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注意!
オークションの無断リンクがあるので、仕様は非公開です。
2011.12.3作成
2016.4.17一部改定

井上 IC-502

☆周波数・モード非公開
☆定格出力非公開
☆送信周波数構成非公開
☆受信周波数構成非公開
☆マイクインピーダンス非公開
☆受信方式非公開
☆受信感度非公開
☆通過帯域幅非公開
☆電源非公開
☆消費電力非公開
☆寸法・重量非公開
☆発売年・定価非公開
IC-502

リグの説明

フロントパネルアイコムが旧井上電機製作所だった時代の50MHzのSSB/CWハンディ機です。144MHzのIC-202・430MHzのIC-302が、シリーズで同時期に発売されました。
IC-202でも紹介しましたが、縦長のケースに入っており、ホイップアンテナをそのまま伸ばして運用することが可能です。
まだまだサイズは大きく、単二電池9本を内蔵します。
周波数構成は14MHz(正確には13.997MHz)でSSBを作り出し、36MHzのVFOとミックスして50MHzの信号を作ります。
送受信周波数範囲は50.000-51.000MHzと、幅が1MHzもあります。VFOツマミは2段の減速機能があり、減速比6:1で回転させた後に逆方向に回すと3/4回転だけ減速比36:1で回転します。ざっとワッチして信号が見つかったら少し通過し、その後少し戻ればワッチが楽なようです。ただし、36:1に減速しても、1回転で70-80KHzになります。
今だから言えますが、SSB/CW機なので周波数範囲は50.000-50.500MHzの500KHzだけでも良かったと思います。まだAMからSSBへのシフトの途中だった時期ですが、1回転40KHz程度ならチューニングは楽ですし、QRHも少なくなります。
SSB(USB)の他にCWも出せますが、パネルのCW-TのスイッチをONしてキーイングします。ただし、サイドトーンは出ません。
CWは、SSBの発振13.997MHzにトランジスタスイッチでコンデンサを追加し、周波数を約800Hzシフトします。
内部の状態を下写真に示します。左右にカバーがあり、それぞれナイラッチ2個で取り外し出来ます。電池9個のスペースが全体の1/4を占めています。
大半の回路は左写真のように正面から見て左側にあり、右側のスピーカ下付近に低周波増幅と電源があります。

発振回路

まず難題が見つかりました。VFOの周波数が50KHzほど高くシフトしており、ダイヤル目盛と合いません。経年変化の真の原因も気になりますが、取りあえず調整でしのぎます。ところが、VFOの周波数調整箇所がシールドケースの側面にはありません。
調整穴はホイップアンテナが飛び出している上面にあるのですが、周辺カバーに隠されています。
フロントの樹脂カバーを外し、フロントパネルを緩めて調整穴が見えるところまで動かしてコイルを調整しました。半固定コンデンサは調整しなくても、1MHzをカバーしていることを確認しました。
周波数のドリフト特性が気になります。定格は、25℃でスイッチON5分後より+-200Hz/hです。
周波数ドリフト特性送信周波数ではなく、VFO出力を2回測定した結果を右図に示します。電源をONしてから5分間放置した後からデータを採取しました。
室温の変化も影響しますし、周波数カウンタのケーブルを接続するためにケースを開けているのでメーカーと同じ条件ではありません。
最初にファンヒータで暖房中(おおよそ18℃)に取ったデータが赤線ですが、変化が大きく感じました。その後昼過ぎに室温が安定したので、暖房をせずに(15℃)取ったデータが青線です。結果は再現性があります。
定格は空調温度の安定した環境とはいえ、(新品であったとしても)出来すぎの感がありますHi。
私の取ったデータのほうが、シャックに置いた時の実力に近いと考えられます。もちろん屋外で直射日光の当たる環境では、これ以上のドリフトが有り得ます。
SSBキャリア発振の13.997MHzは100Hzもずれていませんが、一応30Hz以下まで合わせ込みました。
ついでにフロントカバーとツマミは中性洗剤で洗い、溝に入った汚れを取り除きました。

受信部

受信は十分機能していましたが、コイルを全て調整しました。
ネックとなる箇所は、高周波増幅出力の3段コイルでしょうか。1MHzの帯域をフラットにするには、若干のロスを許容せねばなりませんが、上限を50.7MHz付近までにし、ロスを減らすようにしました。
現状から判断すれば、50.000-50.500MHzまでで十分でしょう。
最終感度は0.15uV入力(S+N)/N 10dBでした。定格(0.5uV入力(S+N)/N 10dB以上)に対し、十分です。

送信部

パワーは出ますが、CWで1.5W止まりです。送信も1MHzフルカバーではなく、上限を50.7MHzにして調整します。
まずはALCを解除し、各コイルとトリマを調整すると最大3.8Wまで出るようになりました。しかしスプリアスが酷く、2倍の100MHzが-50dBしかありません。調整を繰り返すも次第に悪化し始め、ローパスフィルタのコイルのピッチを調整しても良くなりません。
怪しきパーツを交換しよう・・・と基板を止めるネジを外したものの、かなりの大仕事になるとわかり中止、再びネジを締めると・・・・何と、スプリアスがスッキリと減っているではありませんか。
スプリアス特性パワーも減ったので再調整、最大3.2W程度になりましたが、2倍高調波は-60dBになりました。
外したネジは基板をシャーシに止めるネジ6本とファイナルトランジスタのヒートシンクをシャーシに止めるネジ2本です。ネジが緩んでいたとは思えませんが、再組立でGNDが安定したものと思われます。
最終調整後、出力3WになるようにALCを調整し、完成です。
スプリアス特性を右に示します。
   X:20MHz/div、 Y:10dB/div、 F=50.3MHz
58MHzにスプリアスが見えますが、VFOを動かすと周波数とレベルが変わるので、VFOの2倍(72MHz)-水晶発振14MHz = 58MHzと思われます。ミキサからファイナルまでの同調回路を調整しても除去出来ませんでした。
平衡変調はSN76514Nでバランス調整はありませんが、キャリアサプレッションは-45dBでした。

その他

周波数の読み取り精度は悪く、せいぜい10KHz単位です。
Sメータの目盛りも、S1、5、9、+20dB、+40dBと大雑把です。RSTは一般的に耳Sで送ります(Hi)から、これも気にもしません。
修理の際、入手困難なパーツが多々あります。接合型FETのMK10は2SK241、デュアルゲートFETのMEM616は3SKシリーズの何かが使えそうですが、ICは大変です。
SN76514Nは中古ジャンクから取り出せますが、BA301(ローム)は他のICに変更(回路も変更して)せねばなりません。
LA1221(三洋)は絶望的で、データすら入手出来ません。これが不良になったら、リグの生命は終わります。