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注意!
オークションの無断リンクがあるので、仕様は非公開です。
2008.11.4作成
2009.5.26修正
2010.10.5追記

ケンクラフト 通過型パワー・SWRメータ QP-220

☆周波数 非公開
☆測定レンジ 非公開
☆入出力インピーダンス 非公開
☆指示誤差 非公開
☆挿入損失 非公開
☆寸法・重量 非公開
☆発売年・定価 非公開

リグの説明

ケンクラフトのパワー・SWR計です。
ケンクラフトというブランドをご存知の方は、この世界のキャリアが30年以上ある方でしょう。トリオ(現ケンウッド)のキット製品に用いられたブランドです。
懐かしく感じ、入手した品です。当初はマニュアルが無かったので、メンテナンスの必要上、配線とパターンを見て回路図を作成しました。
通過型ですが、進行波の電力・反射波の電力・放射電力・SWRが測定できます。
検出部は密閉されており、簡単には開封出来ません。構造の確認は断念しましたが、トロイダルコアを用いた検出部という情報をいただきました。昔ながらのSWR計は、送信電波が通過する線路に平行した線路から一部信号を拾い上げるCM結合ですが、周波数によって検出電圧が変化し、パワー表示が一定にならない欠点があります。ここはクリアしているようです。
放射電力(RADと表示されているから、多分この意味でしょう)は、進行波から反射波を差し引いたものですが、進行波と反射波の検出部の電位差を求めていました。

内部の構造

ケースのネジ16個を外すと、中身が現れます。リアとボトムが一つになり、入出力コネクタと検出部があります。高周波信号は検出部でDC電圧となり、出力されます。
フロントとトップ・サイドパネルが一体です。メータ切り替えスイッチにメータの振れを補正する回路のプリント基板があり、パワーレンジの切り替えスイッチ・SWRの感度調整ボリュームに接続されています。
パワーの調整箇所はなく、抵抗で感度を固定しています。キットでボリュームで調整するわけにもいきませんから、無難な設計です。

不具合点の改善

手持ちの終端型電力計とトランシーバの中間に接続し、パワー表示を比較しました。144MHzで12Wを入力すると15Wレンジでメータが振り切れ、40W近くを表示します。試しに入出力を反転してみると、今度は10W以下になります。検出部が壊れているのか?と、当初は疑いました。
最初は、プリント基板の意味が分かりませんでした。原点に戻って回路図を書いてみたら、原理がわかりました。
  1. SWRは検出部の出力をそのまま利用している。CA(キャリブレート)レンジで感度調整ボリュームを回してメータを最大に振らせ、SWRレンジに切り替えるだけ。
  2. FWD(進行波電力)レンジ・REF(反射波電力)レンジは、ダイオードでリニアライズした後にメータへ入る
  3. RAD(放射電力)はFWD・REFからの検出電圧の差でメータを振らせる
2.のリニアライズ回路は、下のようなものです。ダイオードのV-I特性の立ち上がり特性を利用し、目盛間隔を極力均一にします。これがFWD・REFでそれぞれあります。
今までのことを一旦クリアして再度調べます。
CAレンジのまま、入出力を反転させると同じ表示値を示します。検出部は問題ないと結論付けました。
検出部とリニアライズ回路の間に、メータのレンジ切り替え抵抗が入っています。劣化の有無を確認しましたが、問題ありませんでした。
リニアライズ回路が怪しい・・・というわけで、ダイオードの劣化を疑いました。外してテスターでチェックすると、抵抗レンジで順方向の抵抗値(もちろん抵抗ではないのですが、順方向電流の大小を見る目安で使います)がばらついており、最大と最小で1割以上差があります。差が少ないものを1個ずつFWD・REFに対象に取り付け、バランスを取りました。
コンデンサと抵抗もテスターでチェックしましたが、問題ありませんでした。
組みなおしたところ、ほぼOK!順方向特性の片寄ったダイオードが一方に集まっていたのが原因のようです。入出力を入れ替えると、最大10%程度の誤差はありますが正常にパワー表示するようになりました。
50MHzまでで100W、144MHzで20Wを入力して評価しましたが、十分使用可能と判断します。
これだけのことで解決するとは、正直なところ驚きました。当初、プリントパターンのハンダブリッジで回路が変わっているか?とも疑いましたが、目視確認した限り危ないところはありませんでした。

その他

前述の「誤差」と称しているのは、基準となる終端形パワー計LPM-880と比較しての話です。プロ級の電力計で定期校正されたものと比較したわけではありません。アマチュアでは許容レベルです。
もっとも今回はダイオードの特性ばらつきを少なくしただけで、理論上精度は十分ではないと考えます。特性の揃ったダイオードを入手し、入れ替えてから校正したいと思っています。 
ダイオードが何なのか分からなかったのですが、ゲルマニウムダイオードの1N60であることが判明しました。ショットキーダイオードと想像していたのですが、1970年半ばの頃は現在ほど一般的なデバイスではありません。アマチュアが使うには安くて入手容易なデバイスが一番です。
ゲルマニウムダイオードなんて・・・と馬鹿にしてはいけません。旧クラニシのUHFまで測定できるパワー計でも、ダイオードは1N60なのです。
つまり、『アマチュアレベルの計測器で、精度数%・・・という過度な期待をしてはいけない』ということです。