レストア
注意!
オークションの無断リンクがあるので、仕様は非公開です。
2007.1.19作成
2007.10.5修正
2010.10.5追記

井上 IC-290

☆周波数・モード非公開
☆定格出力非公開
☆最大周波数偏移非公開
☆送信周波数構成非公開
☆受信周波数構成非公開
☆マイクインピーダンス非公開
☆受信方式非公開
☆受信感度非公開
☆通過帯域幅非公開
☆電源非公開
☆消費電力非公開
☆寸法・重量非公開
☆発売年・定価非公開

リグの説明

V/UHFのオールモードトランシーバで、トリオのTR-9000/9000G、ヤエスのFT-280の対抗機種でしょう。
数ヶ月前、長岡のローカル局からいただいたもので、「多分動くでしょう」とのこと。少し時間が出来たので、手を加えてみました。
FMだけでなく、SSB/CWも送受信可能ですから、資料は必須です。説明書はメーカーのwebからダウンロードし、回路図は海外仕様のIC-290A/Eを入手しました。さらに、IC-290A/E/Hのメンテナンスマニュアルも入手出来ました。これだけあれば何とかなるさ、と着手しました。
上面図 下面図
上面ほぼ中央にある緑色の基板の下にPLLのロジック基板があります。PLL基板表面のソケットピンに上の基板裏のソケットを差し込んで接続しており、ケーブル類はありません。PLLにトラブルがあった場合、延長ケーブルを用意せねばなりません。

受信部

最初に受信感度を測定しました(FMのみ)が、まずまずの結果です。早速調整に入りました。
アンテナ入力から10.75MHzの中間増幅までがオールモード共通です。SGの入力FMで受信し、第一ミキサー以降のコイルをメータ表示最大になるように調整しました。高周波増幅の入出力は?といえば、メンテナンスマニュアルには記載がありません。メーカーのサービス以外は触れないように、という意味かもしれません。しかし、ここは経験上調整したい点ですので、右写真のコイル5個をバンド内で均一感度になるように調整しました。
中間周波増幅の初段は全モード共通です。FMで調整を済ませました。
SSBだけの増幅回路は、SGで信号を入力し中間周波増幅のコイル3個を調整しました。スピーカ出力にAF電圧計を取り付け、出力最大にします。
FMで調整前後の効果をグラフにしました。Sで2つ程度の改善です。バンド内でフラットな特性になりました。感度は以下の通りです。
  FM:20dB NQ感度 -8.9dBu、0dBu入力 S/N 34dB
  SSB:-10dBu入力時 S/N15dB
 
 調整前 調整後 S特性(f=145.20MHz)

送信部

調整前、FMで送信パワーを測定しましたが、バンド内で全て11.0Wでした。しっかりパワー制御されているようです。調整のためハイパワー制御を解除すべくボリュームを回すと、14.5W出ました。
マニュアルではパワーの調整箇所はこれだけですが、ドライブ段のトリマTC17を回すと16Wまで出るようになりました。まずまずと判断しましたが、ハイパワーは13W、ローパワーは1Wにセットしました。
FMのデビエーションは調整不要でした。メータはハイパワーでS表示のLEDが全部点灯するようにボリュームをセットするだけです。アンテナ負荷異常時のプロテクションも調整不要でした。
拍子抜けの感がある調整でしたが、一つ問題が見つかりました。近接スプリアスがあることです。145MHzのFMで送信すると上下約20MHzにスプリアスが見えます。-60dB以下ですが、面白くありません。
この成分はPLL出力134.25MHzと水晶発振10.75MHzをミックスした際に生ずるもので、134.25-10.75=123.50MHzと145.00X2-123.50=166.50MHzであると考えられます。134.25MHzが見えないのはバランスドミキサーを調整したからで、バランスを崩すと観察されます。
調整前
X:20MHz/div、Y:10dB/div
調整後
X:20MHz/div、Y:10dB/div
というわけで、ミキサー後のプリドライブ回路のバンドパスフィルタの帯域が広すぎるから狭めてやろう!とトライしました。受信部の写真にあるコイルの箇所です。送信結果は下の通り、見事に近接スプリアスは消滅しました。
メンテナンスマニュアルには、このコイルの調整に関する記載もありません。
1GHzまでのスプリアス特性は左の通りで、2倍・3倍高調波が-60dB、-58dBです。電力増幅はパワーモジュールSC1013ですが、調整箇所はありません。少し物足りなさを感じますが、測定誤差も考慮してOKとします。
  X:200MHz/div、 Y:10dB/div

その他

後継機種が見当たりません。モービル機サイズのモノバンダーは、トリオでTR-9000G・TR-751・TM255がありましたし、ヤエスは少し路線は違うもののFT-290・FT-290mkIIがありました。HFを含むリグとしてIC-706が近いようですが、1995年発売です。
FMはモービル機、SSBは常置場所や本格的な移動運用に適した中型機という流れだったのでしょう。アイコムでは中型機としてIC-271、IC-275、IC-970(デュアルバンド)、IC-820(同)が発売されています。