JA0IAA
レストア
 違反の事例を こちら に掲載しています。
2006.5.24作成
2007.10.12修正
2010.10.5追記

ヤエス FT-720V

FT-720V
☆周波数・モード  144MHz FM
☆定格出力 非公開
☆最大周波数偏移 非公開
☆マイクインピーダンス 非公開
☆受信方式 非公開
☆受信感度 非公開
☆通過帯域幅 非公開
☆電源 非公開
☆消費電流 非公開
☆寸法・重量 非公開
☆発売年・定価 非公開
2010.10.5
 オークションの無断リンクが依然としてあるので、上記仕様を非公開とします。

このリグの説明

 同時期に発売された430MHzFMトランシーバFT-720Uの姉妹機です。コントロール部と本体部に分かれ、オプションの延長ケーブルで接続することが可能です。モービル運用の際、コントロール部のみを運転席のそばに設置し、本体はシート下等に設置することで操作性の向上を狙っていました。
 コントロール部は、720Uと型名の表示も含めて全て共通です。コントロール部を720Uの本体部に接続すれば、430MHzのトランシーバに変身します。並べると区別がつきませんHi。
上面 下面
上面(PLL・変調回路) 下面(受信回路・送信ドライブ回路)

大変な難題に直面!

 入手して受信も出来そう、送信もパワーが出るので調整すれば使えそう・・・・と思ったら、大変な難題に直面しました。
 周波数表示と実際の受信・送信周波数が一致しません。下表の黄緑色に塗った箇所の周波数が異常なのです。
 異常周波数が送受信で一致しないことが不思議です。(  )の数字は分周比ですが、受信で600番台が+100され、送信で600番台が+100、800番台が-100されています。
 FT-720Uのコントローラ部と交換すると正常に動作するので、本体はOK・コントローラ部に異常ありと判断しました。
表示周波数受信周波数送信周波数
144.00MHz-
144.29MHz
145.00MHz-
145.29MHz
(1/700-1/729)
145.00MHz-
145.29MHz
(1/1770-1/1799)
144.30MHz-
144.99MHz
145.30MHz-
145.99MHz
(1/730-1/799)
144.30MHz-
144.99MHz
(1/1700-1/1769)
145.00MHz-
145.29MHz
145.00MHz-
145.29MHz
(1/700-1/729)
145.00MHz-
145.29MHz
(1/1770-1/1799)
145.30MHz-
145.99MHz
145.30MHz-
145.99MHz
(1/730-1/799)
144.30MHz-
144.99MHz
(1/1700-1/1769)
 コントローラ部は一般非公開なのですが、保守用の回路図が手元にありましたので早速チェックしました。PLLコントローラLSIのMSM5841の故障では?という結論でした。
 PLL制御LSIのMSM5806へ送り込む信号がパルス信号なので(内部でラッチされる)、テスターのHLレベルでは分からずストレージオシロがないと確認出来ません。

(  )は分周比  本来ならば、受信は1/600-1/799、
送信は1/1670-1/1869になる
 結局、コントローラ部の修理をあきらめました。動作しそうなジャンクのFT-720Vを入手したので、こちらをレストアします。

受信部

 受信部の調整はいつもの方法です。バンドパスフィルタは4段あり、トリマを調整します。ヘリカルレゾネータほどクリチカルではありません。中間周波増幅のコイルも調整し、Sで1.5〜2程度の改善です。
 高周波増幅は3SK48です。従来同様、カンケース−コイルのシールドケース間を0.01μFのコンデンサで接続しました。
調整前調整後S特性
 144-148.99MHzまで受信可能な改造がしてありました。十分受信可能でしょうが、改造箇所を元に戻しました。(抵抗1本が切断されていたので、つなぎ直しただけです)
 S表示を調整(20dBuでLED全灯)して終了しました。

送信部

送信スペクトル 送信部はPLL出力の144-146MHzをトランジスタで軽くドライブし、パワーモジュールM57715に入力しています。
 当初はパワー出力が不安定で、送信を繰り返すたびにパワーが変化しました。リレーが接触不良気味と判断し、リレーカバーを開けて接点洗浄剤を吹き付けて汚れを除去したら安定するようになりました。
 その後パワー制御をボリュームを回して解除し、ドライブを調整すると全バンド約13Wの出力が得られました。パワーモジュールは広帯域でフラットな特性が得られるので助かります。
 周波数が1KHz程度ずれていたので、カウンタを見ながら誤差200Hz以下に調整しました。変調は問題ありません。
 PLLで発生させた144MHzに直接変調しているので、近接スプリアスもありません。

その他

PLL回路 PLL回路の話題を一つ。
 周波数調整をするために、基準クロックを測定しました。ん?、テストポイントが取り扱い説明書では1.800MHzなのに、測定値は0.720MHzです。
 レストアした本体部ともう一つの本体部を比較してみました。何のことはない、水晶の周波数が違っています。回路図と使用しなかった本体部は7.200MHzですが、今回の本体は2.880MHzが取り付けられていました。(右のマルの水晶)
 1/4に分周されたクロックをカウンタで読んでいるわけで、設計変更がなされていたのです。分かりやすい変更ですから、慌てることはありませんでした。

 それにしても、マイコン部が異常になると原因究明が困難です。PLLのICは分周比をBCDなりバイナリで設定してあるはず、このH/Lレベルを確認すれば分周比が読めて判断つくはず・・・・という考えが見事に外されました。
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