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オークションの無断リンクがあるので、仕様は非公開です。
2011.10.28作成
2015.3.17画像追加

トリオ R-300

☆周波数・モード非公開
☆受信感度非公開
☆選択度非公開
☆周波数安定度 非公開
☆入力インピーダンス 非公開
☆電源非公開
☆消費電力非公開
☆寸法・重量非公開
☆発売年・定価非公開
R-300

リグの説明

トリオのゼネラルカバレッジ受信機R-300です。6年くらい前に入手し、調整して使用していました。受信出来るレベルでしたが、今回は再調整とともに不具合の修理を行いました。
このリグは、アマチュアバンドを含むHF帯・中波放送帯(BC)はもちろん、170KHzの長波と中波放送が受信可能です。真空管時代の9R-59D・9R-59DSの後継機種ですが、これらは下限が535KHzでした。
キットで先に発売されたQR-666(ケンクラフトブランド)の製品版という位置づけで、類似点も多数あります。
もちろんオール半導体のリグで、30MHzまでを6バンド区分に分けてカバーします。
AC100VあるいはDC13.8Vでも動作しますが、下面に単1電池8本のボックスがあり、電池動作も可能です。消費電流は300mA程度と推定(照明消灯時)されますが、すぐに電池が切れそうです。
フロントパネル

内部の構成

中央に直径7cm以上の回転ドラムが上下に2個あり、周波数目盛が振ってあります。上下2段になっており、上がメインダイヤル、下がバンドスプレッドダイヤルです。
ダイヤルに糸が固定してあり、糸かけダイヤルでそれぞれのバリコンを回転させます。このメカニズムは大変複雑で、万が一切れた時に、「かけ直して下さい」と言われても簡単には出来ません。
資料を探したら、英文の取説に糸のかけ方が記載されていました。お困りの方は熟読し挑戦して下さい。
メインチューニング・バンドスプレッドとも、フライホイールが付いており、回転のタッチは大変なめらかです。 2015/3/17: 左下の画像を追加しました
メインダイヤルのバンド表示下面中央に、アンテナ・高周波・発振コイルが並んでいるコイルパックユニットがあります。真横にある基板はRFユニットで、回路・パーツのレイアウトはほぼQR-666と同じです。
バンド切替スイッチにも、糸掛けの機構があります。メインダイヤル横のバンド表示部で、上下に緑色のウインドウを表示します(左写真)が、表示部はフロントパネル裏にあり、糸を外さないと本体からフロントパネルを取り外せません。
上面上面の背面にIFユニットがあり、455KHzから検波までの回路が含まれます。すぐ横にあるのは500KHzマーカーユニットで、標準装備されています。
電源トランス横はAF/PSユニットで、低周波増幅及び電源回路があります。
いずれもプラグインモジュールになっており、かつスペースに余裕があるので、基板を抜き差しして回路を修正・点検するのに大変便利です。
なお、基板は裏面側で固定するL形の金具が無くても自立するので、金具を外して基板裏面からオシロのプローブを当てることも可能です。
ブロックダイヤグラムブロックダイヤグラムを右に示しますがQR-666と同じです。
A-Eバンドはシングルスーパー・Fバンドはダブルスーパーですが、高周波増幅・第一ミキサは共通です。第一ミキサは出力同調回路を分けてA-Eバンドは455KHzで、Fバンドは4.034MHzで出力を取り出します。
さらにFバンドは第二ミキサで第二局発3.579MHzをミックスし,455KHzを得ますが、A-Eバンドは第二局発を止めてバッファアンプで動作します。

バンド切替 安定化対策

バンドスイッチのハンダ面一通り再調整しましたが、バンド切替スイッチが接触不良気味で不安定でした。切替スイッチを左右いずれかに数度動かすと、メータの振れが変わります。
スイッチの隙間から接点洗浄剤を吹きかけてガチャガチャと動かしましたが、良化するものの完全には直りません。
ユニット基板を外すと、ハンダ箇所に穴が多発しています。(右写真)
スイッチの動作によって、ハンダ箇所には力学的ストレスが加わります。接点は正常でも、ハンダが不完全なら力が加わってクラックが入り、接触不良になるのは当然です。ストレスの差でしょうか、中央のRFコイルのスイッチのハンダ劣化が顕著でした。
ハンダを除去すると・・・・再ハンダしようと劣化したハンダを除去たところ、大きな問題が見つかりました。右写真のように、スルーホール穴が大きすぎます。
ハンダを溶かして流し込むと、現象が再現します。表面の穴は、スルーホール表面をハンダで埋めたことで内部に空気が残り、その後加熱して膨張した空気が逃げたために出来た、と思われます。
穴のメカニズム
スイッチ部だけでなく、他の部品取り付けのスルーホールも大きめです。根本対策は困難ですが、基板のハンダ箇所は全てハンダ除去・再ハンダしました。
 全て外観上完全ではありませんが、従来よりも接触の問題は緩和されたようです。
また基板上に第一局発がありますが、トランジスタがあの「2SC460」です。以前から別のリグで経験している問題デバイスです。リードが黒く変色しており、経年変化(マイグレーション)がありそうです。
取り外して代替えの2SC829に交換、発振出力が強くなり受信感度が改善されました。取り外した2SC460のhfeは40程度に低下しており、やはり影響はあったようです。

音声ひずみ対策(AF・PSユニット)その他

AF・PSユニット低音があまり出ていない音質です。低周波回路は手を加えやすいので、電源部を含み電解コンデンサ9個を全て交換しました。
定量的なデータはありませんが、低音が出て聞きやすくなりました。
低周波増幅は、フロントパネル裏のスイッチユニットにもありますが、取り外しが困難です。ユニットを取りつけたまま、下面から可能な箇所のみコンデンサを交換しました。
一方、高音が出すぎてノイズが目立ちます。入力のマイラコンデンサの容量を大きくし、高音をカットしました。
また、電源のAC整流後のケミコン3300uFも手持ちの基板取りつけ用のブロックコンに交換しました。直径が同じで、固定バンドがそのまま使えるという理由です。
ケミコンは整流ダイオードから遠く離れていて、配線が長くなっています。出力電流が300mA程度と少ないのでこのままにしますが、1A近いとハム音が目立つでしょう。

IFゲイン改善(IFユニット)

SGの信号を1-2uV程度まで絞ってAM信号を受信すると、S/Nがいま一歩です。IFユニットでゲインアップを図ります。
このユニットもマイラコンデンサを全て交換、明確な効果が見られないので、IFアンプの2SC945を2SC1815に交換しました。当初Yランクを用いたところ、メータの振れが少なくなり慌てましたが、BLランクに変更して改善しました。しかし、ノイズっぽさに顕著な差はありません。
効果は?ですが、このまま使います。バイアス電圧も特に異常ありませんでした。

フィルタの変更とノイズの低減

通過帯域幅を変更するワイド/ナロー切替スイッチがあります。ナローで中波放送局を受信すると、帯域が狭い音質になります。
このスイッチはSFD455Fという素子2個の外付けコンデンサを変更しますが、この素子はフィルタである、いやディスクリコイルである・・・とあいまいな情報しかありません。動作が不明確な上、代替品も入手不能なので、手持ちのフィルタに交換しました。
フィルタを変更CFM-455F(帯域12KHz/-6dB)でワイド、CFR-455H(同6KHz/-6dB)でナローになるようにリレーで切り替える回路を穴あき基板に組みました。裏面のRF基板を固定するネジ穴を利用し、スペーサを介して固定しました。基板裏は銅テープを貼り、GNDを広く確保してあります。
組み立て後、想定外の大きなロスが発生し慌てましたが、使った手持ちリレーの劣化と判明、交換しました。切替による損失差もほとんど感じず、ナローはスッキリと切れます。
スイッチユニットはフロントパネルを取らないと外せません。スイッチの上面部の端子を活用し、切り替えました。追加配線を除去し、入出力のケーブルを戻せば、オリジナルに復帰出来ます。
ここでAM放送を受信すると、依然として強力な信号の割にノイズ混じりの音です。RFユニットを外しても多いようです。
RFユニットからフィルタを経由しIFユニットへ接続される同軸ケーブル(1.5D-2V)が、周辺の配線とタコ糸で束ねられており、高周波ノイズを拾っているようです。他の配線と分離し、干渉を避けました。
根本対策としては、裏面にフィルタユニットを追加して配線を短くしたいところですが、取り付けスペースの都合でこのままにします。

Fバンドの不要信号受信

Fバンドのみ、アンテナを接続しない状態でワッチすると、あちこちで無変調の信号を受信します。マーカー信号でもなく、ハテ?と首をひねりました。ANT TRIMを回しても変化ありません。
局発部のトランジスタは、またもや2SC460です。これかも・・・とTrを交換しましたが、変化ありません。プリントパターンのGND周りを修正、コンデンサを変更しましたが改善されません。
SGで信号を加えて周波数を測定すると、以下のような周波数です。
   18.80MHz、 21.47MHz、  22.38MHz、 25.05MHz、 25.96MHz、 28.63MHz、 29.54MHz
ピンと来る方も多いと思いますが、第二局発(3.579MHz)の整数倍、あるいは整数倍+910KHzのイメージ信号です。気付いた瞬間、唖然としました。
RF基板気になる点がいくつかありました。まずRFユニットのFETは入手した回路図では3本全て3SK35ですが、本機は全て3SK40です。手持ちのQR-666を見ると、3SK35でした。
本機はハンダの色から工場出荷時のままらしく、何らかの理由で設計変更されたようです。ミキサの動作ポイントの差と考えましたが、QR-666と見比べてもバイアスに違いがありません。
また、第二局発の出力信号をオシロで観察すると、ミキサのG2端子で5.5Vp-pもあります。局発回路のエミッタ抵抗が1.2Kオームから560オームに変更され(裏面に1Kオームを並列に追加)、発振出力が大きくなっています。
ミキサFETを3SK35に変更し、追加エミッタ抵抗を取り外しました。パスコンも新品に変更し、G2への注入レベルも高すぎると考え、結合コンデンサの容量を減らしました。
局発信号は3Vp-pまで落ちましたが、これ以上下げるとS/Nが悪化します。完全ではありませんが、ここで一旦作業を終えました。

特性評価

バンド 周波数 AM規格 測定値
(S+N/N 10dB)
A 280KHz 1.0uV以下 0.8uV
B 900KHz 0.9uV
C 2.0MHz 0.9uV
D 5.0MHz 1.5uV以下 1.4uV
E 12.0MHz 2.0uV
F 24.0MHz 1.0uV以下 1.0uV
受信感度のデータをAMモ−ドで取りました。QR-666同様、各バンドの中心周波数付近で規格を定めており、、Eバンド以外はギリギリ満たすようですが、聴感はノイズっぽく今一歩満足しません。
他のサイトでも「ノイズが多めの受信機」というコメントがありました。
細かくデータを取る価値もないので、詳細データは省略します。

その他

500KHzのマーカーユニットがあります。このトランジスタも2SC460なので交換、マーカー信号が強力になりました。
さて、Fバンドの無変調信号は対策したいところです。このリグをお持ちの方で、「そんなもの気にならない」という方がいらっしゃったら、掲示板経由でレポートをお願いします。
第二ミキサへの注入信号レベルの加減かもしれませんし、この発振部のみ別の基板で作成、ローパスフィルタを入れて離して配置すれば回避可能な気もします。
多数パーツを交換しました。コンデンサは消耗品、トランジスタの一部は劣化品と割り切りますが、まだ改善すべき点がありそうです。新品の頃に触れる機会があったなら、使用感も感覚的に比較出来たのでしょうが、もう少しS/Nの良い音で聞きたいと考えています。