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注意!
オークションの無断リンクがあるので、仕様は非公開です。
2008.12.2作成
2010.10.5追記

ナショナル RJX-601

☆周波数・モード非公開
☆定格出力非公開
☆最大周波数偏移非公開
☆送信周波数構成非公開
☆受信周波数構成非公開
☆マイクインピーダンス非公開
☆受信方式非公開
☆受信感度非公開
☆通過帯域幅非公開
☆電源非公開
☆消費電力非公開
☆寸法・重量非公開
☆発売年・定価非公開

リグの説明

松下電器がナショナルブランドで発売した50MHzハンディ機です。トリオのTR-1200/1100Bと井上のAM-3Dが売れ筋だった分野に大手メーカーが参入し、一気にシェアを奪ったという伝説のベストセラーです。
家電の有名ブランドやCM力だけでなく、リグそのものの性能・デザインも優秀でした。
受信・送信が共通のVFOで周波数合わせの必要もなく、帯域幅4MHzをフルカバーしています。FMも「おまけ」ではなく、ある程度使えます。「おまけ」と称したのは、他社は受信のスケルチつまみがなく、待機時は受信ノイズが出っぱなしだからです。スケルチは必須ですね。
裏面にはスイッチがありません。側面にメータ切替(S/RFとバッテリの切替)スイッチとパワーのHIGH-LOW切替スイッチがありますが、許されるレベルでしょう。
VFOツマミも大きく、目盛りも見やすいほうです。ダイヤル目盛りを合わせるために50.0MHzを発振させるキャリブレートスイッチがあり、補正が出来ます。
下面のカバーを開けると、単二電池のケースが目に止まります。電池ケースを外すと、全回路が1枚の基板になっていることが分かります。基板を分けると基板交換レベルのメンテナンスは楽ですが、基板間の配線が増えてしまいます。シンプルなのは結構なことです。
中央にあるトランスは低周波増幅のトランスで、AM変調をかけるのに必要です。
サービスマニュアルを入手しましたが、松下ではメンテナンスパーツを販売しており、トランジスタやコイル・ボリュームはもちろん、フロントパネルやバリコンのギヤまで価格表付きで掲載されていました。これが販売店に配布されたのでしょうか、驚きました。当時のラジオのような感覚ですHi。
今のリグは基板単位で交換すると思いますが、当時は部品1個ずつ交換して修理していました。基板単位の部品が人件費よりも高く、買い替えよりも修理が重んじられた「良き時代」でした。今は、基板や大型パーツ単位のアセンブリ交換が当たり前です。

受信は、50MHz帯の信号を第一局部発振(29-33MHzのVFO)と混合し、21.0MHzの中間周波数に変換します。さらに21.455MHzの第二局部発振を加えて455KHzの出力を得ます。
送信は21MHzの局部発振に前述のVFO出力を加え、50MHz出力を得ます。
つまり21MHzの周波数固定のリグに周波数可変型トランスバータを付属したような構成です。当時21MHzのSSBのリグ出力をRJX-601に入れて50MHzに使える・・・という製作記事がありましたが、このリグならではの理由があったのです。

発振部

VFOはボールベアリングとギヤでバリコンを減速しており、チューニングが容易です。ツマミがローレットですが、個人的にはネジ止めを採用して欲しかったところです。
また、バリコン−カップリング間のシャフトが直径2mmと細いので、後期モデルのようです。初期モデルは直径6mm程度と太いらしいのですが、想像するにバリコンとベアリングの位置がずれてダイヤルが重くなる可能性があり、対策されたのではないでしょうか。
周波数調整ですが、テストポイントTP1に100pF程度の小容量コンデンサを介して周波数カウンタを接続します。目盛りを50MHzに合わせて29MHzを表示するようにL5を調整し、次に54MHzに合わせて33MHzを表示するようにC32を調整します。さらに50MHzに戻ってL5を調整、54MHzでC32を調整・・・と数回繰り返します。経験者ならおなじみの作業です。
全ての調整を済ませた後、周波数の変動をチェックしました。
電源ON後、60分までで±2KHz以内に入っており、意外なほど安定しています。
但しこれはほぼ常温に近い室内の話で、室温変動に対してはシビアです。このデータをとる前(12月初旬の朝)のデータは1時間で13KHzも変動しました。朝で室温が上がりきっておらず、ファンヒータで徐々に室温が上昇していったからなのでしょう。
当日午後、晴天で室温が上がり暖房なしでも安定していました。今だ!とデータを取り直したのが、この結果です。
つまり、シャックで運用するときは、もっとドリフトに配慮すべきということですHi。

受信部

入手直後から受信は出来たので、データを取りました。
その後、マニュアルに従って調整しましたが、注意したい点を記します。
高周波増幅回路の同調はVFOのバリコンと連動しているので、バンドエッジの50MHzと54MHzで最適になるように調整します。
これも、VFOと同様に50MHzでコイルL1とL2を、54MHzでトリマC12とC33を調整します。繰り返し調整が必要です。バンド内の感度差はほぼこれで決まります。
このリグは、周波数構成上52.955MHzで内部発振信号から生じたスプリアスを受信します
回路構成は前述しましたが、受信周波数を f (MHz)とすると、第一局発のVFOの周波数は f-21 (MHz)です。第二局発は21.455MHzです。
第一局発の3倍と第二局発の2倍の差で生ずるスプリアス信号を受信してしまう周波数fは
   f = 3*( f - 21 ) - 2*21.455
となります。以下計算すると
   f = 3f -63 - 42.910
   2f = 63 + 42.910 = 105.910
   f = 52.955 (MHz)
サービスマニュアルに53MHz付近でビートが発生する・・・と記載してあり、確かに受信出来るのですが、計算したらナルホド!と納得しました。
調整方法ですが、まずスプリアス信号を受信しながら21.455MHzの水晶の横にあるコイルL3を回して信号を最小(21.455MHzの2倍である42.910MHzのトラップらしい)にします。その後、隣のL4を回して21.455MHzの出力レベルを落としますが、本物の受信信号も落ちるので、SGで信号を入力し確認しながら自分の納得のいくレベルに合わせれば良いと思います。
私はメータで0.3程度振れるまでで止めました。まあ、受信しても実害がありませんからHi。
ディスクリコイルの調整ですが、周波数偏移10KHzの変調信号を入力するとひずみを感じました。中間周波増幅と低周波増幅のケミコンを交換しましたが、変化ありません。ナローFMのリグでは、オーディオ出力が最大になるようにディスクリコイルを調整すれば良いとマニュアルに記載されていますが、ワイドFMは帯域が狭くてオーバーデビエーションのような音になり、上手くないようです。
空いている50MHzですから、ワイドFMでも受信できる状態にしたいものです。基本に立ち返り、中心周波数±10KHzの範囲でディスクリ出力が直線的に変化するようにオシロで電圧を観察して調整しました。
調整前後の結果を示します。4MHzの範囲でほぼフラットな特性、驚きです。Sで2つくらいメータが振れるようになりました。
調整前 調整後 S特性(f=50.5MHz)
最後にSメータを調整しました。20dBu入力でS9になるようにR57をセットしました。メータの特性は右のようになりました。
受信感度は以下の通りでした。
  AM: 1.5uV入力 S/N11dB
  FM: 1uV入力 S/N21dB

送信部

送信も2.5W程度出ており、変調もかかっています。マニュアルに従って調整しました。
調整後、右グラフのようにパワーはバンド内で3W以上出ており広帯域です。他のリグでは、せいぜい3MHz程度しか安定した出力が得られません。
ミキサーで50MHzを得たあと、5段増幅で3W出力を得ていますが、段間のQを下げてゲインを落とし、帯域を確保しているようです。広帯域にするとスプリアスが心配ですが、ファイナル出力のローパスフィルタ(3段)のコイルをコア入りにして調整出来るようにしてあります。(下の右側に見える黄色いコイル)
但し、サービスマニュアルではトランジスタ側のコイル1個だけ調整することになっており、残りは記載されていません。スペアナが無ければ、触れないほうが無難です。
中央のファイナルトランジスタは、当時有名だった2SC1306です。
もう一つ問題なのが、送信のナロー化です。つい50MHzは見落としそうですが、本機もワイドFMなのでナロー化はしておきます。
技術資料がありませんが、RJX-201のナロー化の情報がありました。IDC回路のバイアス抵抗を大きくするとの事、本機に応用した場合は抵抗R80(12Kオーム)を大きくすれば良さそうです。デビエーション計を見ながらR80を入れ替え、68Kオームに変更したら、ほぼ5KHzデビエーションになりました。
手持ちのリグで受信し、使えそうな感触を得ました。
調整中、あれっ?と思ったのは、マイクゲイン調整のボリュームが無いことです。半固定ボリュームを付けても、調整ミスで過変調の電波が出てはいけません。無調整でも影響なし、と判断したのでしょう。
スプリアスは第二高調波が-62dBです。
  F=50.5MHz、 X:50MHz/div、 Y:10dB/div
なお、送信時にVFOの2倍の58MHz台の成分がスプリアスとして観察されます。最悪と考えられる50.0MHz(同調周波数に一番近い)で送信し、58.0MHzのスプリアスが小さくなるようにミキサー出力のコイルL12を調整しました。

その他

ハムのリグは、松下電器のラジオ事業部が製造しました。AM/FMラジオで培った技術が、無線機にも応用されたようです。
大ヒット品ですが、汎用ラジオに比べれば生産数は少なかったと想像します。販売台数に大変興味があります。
名古屋の大手百貨店の最上階にショールームがあり、リグが並んでいたような記憶がかすかにあります。さすが大手メーカー、宣伝も頑張りましたHi。
大半がハムショップで販売されたと思いますが、系列店のナショナルショップで購入した方はいますか?