも低くなっています。試しに、レギュレータ出力とこれらのVDDをジャンパ配線したら・・・・・・表示が出た! ・・・・・右下の黒い矢印の箇所です。
レギュレータ出力からCPUまでの電源パターンが断線しているようです。レギュレータの7805からの出力はPLL側とコントロール側に別れてパターンがありますが、前者は正常でも後者が途中で断線したため、CPUはバックアップ電池で動作していたと考えられます。
一息入れ、コントロール部の電源パターンを見て驚きました。レギュレータからCMOSロジックまでのパターンが、幅1mm程度の細さで10cm以上引き回されています。(右写真の青の矢印部)
途中で裏から表へスルーホールで接続した箇所もあり、到底電源パターンとは思えない設計です。
ジャンパを追加するとともに、基板のハンダも少なめなので、コントロール部を全て再ハンダしました。
これで液晶は表示しましたが、「2」や「3」の表示の一部セグメントが薄く点灯し「8」のように見えます。左写真は3.220の表示例です。
液晶ユニットが怪しそうなので、前述の730Rから抜き取った基板を交換したら正常になりました。
液晶ドライバ(回路図ではMN1252Aですが、別の品番でした)の劣化と推定します。
さあ、これでOK・・・・と受信すると、最初に比べ20dB以上も感度が低下しています。送信してもパワーは1W程度、これは変だ、とチェック、ケースをエイッ!と叩いたら、正常になりましたHi!
コントロール回路だけでなく、PLL回路もハンダの劣化があるようです。結局、基板全て再ハンダし解決しました。

受信部

436MHzに感度の最良点があり、両エッジで悪化しています。少しバンド内の変動を抑えたいと考え、コイルを調整しました。
高周波増幅の段間に2段のコイルが2箇所ありますが、Qが高そうなので例によって431.0MHzと439MHzで交互に調整します。中間周波増幅のコイルは1点調整でOKです。
調整結果は下記の通りで、バンド内の変動が小さくなりました。メータの振れもS2から4程度アップしました。
調整前 調整後 バーグラフ表示特性
F=433.0MHz
感度は1uV入力でS/N36dB(F=433.0MHz)と優秀です。

送信部

調整前で、すでに最大14Wの出力が得られました。パワー制御のボリュームが解除されており、バンドエッジで1-1.5W程度低下しています。説明書に従ってドライバ段を調整しました。
ドライブQ21とQ22(いずれも2SC2026)の間にあるバンドパスフィルタCV04の調整がポイントで、繰り返し調整したらバンドエッジの落ち込みが減少しました。他のコイル・トリマは、435.00MHzでパワー最大にすればOKです。
ほぼ19Wのパワーが得られましたが、最終的に15Wに抑えました。
スプリアス特性も良好で、2倍高調波は-70dBです。
   X:200MHz/div、 Y:10dB/div  F=433.00MHz

その他

液晶ディスプレイユニットを取り出したFT-730Rに、トーンスケルチの基板が実装されていました。折角ですからこちらへ移植しました。活躍することは無さそうですがHi。
コントロールユニット基板の右上に残ったスペースにセットしますが、スポンジ材に両面テープで接着します。基板にはCMOSデバイスが実装されおり、静電気が発生し破壊する可能性がある方法は生理的にアレルギーがありますHi。MOS系デバイスのトラブルシューティングで苦労した分野です。
プリントパターンの件を前述しましたが、ハンダ付けのスルーホールも問題でした。
レギュレータの7805を交換しようとハンダを除去しても抜けません。スルーホール穴が小さすぎるようです。止むを得ず無理やり引き抜いたので、スルーホールが壊れました。交換後、裏面に追加配線し、しのぎました。
また、ハンダ付け箇所のランド面積が小さく、追加ハンダがのりにくくて困りました。ハンダ付けの自動機なら製造上は問題ないでしょうが、信頼性は低下します。
回路設計技術屋にとって、GNDと電源ラインは太くするのが原則であり常識です。デジタル回路なので重視しなかったのでしょうか、ヒョロヒョロの電源ラインを1個のスルーホールで基板の表裏を貫通させ引き延ばした設計、高周波技術専門のメーカーとは思えません。