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オークションの無断リンクがあるので、仕様は非公開です。
2012.2.15作成

日本マランツ C7900

C7900
☆周波数・モード非公開
☆定格出力非公開
☆最大周波数偏移非公開
☆送信周波数構成非公開
☆受信周波数構成非公開
☆マイクインピーダンス非公開
☆受信方式非公開
☆受信感度非公開
☆通過帯域幅非公開
☆電源非公開
☆消費電力非公開
☆寸法・重量非公開
☆発売年・定価非公開

リグの説明

C7900フロントパネル 日本マランツの430MHzのモービル機で、1年後に発売された144MHz機のC8900と同一デザインです。当時はリグの高さが50mm以上あったのですが、このリグは31mmです。
 翌年にケンウッドがTM-201/401、アイコムがIC-27/37を発売しましたが、これでも高さ38-39mmですから、各社の薄型化に影響を与えたリグです。
上面図 薄いリグなので、大半の部品は両面基板の片面に配置し、もう片面はダイオードやチップ部品しかありません。上面の写真のみ紹介しておきます。
 チップ部品と、一部回路を小さなサブ基板に組んで縦に配列する方式で小型化していますが、残念ながらメンテナンス性・耐久性に乏しい設計です。コンデンサの配置
 右上の写真をご覧ください。電解コンデンサが基板に縦に取り付け出来ず、リードを延ばして横に配置されています。
 縦に配置出来なかったのは、基板上にケミコンのスペースがなく、隣接デバイスと接触するからです。1ランク小さいケミコンを並べるように設計されたのかもしれませんが、マージンが無い無理な設計です。
 左上に見える電解コンデンサは、右下に空きスペースにあったケミコンで、周囲を見やすくするために外したものです。黒い電解コンデンサの上に、半固定抵抗が両面テープで貼り付けてあることが、お分かりいただけるでしょうか。
 モービル機のような振動の厳しい環境では、耐震性・耐湿性を重視すると好ましくありません。他社では、まずやらない方法です。
 4年以上前にリグを入手しました。受信は出来ますが、送信出力が出ないジャンクです。サービスマニュアル(日本語の原本)を入手していました。熟読しながら作業を進めました。

コンデンサの交換

 電解コンデンサは劣化部品です。低周波回路・パワーモジュール付近は、発熱で劣化が進みます。電源部と合わせ、裏面のシールド板を外さずに作業出来るコンデンサを交換しました。
 手持ちのコンデンサは最新の小型化されたものではありませんが、なるべく縦置きになるようにハンダ付けしました。

発振回路

 PLLは問題なく発振していました。コイルでPLL出力を調整しましたが、ほぼ変化なしでした。
 受信のPLL信号408.60-439.80MHzは、水晶発振44.175MHzを9逓倍しPLL回路に加えています。一方、送信のPLL信号は430.00-439.98MHz、つまりPLL出力をそのまま増幅して10Wを得ます。水晶発振46.555MHzを9逓倍してPLL回路に加えます。
 PLL出力は、いずれも誤差100Hz以下に収まっていました。

受信部

受信部の調整方法 受信は出来たので、再調整を行いました。スタンダードのサービスマニュアルは初めて利用します。
 IF(21.4MHz)増幅部は、S表示を最大にします。このリグはS表示がLEDのバーグラフなので、信号の微妙な変化が読めませんが、外部メータ端子があり、100uA程度のラジケータを接続すれば容易に調整出来ます。私はSGから信号を0.1dBきざみで変化させ、点灯するぎりぎりのレベルの変化で最大点を見つけています。
 高周波増幅の入出力コイル4個は、結構アバウトな調整方法です。他社では「スイープジェネレータで特性を均一にせよ」という、測定器を持たない販売店やユーザには難しい方法ですが、実質的にはこれで十分なのでしょう。
 感度は0.7uV入力 S/N30dB(F=433.00MHz)でした。

送信部

交換パーツ パワーが出ない問題に取り組みます。まず、出力をスペアナで調べると、少ないながらも430MHzの信号は出ていました。横にある430MHzのリグでモニターし、出力が出ていることが確認出来ました。
 ただし、電源電流は少なく数百mAです。パワーモジュール前のドライバ出力が出ていることから、パワーモジュールが破損していると推定しました。
 パワーモジュールは三菱のM57704Mです。かつて430MHzFMのモ−ビルで多用されたベストセラーですが、たまたま30年くらい前に購入した未使用品がありました。交換したところ、正常にパワーが出るようになりました。
 モジュール交換は、裏面のシールド板を外す必要があります。ついでにモジュール付近のタンタル・電解コンデンサを交換しました。
 右は、今回交換したパーツの写真です。
スプリアス特性 パワーは430MHzで13W、433.0MHzで12W、439MHzで11.5Wと高い周波数でやや少なくなります。実際は14Wまで出るのですが、消費電流が4A近くになり、発熱が心配です。サービスマニュアルでも、消費電流は3.5A以下になるように調整する旨記載されています。
 無理をせず、このパワーに抑えました。
 スプリアス特性は良好で、2倍高調波の860MHzが-65dB以下でした。
   X:200MHz/div、 Y:10dB/div、 F=433.10MHz
 最後に変調を調整しました。デビエーション計を用い、5KHz以内に合わせました。別リグでモニターし、問題ありません。

その他

パワーモジュール付近 仕上がり寸法から設計がスタートした製品のようです。総合電機メーカーのS社と同じ思想と思いますが、「決まった大きさの中に収まるように設計をする」という様子が現物からうかがえます。
 狭いスペースに部品が並び、発熱するパーツ(ファイナルのパワーモジュール、低周波アンプ)の真横に電解コンデンサが配置されています。熱による劣化が進み、寿命が短くなるでしょう。
 受信性能は高く、遠方の局とQSOを楽しむには良いリグです。発熱させないように放熱に注意し、適度に休ませて使うことをおすすめします。ショートQSO向きで、ラグチューで連続送信したり呼ばれ続ける方は、リグを壊さないようにご注意をHi。