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注意!
オークションの無断リンクがあるので、仕様は非公開です。
2013.2.3作成

東京ハイパワー HL-86V

☆周波数・モード 非公開
☆出力電力 非公開
☆入力電力 非公開
☆受信アンプ 非公開
☆電源 非公開
☆消費電流 非公開
☆寸法・重量 非公開
☆発売年・定価 非公開
HL-86V

リグの説明

フロントパネル 東京ハイパワーの50MHzのリニアアンプです。大きな黒いヒートシンクが特徴のリニアアンプで、オールモードに対応しています。
 公称は最大出力85Wですが、発売されていた1980年代は、50MHzは最大出力50Wまでしか許可されず、JARL認定機種ではありませんでした。
 しかし売れた製品だった!?らしく、数年前までオークションにも出回っていました。今は、ブロックダイヤグラム等の資料を付属すればTSSの認定を受けることが可能です。
 パワー切り替えスイッチ(HI-LOW)があり、後述するようにLOWにすると10W入力で出力約40Wが得られます。
 また、AMモードは最大出力20Wと定格に記されています。当時の10Wオールモード機はAM出力が3-4W程度だった(低電力変調なので)はずですが、昔のAM10W機でHI側をドライブするとファイナルを損傷する可能性があります。 
 受信アンプも内蔵しており、ON-OFF可能です。また、モード切替(SSB/FM)があり、キャリアコントロールの時定数を切り替えます。

内部の解析

裏面から見た回路 上部はヒートシンクのみで、下のカバーを外すと回路が全て確認出来ます。
 送信アンプのファイナルはTHP100というデバイスですが、2SC2290の品番をメーカーオリジナル品番に変えたもの、という情報があります。MRF454と同等という話もありますが、いずれも今は代替品として探すのも大変です。
 入力回路にアッテネータを追加することで、パワーをハイパワー(HI)からローパワー(LO)へ落とします。アンプはモードに関わらずアイドリング電流を流したリニアアンプで、C級動作のブースターではありません。
 受信アンプは2SK125のゲート接地回路で、当時ポピュラーだったデバイスです。

送信アンプ

拡大図 まずトランシーバのパワーを絞って動作を確認します。パワーも予想通り出ていることを確認、入力5Wでトリマを調整しました。その後、10Wまで入力を増やすと出力が90W得られました。再度微調整をして終了です。
 アイドリング電流は、ツートーン信号を入力し波形を見ながら調整しました。調整用半固定ボリュームを回さなくても、初期値で十分でした。
 パワーの入出力特性および周波数特性を示します。
F=50.200MHz
CW MODE
Pi=5W
CW MODE
 終端型パワー計(RW-151D)の読み取り誤差もありますが、出力90Wまでほぼ直線性があります。SSBでも十分使えます。
 LOW POWERのスイッチは本機の入力アッテネータでパワーを多く消費させているだけです。HI POWERにしてトランシーバのパワーを絞ったほうがきれいな電波が出ますし、何より省エネですHi。
 また、周波数特性はバンド幅が4MHzあるのでバンドエッジでパワーが低下すると推定していましたが、意外なほどにフラットです。

受信プリアンプ

リレーをクリーニング 受信アンプのスイッチをON、ところが受信ノイズが減ります。アンプのFETのバイアスは正常なので、リレーの接触不良のようです。
 リレーは松下のAE1323ですが、もちろんすでに廃品種で入手も困難です。手持ちの未使用品と同等品が数個ありましたが、今回はリレーを外し、接点洗浄剤でクリーニングしました。
 受信回路は小信号を扱うので、接点の酸化が顕著です。送信リレーは適度に使っていれば酸化・汚れが焼けてくれるので劣化が少ないのですが、同様にクリーニングしました。
 受信アンプは出力側のトリマを調整しました。ゲインは12dBありましたが、帯域は広くありません。
 50.5MHzでゲイン最大になるように調整しました。テストベンチでは、アンプをONにしてもノイズがメータを振らせることはありません。
 内蔵アンプは、目的外の雑音も増幅するノイズアンプになりがちです。ゲインを抑えた設計ですが、測定器上は大きな違いがありませんでした。

送受信切り替え回路

 キャリアコントロールはFMでは問題ありませんが、SSBは使いにくく困ります。マイクに向かって普通の声で話すとリレーがONになりますが、少し小声になるとすぐにOFFに切り替わります。時定数よりも感度の問題です。
 いずれにせよリレーのガチャガチャ音がうるさいので、背面のリモート端子でリグを直接制御したほうがベターです。 
 ところが、使われている4Pソケットが入手困難です。幸いジャンクボックスに眠っていた1個を発見、ケーブルを作成しました。
 色々なリグに使えるように、中継コネクタを介しておきます。

その他

 50MHzの移動運用にハマっていた頃、200-300km離れているのに受信アンプなしで59で聞こえてくる強力な局が何人もいました。アンテナ・ロケーションの力もあるでしょうが、パワーの違いも大きいな・・・と感じていました。このような100W前後のリニアアンプをお使いになっていたのかもしれません。
 設計された80年代初めは、まだ受信アンプのデバイスとしてGaAsFETが一般的でなかった頃です。EMEのローノイズアンプでジャンクションFETのU-310が良い、という記事が話題になりました。その後、似た特性のソニー2SK125が安価で入手容易なデバイスとして、プリアンプの定番になりました。
 144MHz以上のプリアンプは、かつてはGaAs、今ならHEMTでしょうか。50MHzならまだ入手可能な2SK125でも十分でしょう。