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注意!
オークションの無断リンクがあるので、仕様は非公開です。
2006.5.28作成
2007.9.22修正
2010.10.5追記

日本マランツ SR-C806G

☆周波数・モード非公開
☆定格出力非公開
☆最大周波数偏移非公開
☆送信周波数構成非公開
☆受信周波数構成非公開
☆マイクインピーダンス非公開
☆受信方式非公開
☆受信感度非公開
☆通過帯域幅非公開
☆電源非公開
☆消費電力非公開
☆寸法・重量非公開
☆発売年・定価非公開

リグの説明

スタンダードの初期の製品で、12チャンネルの水晶式トランシーバです。
標準で144.48、144.60、145.00MHzの3チャンネルを実装しています。
以下の特徴があります。
  • 外部VFOが接続可能な9ピンターミナルが裏面にあります。製品化されたVFOもあったと記憶しています。フロントパネルに内部水晶発振と外部VFOの切り替えスイッチがあります。
  • 受信の第1中間周波数が11.7MHzになっています。最初は説明書を見て、「10.7MHzの間違いでは?」と思ったのですが、プリントミスではありませんでした。
  • 送信部前段・中段調整用のターミナルがあり、これも裏面に出ています。
内部の様子を左写真に示しますが、リグの下側から撮影しました。上側は基板のハンダ付け面です。
つまり、水晶は下向きに差し込まれています。抜ける可能性は少ないのですが、モービル運用では耐震性向上の理由で基板は上下逆にすべきです。
発売当初から、かなり設計変更されたようです。受信部は部品が削除された箇所が多数見られます。
まず、高周波増幅回路付近のコイルが3つ、FETが1個ありません。下写真をご覧下さい。
当初は高周波増幅2段の複同調だったようですが、混変調対策とコストダウンで1段増幅・同調になったと推定します。手持ちの回路図では記載がないので、量産初期の設計変更でしょう。
また、11.7MHzのクリスタルフィルタもありません。説明書の特長にも近接周波数の妨害を改善すると記載されており、回路図にも存在します。
水晶2個で構成されていますが、量産途中で削除されたと思われます。

まず困ったこと

マイクの4Pコネクタのピンが折れていました。直径1mm程度の細いメスピンで、現在は市販されていない(見かけない)コネクタです。
汎用のコネクタ(メスピンが2mm以上、他社がほとんどこのタイプ)にしようと分解し交換を試みましたが、とんでもないことを発見しました。マイクコネクタがフロントパネルの端すぎて、ナットが汎用のレンチでは外せないのです。(右写真)
ほぼ同じ形式の前モデルSR-C806Mのフロントパネルを例として右写真に示します。隅にはボンドを塗った跡もあり、無理に回り止めをしているようにも感じます。
先の細いラジオペンチで何とか外し、汎用コネクタに交換・・・・ところが、ネジの長さが短すぎて(わずか1mm程度)ナットがネジ山に届きません。
左写真の右側が、本機のマイクコネクタ、左が市販されている一般的なコネクタです。ほぼ同時期発売のSR-C4300も同じコネクタです。
フロントパネルは同一金型で製造されたのでしょうが、マージンが不足しており、上記を含め設計の『欠陥』と言えるでしょう。結局、ジャンクのSR-C806Mから同型のコネクタを外し、交換しました。
話が前後しますが、パワー・外部VFOの切り替えスイッチのツマミを外すのも困りました。ネジがなく、引っ張っても動かずローレットでもありません。このツマミを取らないと、フロントパネルが外せません。
前述のSR-C806Mのツマミをニッパで無理やり壊し、構造を知りました。ツマミ中央に金属部にある切り込み2箇所にピンセットをはさみ、回転させたら外せました。
こんなコストのかかる特殊仕様、いただけません。販売店では修理用に特殊治具を持っていたのでしょうか。イモネジ止めのツマミを使うべきです。

受信部

受信は出来そうですが、メータの振れは芳しくありません。30dBuの信号を入力してもフルスケール10目盛りのメータが4目盛りしか振れません。調整でどこまで追い込めるか?早速テストします。
まず周波数調整です。このリグは、受信の水晶も周波数調整用のトリマがあります。水晶のロットばらつきを考慮したぜいたくな設計ですが、調整方法が不明確です。
説明書では、周波数カウンタで調整する場合のテストポイントは明記していません。他局を受信し、センターメータに相当するメータを裏面ターミナルに接続して、メータが0になるように調整するのです。これでは他局がずれていれば、同じズレが生じます。
送信周波数を先に調整し(アンテナ出力のケーブルに数ターンのコイルを巻き結合すれば、容易に測定出来ます)、次にキャリブレート動作で受信回路を動作させて前記のメータを0にするのが分かりやすいでしょう。
受信回路を調整します。ヘリカルレゾネータがズレていたらしく、調整するとメータが大きく振れるようになりました。高周波回路のコイルは効果がほとんどありません。中間周波増幅のコイルは0.5-1程度メータが振れるようになりました。
調整後 S特性(F=145.00MHz)
このリグはワイドFM機です。手持ちの関係で、セラミックフィルタをCFM455CからCFU455Eに交換しました。形状が異なりますが、ジャンパー線を用いて配線しました。なお、基板上にはCFU455Eが乗るパターンがあるので実装しましたが、パターンカットが必要なのか芳しい結果にならなかったので、CFM455Cのパターンを利用しました。
感度は、1uV入力でS+N/N 36dB(F=145.0MHz)でした。

送信部

パワーが出ません。近くのリグでモニターすると、145MHzの信号が出ており、変調もかかっています。RFプローブで調べると、まずドライバの2SC730がダウンしているようなので、TR-7100のジャンクからトランジスタを取り出し交換しました。
ところがまだダメ、ファイナルの2SC1177も死んでいました。これは手持ちがジャンクを含めて無く困りましたが、互換表を見ると2SC2102か2SC2282と交換出来そうでした。ところがこれも手持ちなし、代替を物色していたら取り外しの2SC1242Aが出てきました。互換表では2SC2102、2SC2282の代替品とか、ならば使えるかな・・・・と怪しい推理?をし、交換してみました。
交換は非常に苦労しました。トランジスタはプリント基板ではなく周辺のシールド板にヒートシンクとともにネジ止めされていました。エミッタはシールド板にハンダ付けして基板GNDへ、ベースとコレクタは空中配線で基板へ接続しています。しかも周辺部品のコンデンサ・抵抗・インダクタは狭いスペースにギッシリ!よく発振しないものだと感心します。
 基板を外してからヒートシンクの取り付けネジを外し、トランジスタを何とか交換、ところがエミッタがシールド板にハンダ付け出来ません。20-30WのハンダゴテではNG、60W程度なら可能かもしれません。
結局、エミッタ2本と基板GNDを同軸ケーブルの外被銅線で接続して対処しました。高周波インピーダンスを下げる苦肉の策です。銅テープを貼っても良いでしょう。
見苦しい配線でしょうか?あまり気にしていてはいけませんHi。
まずはLOWパワーで送信、しっかりパワーが出ます。粗調整後にHIGHパワーで送信、最終的に10W以上のパワーを得ました。
パワー計を最大に調整した後はスプリアスのチェック、最初は見てびっくり、あちこちに不要成分が出ています。 (右写真)
   F=145.0MHz、 X:50MHz/div、 Y:10dB/div
本物に隣接する12MHz毎の成分も気になりますが、1/2の72MHzと2倍の288MHzが問題です。
早速逓倍回路を調整します。逓倍は
 12MHz → X2で24MHz → X3で72MHz → X2で144MHz
という構成です。
24MHz・72MHzの逓倍回路出力のコイルは、回してもパワー計の変化は少なくブロードです。コアを回し、スプリアスを少なくするように調整しました。パワーはほとんど落ちずに100-250MHzのスプリアスは消滅しました。あとは72MHzと288MHzです。
まずは72MHzのスプリアス対策です。144MHz出力のコイルは空心でコアはありません。セラミックドライバで少しずつピッチを広げると、スプリアスは減少しました。
その後ファイナルトランジスタの出力トリマとフィルタのトリマを調整し、数dB改善しました。-60dBでも見えると気になりますが、とりあえず我慢します。この段階の特性を右に示します。
   F=145.0MHz、 X:50MHz/div、 Y:10dB/div
一方、288MHzのスプリアスはあまり変化しません。ファイナルの出力回路のコイルも調整しましたが、改善されず-55dB止まりです。
回路図には3段のバンドパスフィルタが出力直後にあるのですが、これもありません(入るスペースすらない)。当然の結果か、と判断、ローパスフィルタを外付けにすることで解決を図ります。

その他

いろいろ不思議なリグです。製造中止直前のロットでしょうか。
がっかりなのは、ファイナル部の構造です。ヒートシンクは貧弱で、10Wの出力を安定して得るには放熱が不十分です。
そして、驚くことはヒートシンクとアンテナコネクタの隙間が1mmもないことです! (左写真)
ヒートシンクには絶縁フィルムみたいなものが貼ってありますが、アンテナ出力がGNDへショート寸前なのです。
ハンダ付けを外してコネクタの先端1.5mm程度をニッパでカット、余裕を持たせました。これで良しとします。