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オークションの無断リンクがあるので、仕様は非公開です。
2011.9.13作成

アルインコ EP-650

☆出力電圧 非公開
☆出力電流 非公開
☆出力電圧変動率 非公開
☆リップル電圧 非公開
☆寸法・重量 非公開
☆発売年・定価 非公開
EP-650

リグの説明

フロントパネルアルインコの電源です。これもいただいた製品で、説明書が無く詳細スペックは不明です。
出力電圧・電流をメータで読み取ることが出来ます。電圧はフロントパネルのボリュームで可変可能ですが、メータの表示(レッドゾーン)から最大電圧は15V、最大電流は5.5Aと推定しました。
電源をONすると、無負荷で8.8-15Vまで可変出来ました。ハンディ機の電源で9Vの電圧を印加する時に便利です。

内部の解析

内部の配置40年以上前からポピュラーなレギュレータIC 723(DIP16P)を用いた安定化回路です。制御出力を2SD880と2N3055のダーリントン接続で電流増幅しています。
まず整流後の平滑コンデンサ2本(4700uF)の耐圧が25Vでした。ブリッジ整流後の出力電圧は27Vあり、部品の製品規格を超えた電圧を印加しています。
1990年以前の製品と思われますが、数社の電源で見られる不具合です。当時は35V以上のコンデンサが高価だったからでしょうか、記憶がはっきりしません。
ブリッジ出力電圧の最大値にAC電圧の変動(最大10%)を考慮すると、最大30Vの電圧が常時加わるとみるべきです。35V以上の耐圧が無いと、コンデンサの寿命が縮まります。
メータは出力電圧・電流を表示し、スイッチで切り替えます。電圧モニタは当然必要ですが、電流も異常をモニタする意味では確認したいところで、特に回路実験では必須です。

改善作業

コンデンサを交換シンプルな回路の動作品ですが、いくつか不具合がありました。設計上、あるいは生産技術上の問題と考えます。
まず前記の耐圧25Vのコンデンサは、チューブラ形が実装されていましたが、今は品薄で高価です。手持ちの50V耐圧のブロックコンデンサを取りつけました。
内部スペース・基板スペースに余裕があったので、基板に4か所穴を開け、グリーンレジストを剥がしてハンダ付けするだけで改善出来ました。手持ちの中から、同一容量でも大きいコンデンサを先に消費しましたHi。
次に、電流表示のメータが0-4Aの範囲で実測値よりも10-15%多く振れることに気付きました。電圧表示はボリュームで調整可能ですが、電流を調整するデバイスがありません。
よくよく見ると、配線抵抗を利用してメータへ一部電流を流し検出しています。調整は『配線長を変える』というアナログな修正をせねばなりません
スイッチを1回路から2回路に変更しメータの挿入位置を変えれば対策できますが、今回は現回路を尊重?し、メータの+側から出力端子へ接続された配線(下写真の黒線)を1cm短くしました。cut&tryの必要な方法です。電流検出部 回路図
また、電流が4Aを越えると、メータの指示値と実際値の誤差が増えます。メータの目盛の問題ですが、5A流した時に6Aと表示されます。実用時は4A止まりなので、ここは目をつぶります。
さらに無負荷時で電源を切ると、数十秒経過しないと電圧が数Vまで低下しません。他のアルインコ製電源でもあった現象ですが、出力端にブリーダ抵抗を追加し、コンデンサに残ったチャージを早く放電させます。
最後は製造上(修理上)の問題??ですが、裏面のヒートシンクに取り付けられた2N3055のコレクタのラグがシャーシに非常に接近しており、絶縁チューブがかぶっているものの、間隙が1mm程度しかありません。おまけにボンドを塗って絶縁代わりにしたような跡があります。(左下写真)
ホコリや湿気でリークすると、故障しかねません。コレクタに接続するラグの位置を180度反転させ、マージンを稼ぎました。(右下写真)
本来はケース穴をもっと大きくしてマージンを増やすべきですが、ヤスリがけが面倒で手を抜きましたHi。
出力Tr改善前改善後

特性評価

負荷を加え、電圧変動とリップルを評価しました。一般のトランシーバ動作を考慮し、出力13.8Vの場合の結果を以下に示します。
出力電圧特性出力電流が増加すると出力電圧が低下しますが、4.5Aまでは概ね1Aあたり0.04Vの割合で低下します。5.5Aくらいまでは出力電圧は影響なしと判断します。
しかしリップルは5A流すと増え始めます。電流とリップルの関係を下写真に示しますが、5.5A流すとリップルが13mVとさらに増大します。トランスの容量不足もありますが、整流ブリッジ(S5VB)の電圧降下が大きく、整流後の電圧が最悪16Vまで落ちるからです。
以上の結果から、AC電圧の変動を考慮し5Aがぎりぎりと考えます。
ブリッジも発熱しており、無理すべきではありません。
 リップルの特性  Vout=13.8V  X:5ms/div、Y:10mV/div
リップル2.2A時 リップル3.3A時 リップル4.4A時 リップル5A時
 Iout=2.2A リップル2mV  Iout=3.3A リップル3mV  Iout=4.4A リップル4mV Iout=5A リップル7mV

その他

他機の回路例手持ちの資料*で、アルインコの電源EP-55Mの回路図が出てきました。
 *「パワーサプライ設計と製作」 CQ出版社 1980年発行
図のように、出力電流の大半をRSCと書かれた配線に流し、一部を電流計で検出しており、本回路と同じ方式です。アルインコ設計標準だったのでしょうか。
電流表示が目安程度であれば、コストダウンでこれもありかな・・・・と考えますが、目盛を振ってあるので、調整可能な他の方法が望ましかったでしょう。
また、リグの標準電圧である13.8Vの設定が楽なように、センタークリックのボリュームが欲しいところです。但し、電圧の可変範囲が狭くなります。
ジャンクボックスに眠っているかも?ですが、シャック整理をせねばならず大変ですHi。